「真実の口」1,574 人口動態統計【前編】

人口動態統計速報というものをご存知だろうか?

人口動態統計とは、我が国の人口動態事象を把握し、人口及び厚生労働行政施策の基礎資料を得ることを目的とするものである。

「戸籍法」及び「死産の届出に関する規程」により届け出られた出生、死亡、婚姻、離婚及び死産の全数が対象となる。

人口動態調査票は、出生票、死亡票、死産票、婚姻票、離婚票の 5 種類があり、その概要は次のとおりである。

1.出生票:出生の年月日、場所、体重、父母の氏名及び年齢等出生届に基づく事項

2.死亡票:死亡者の生年月日、住所、死亡の年月日等死亡届に基づく事項

3.死産票:死産の年月日、場所、父母の年齢等死産届に基づく事項

4.婚姻票:夫妻の生年月、夫の住所、初婚・再婚の別等婚姻届に基づく事項

5.離婚票:夫妻の生年月、住所、離婚の種類等離婚届に基づく事項

調査の期間は、調査該当年の 1 月 1 日から同年 12 月 31 日までとされている。

調査の方法は、以下の通り、厳密に行われている。

市区町村長は、出生、死亡、婚姻、離婚又は死産の届出を受けたときは、その届書に基づいてすみやかに人口動態調査票を作成し、これを遅滞なく保健所の管轄区域によって当該保健所長に送付する。

保健所長は、毎月、市区町村長から送付された人口動態調査票のうち、前月中の出生、死亡及び死産であってその月の 14 日までに届出があったものに係る分(前々月以前の出生、死亡及び死産であって前月の 15 日からその月の 14 日までに届出があったものに係る分を含む)。並びに、前月中に届出があった婚姻及び離婚に係る分をとりまとめ、その月の 25 日までに都道府県知事に送付する。ただし、保健所を設置する市又は特別区の保健所にあっては、市長又は区長を経由する。

保健所長は、市区町村長から送付を受けた出生票に基づいて出生小票(出生票の写し)を、死亡票に基づいて死亡小票(死亡票の写し)を作成する。

都道府県知事は、保健所長から人口動態調査票の送付を受けたときは、送付を受けた日の属する月の翌月 5 日までに厚生労働大臣に送付する。

市区町村長保健所長及び都道府県知事は、上記ア、イ又はエにおける送付をする場合は、電子情報処理組織を使用して行わなければならない。ただし、これらによる送付ができない場合は、書面又は電子媒体による送付に代えて行うことができる。

人口動態調査票の送付を電子媒体で行う場合は、当該電子媒体のラベル領域に次の事項を記載し送付する。

  • 人口動態調査である旨
  • 人口動態調査票の種別
  • 送付年月日
  • 都道府県名、保健所名又は市区町村名

市区町村長保健所長及び都道府県知事は、上記ア、イ又はエにおいて電子情報処理組織を使用して人口動態調査票を送付する場合は、あらかじめ、当該市区町村名、保健所名又は都道府県名その他必要な事項について厚生労働大臣に届出を行い、送付者コード( ID 、パスワード)の付与を受ける。なお、市区町村長保健所長及び都道府県知事は、届出た事項に変更が生じる場合若しくは送付者コード( ID 、パスワード)の使用を廃止する場合は、遅滞なくその旨を厚生労働大臣に届出を行う。

上記を分かりやすくすれば、報告の系統は以下の図のようになっている

人口動態統計報告系統

集計は、厚生労働省政策統括官(統計・情報政策、政策評価担当)において行われている。

そして、集計された人口動態統計は、以下のように公表されている。

★人口動態統計速報
・数値:調査票を作成した数
・集計客体:日本における日本人及び外国人、並びに外国における日本人(いずれも前年以前発生のものを含む)
・公表:毎月(調査月の約 2 カ月後)

★人口動態統計月報
・数値:概数
・集計客体:日本における日本人(前年以前発生のものを除く)
・公表:毎月(調査月の 約 5 カ月後)
   :毎年(年間合計/調査年の翌年 6 月上旬)

