「真実の口」1,573 人喰いバクテリア

先週、脳を食べるアメーバフォーラー・ネグレリアの話を寄稿した。

序(ついで)に、人を喰うバクテリアの話もしてみたいと思う。

40 数年来のライオンズファンである私にとって、 2017 年 6 月に急逝した森慎二・一軍投手コーチの死は未だに記憶に新しい。

現役時代は、身長 1m89cmの大きな身体で、左足を高くあげるダイナミックなフォームで大活躍した。

西武では中継ぎ、抑えとして活躍し、 2005 年、ポスティングシステムによりメジャー・リーグへの挑戦を表明し、タンパベイ・レイズへ移籍し、メジャーリーガとしてマウンドに立つという夢は果たせなかったもののずっと応援していた。

その後、 2009 年、独立リーグの石川ミリオンスターズの選手兼任投手コーチに就任し、同年の公式戦登板はなかったものの、 2010 年からは選手を一旦引退し監督に就任した。

2014 年、石川ミリオンスターズを退団し、 2015 年から我が埼玉西武ライオンズの二軍投手コーチに就任し、 2016 年 5 月 6 日から一軍投手コーチへ就任となった。

そして、古巣に帰って、 3 年足らずの、突然の訃報だった。

へっ・・・∑( ̄□ ̄ノ)ノ ?

私にとっては、寝耳に水だった。

当時・・・。

森コーチは 6 月 22 日、福岡で、新日鉄君津時代の先輩にあたるソフトバンク OB の松中信彦氏と会食。

自ら焼酎のボトルを注文して、普段通り酒を口にし、 7 月にも再び松中氏と会う約束を交わしていたという。

西武のある一軍スタッフによると・・・。

「 6 月 23 ~ 25 日の 3 連戦のうち、森コーチは 24 日まで通常通り、ブルペン担当としてベンチに入っていました。 24 日の試合に勝った後は、辻監督とも握手をしていた。 3 戦目の 25 日も、試合前は宿舎のホテルから球場まで 200m ほどを歩いて球場入りしています。

でも、顔色が悪かったので『体調が悪いなら病院に行ったほうがいい』と周りに言われ、試合前練習も参加せず、病院に行きました。

その後、球団からの報告では森コーチの体調について『検査が必要だから何日か入院する』ということでしたので、少し休めばまた戻ってくる、と理解していました。

でもその次の報告が『亡くなった』という、信じられない悲報でした。彼と一緒に仕事をしてきて、何か持病があるとも聞いたことがなかったし、私が『何が起きてしまったのか』と聞きたいぐらいです。」

・・・と語っている。

いったい、何が起こったのだろうか?

当時、森コーチの父・茂南美さんが告別式の後、東京スポーツの取材で語ったのは・・・。

「本人の死因に関しては、毒性の強い溶連菌の感染による敗血症でした。最後に(福岡の病院で)本人と話をしたのは山口から駆けつけていた私だけ。母親とお嫁さんは東京からだったから間に合わなかった。

手術室に入る前、本人は、少し手などはむくんでいたけど『行ってくる』と普通に話をしていたぐらい。まさかそれが最後の会話になるとは思わなかった。」

溶連菌

子供を持つ親であれば、誰もが、耳にしたことのある疾病ではないだろうか?

森コーチのように、大人でもかかる疾病らしいのだが、症状が出ずに治ることが多いらしい。

ただ、溶連菌感染症はとても感染力が強く、合併症も起こしやすい疾患のため、軽視するのは危険だと言う。

溶連菌感染症とは、溶血連鎖球菌(溶連菌)という細菌が喉に感染し、発症する感染症のこと。

主な症状は、発熱、喉の痛みで、時々、手足や体に発疹が出るらしい。

また、中耳炎や皮膚に感染して「とびひ」(伝染性膿痂疹・でんせんせいのうかしん)を起こすこともあると言う。

まれに、次のような合併症を起こす場合があるので、要注意だそうだ。

腎炎(急性糸球体腎炎)

リウマチ熱

壊死(えし)性筋膜炎

・・・等々

専門家によると・・・。

「溶連菌は、たとえば子供が喉の炎症を起こす原因になります。ごくありふれた菌で、成人の喉や皮膚にも害を生じることなく存在しています。感染すると 2 ~ 3 日間の潜伏期間を経て、発熱やせき、喉の痛みなどの症状が現れます。

健康状態がよければ、血中に入っても白血球が退治してくれますが、菌の威力が強くて、体の中の免疫力が負けてしまった場合、溶連菌が血液中でどんどん増えていく菌血症を起こすことがあるんです。菌の毒素が臓器の働きを妨げるようになると、敗血症と呼ばれる、より重症の状態になり、最終的には多臓器不全に陥ります。」

・・・ということのようだ。

近年、溶連菌感染症になったあと、引き続いて急性腎炎を起こすケースが増えていると言う。

特に子供が溶連菌感染症にかかると、急性糸球体腎炎(※ 1 )を起こすことが多くあるらしい。

(※ 1 ) 一過性の急性腎炎症候群。

更に、日本では劇症型溶連菌感染症になる人が増加しているという。

劇症型溶連菌感染は、生命の危険もある感染症だそうだ。

この疾病は溶連菌が多くの毒素を出すので、発症から 24 時間以内で症状が急激に悪化するらしい。

敗血症性ショックを起こすと、腎機能障害や肝障害を合併し、早期に治療を施さないと約 30% の人が死亡するような感染症だと言うのだ。

専門家によれば・・・。

劇症型の溶連菌感染症にかかる人が増えたのは、次の原因が考えらるそうだ。

●溶連菌保菌者の増加

●免疫力が低い高齢者の増加

●劇症型感染を引き起こす溶連菌の種類が増えた

他にも、診断方法が簡単になり、以前は見抜けなかった感染者を多く発見できるようになったのも、原因の一つと考えられるという。

治療法は・・・?

連菌感染症と診断されると、抗生剤による服薬治療が行われる。

抗生剤を用いると、溶連菌感染症は快方に向かうが、用量を守った薬の服用は必至だそうだ。

薬の服用をやめると、快方に向かった症状がまた悪化したり、次のような疾病を起こしたりする恐れがあるから、必ず、処方された薬は飲み切らなければいけないそうだ。

☞腎炎

☞リウマチ熱など

更に、一カ月後に尿検査を受け、異常がないかを確認しなければならない!

溶連菌感染症は、飛沫(ひまつ)感染で周囲に移す可能性があるので、感染防止のために、できるだけ人との接触を控えなければいけない・・・。

このコロナ禍の中、飛沫感染対策が出来ているので、この点は大丈夫だろうか(笑)?

大人が溶連菌感染症に感染しても、症状が出ないまま治るケースが多いといわれており、既に、溶連菌に対する抗体を、持ち合わせている場合も多いらしい。

また、症状が風邪の初期症状に似ているため、医療機関を受診しても溶連菌感染症を疑わず、検査をしないこともあるようだ。

しかし、大人が溶連菌感染症を発症すると、子供よりも重症化したり、劇症型溶連菌感染症になったりすることがあり、その場合、ショック症状や腎不全などの合併症を起こしやすくなり、命の危機に陥るリスクが高まる。

正に、森コーチの例がこの症状だったのだろう・・・。

感染しやすいのは、ストレスや過労、睡眠不足などで、体力や免疫力が低下しているときらしいので、心身共に、気を付けなければならないということだ・・・。

溶連菌のように極々一般的なありふれた菌が、時に人の命を奪うまでに凶暴化するので、『人食いバクテリア』とも呼ばれるようだ。

日本における溶連菌感染症は、 1992 年に報告されて以来、 2000 年以降徐々に増加傾向にあるという。

1999 年・・・ 21 名
2000 年・・・ 44 名
2001 年・・・ 46 名
2002 年・・・ 92 名
2003 年・・・ 52 名
2005 年・・・ 60 名
2006 年・・・ 104 名
2007 年・・・ 93 名
2008 年・・・ 104 名
2009 年・・・ 103 名
2010 年・・・ 122 名
2011 年・・・ 197 名
2012 年・・・ 242 名
2013 年・・・ 203 名
2014 年・・・ 268 名
2015 年・・・ 415 名
2016 年・・・ 494 名
2017 年・・・ 587 名
2018 年・・・ 694 名
(国立感染症研究所より)

 

年々、増加傾向にあるのは一目瞭然だ。

 

感染に気を付け、免疫力を挙げることに留意しよう!