★人口動態統計年報
・数値:確定数(概数に修正を加えたもの)
・集計客体:日本における日本人(日本における外国人、外国における日本人
及び前年以前発生のものは別掲)
・公表:毎年(調査年の翌年 9 月)
・刊行物:報告書(刊行は調査年の翌々年 3 月)

少し前になるのだが、コロナ禍の中、 6 月 5 日、厚生労働省から、 2019 年の人口動態統計が公表された。

令和元年( 2019 )人口動態統計月報年計(概数)の概況

出生数は、 865,234 人(前年比 53,166 人減)で、 4 年連続で過去最少を更新。

死亡数は、戦後最多の1,381,098 人(前年比 18,628 人増)。

死亡数から出生数を引いた人口自然減は、 515 864 人で、 50 万人を初めて超過。

出生数と死亡数の推移

自然減は、 2005 年に初めて発生し、 2007 年以降は減少幅が毎年拡大。

2019 年は、前年より 71,794 人拡大。

厚生労働省の担当者は、「 18 年の婚姻件数が前年比 3.4% 減で戦後最少だったことが、 2019 年の出生率低下につながったとみられる。子育ての不安や経済的問題を取り除くことが重要だ。」と指摘している。

ただ、 25 ~ 39 歳の女性人口が減っており、厚生労働省は、今後も減少傾向は続くとみているようだ。

角度を変えて紐解くと・・・。

出生率を母親の 5 歳ごとの年齢層別でみると、全年齢層で前年より減少。

出生数年次推移

最も高かったのは 30 代前半で、 20 代後半が続いた。

第 1 子出産時の母親の平均年齢は、 30.7 歳となっている。

また、 1 人の女性が生涯に産む子どもの推計人数を示す「合計特殊出生率」は、 1.36 で、前年を 0.06 ポイント下回り、 4 年連続で低下。

政府は、出生率の目標を 2025 年度までに 1.8に引き上げる目標を掲げているようだが、晩婚化から少子化という流れの中では、達成は一段と厳しさを増していると言わざるを得ない。

都道府県別の出生率は、沖縄県の 1.82 が最も高く、次いで宮崎県( 1.73 )、島根( 1.68 )がベスト 3 だった。

最低は、東京都の 1.15 で、宮城県( 1.23 )、北海道( 1.24)がワースト 3 だった。

また、結婚したカップルは 538,965 組(前年比 12 484 組増)。

この増加は 7 年ぶりで、厚生労働省では、「改元に合わせた『令和婚』が増えた結果では?」と分析している。

平均初婚年齢は、男性 31.2 歳、女性 29.6 歳で、ともに過去最となったようだ。

内閣府では、人口急減・超高齢化が経済社会に及ぼす影響としては、主に以下の 4 つを挙げている。

●経済規模の縮小-人口オーナスと縮小スパイラルが経済成長のブレーキに

経済活動はその担い手である労働力人口に左右される。

人口急減・超高齢化に向けた現状のままの流れが継続していくと、労働力人口は 2014 年 6,587 万人から2030 年 5,683 万人、 2060 年には 3,795 万人へと加速度的に減少していく。

総人口に占める労働力人口の割合は、 2014 年約 52% から 2060 年には約 44% に低下することから、働く人よりも支えられる人が多くなる。

定常状態に比して労働力人口減が経済にマイナスの負荷をかける状態を「人口オーナス」という。

高度成長期において、生産性が上昇していくだけでなく、労働力人口が増加することによって成長率が高まっていく状態(「人口ボーナス」)の反対の状態である。

また、急速な人口減少が、国内市場の縮小をもたらすと、投資先としての魅力を低下させ、更に人々の集積や交流を通じたイノベーションを生じにくくさせることによって、成長力が低下していく。加えて、労働力不足を補うために長時間労働が更に深刻化し、ワーク・ライフ・バランスも改善されず、少子化が更に進行していくという悪循環が生ずるおそれもある。

こうした人口急減・超高齢化による経済へのマイナスの負荷が需要面、供給面の両面で働き合って、マイナスの相乗効果を発揮し、一旦経済規模の縮小が始まると、それが更なる縮小を招くという「縮小スパイラル」に陥るおそれがある。

「縮小スパイラル」が強く作用する場合には、国民負担の増大が経済の成長を上回り、実際の国民生活の質や水準を表す一人当たりの実質消費水準が低下し、国民一人一人の豊かさが低下するような事態を招きかねない。

●基礎自治体の担い手の減少、東京圏の高齢化

市区町村毎の人口動向を人口1,000人当たりの出生数(普通出生率)でみると、1980年時点では人口1,000人当たりの出生数が10人以上の地域の割合は92%であったが、2010年には同割合が7.8%へと急速に低下している。

さらに、地方圏 から大都市圏への人口移動が現状のまま推移する場合、 2040 年に 20 ~ 30 代の女性人口が対 2010 年比で 5 割以上減少する自治体が 896 市町村(全体の 49.8% )、うち 2040 年に地方自治体の総人口が 1 万人未満となる地方自治体が 523 市町村(全体の 29.1%)と推計されている(日本創成会議人口減少問題検討分科会推計)。

これは、地方圏以上に出生率が低い東京圏への人口流入が続いていくと、人口急減・超高齢化の進行に拍車をかけていくということであり、今後、地方圏を中心に 4 分の 1以上の地方自治体で行政機能をこれまで通りに維持していくことが困難になるおそれがある。

また、東京圏においては、現状が継続すると、 2010 年総人口は 3,562 万人であったが、 2040 年には 3,231 万人に減少し、高齢化率も 2010 年 20.5% から 2040 年には 34.6% に上昇すると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所推計)。

これまで地方圏で人口減少と高齢化が先行してきたが、今後は大都市圏、特に東京圏においても人口減少や高齢化が急速に進行していくことが分かる。

人口が集中する東京圏での超高齢化の進行によって、グローバル都市としての活力が失われる一方で、多数の高齢者が所得や資産はあっても医療・介護が受けられない事態を招きかねない。

●社会保障制度と財政の持続可能性

世代間の扶養関係を、高齢者 1 人に対して現役世代(生産年齢人口)が何人で支えているかということで考えると、高齢者 1 人を支える現役世代の人数は、 1960 年では 11.2人 であったが、少子高齢化により、 1980 年には 7.4 人、 2014 年では 2.4 人となった。

現状が継続した場合、 2060 年、 2110 年時点では高齢者 1 人に対して現役世代が約 1 人となり、このように、高齢者と現役世代の人口が 1 対 1 に近づいた社会は、「肩車社会」と言われている。なお、仮に、合計特殊出生率が回復する場合であれば、2060年に1.6人、2110年には2.1人で支えるということになる。

こうした少子高齢化の進行による「肩車社会」の到来に伴い、医療・介護費を中心に社会保障に関する給付と負担の間のアンバランスは一段と強まることとなる。

また、家計や企業等の純貯蓄が減少する一方、財政赤字が十分に削減されなければ、経常収支黒字は構造的に縮小していき、国債の消化を海外に依存せざるを得ない状況となる。その結果、利払い費負担が増加するおそれがあるとともに、国際金融市場のショックに対して脆弱な構造になる。財政健全化の取組が着実に実行できなければ、財政の国際的信認を損ない、財政破たんリスクが急速に高まることも考えられる。

●理想の子ども数を持てない社会

国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によれば、 2010 年に夫婦にたずねた理想的な子ども数は 2.42 人で、現存子ども数は 1.71 と理想と現実にはギャップがある。 1977 年の同調査では、理想的な子ども数は 2.61 人で現存子ども数は 1.85 であった。

さらに、 2002 年の同調査では、理想的な子ども数を 1 人以上と答えた人に、なぜ子どもを持つことが理想なのかたずねたところ、約 82% の人が「子どもがいると生活が楽しく豊かになるから」と回答(複数回答)し、次いで約 56% の人が「結婚して子どもを持つことは自然なことだから」と回答し、約 40% の人が「好きな人の子どもを持ちたいから」と回答している。また、 1972 年の出産力調査では、子どもについてどのような意見を持っているのかたずねたところ、約 41% の人が「子どもがいると家庭が明るく楽しい」と回答し、次いで約 18% の人が「子どもは老後のささえ」と回答し、約 13% の人が「子どもは国の将来の発展にとって必要」と回答している。

我が国の未来はどこへ向かって行っているのだろうか?

次回へ・・・。