「真実の口」1,783 人類の終焉(?)【中編】

前回の続き・・・。

【統計解析】

個々の研究からの平均 SC または平均 TSC の点推定値を用いて、暦年ごとの SC または TSC の傾きで測定される研究期間中の時間傾向をモデル化した。

サンプル収集期間の中間点をすべての分析で独立変数とした。

単位は、 SC は百万 /ml 、 TSC は百万( SC ×サンプル量と定義)であり、全ての傾きは暦年あたりの単位変化を示す。

まず、単純な線形回帰モデルを用いて、 SC と TSC をサンプル収集年の関数として推定し、各研究をサンプルサイズによって重み付けした。

次に、ランダム効果メタ回帰を用いて、 SC と TSC の両方を時間の線形関数としてモデル化し、研究を SE で重み付けした。

全てのメタ回帰分析において、複数の SC 推定値を有する研究を示す指標変数を含めた。

事前に設定した潜在的交絡因子(受胎可能群、地理的群、年齢、禁欲期間、精液採取および計数方法の報告の有無、 1 人当たりのサンプル数、除外基準の指標)を用いて制御した。

いくつかの重要な変数については、欠損値を推定し、推定値であることを示す変数をメタ回帰分析に含めた。

例えば、 SC または TSC の中央値(平均値ではない)を報告した研究については、両方が報告された研究の平均値と中央値の差の平均値を加算して平均値を推定した。

範囲やサンプル採取の中間点が報告されていない研究では、発表年とサンプル採取の中間点が報告されている研究の平均差を発表年から差し引いて中間点を推定した。

SC または TSC の 標準偏差(以下、SD )が報告され、 SE が報告されていない場合、 SE は SD を各推定値のサンプルサイズの平方根で割って算出された。

SD または SE を報告しなかった研究では、 SD を報告した研究の平均 SD をこの推定値のサンプルサイズの平方根で割ることにより SE を推定した。

平均 TSC が報告されていない場合は、平均 SC に平均精液量を乗じて算出した。

最終的な分析対象は 2 つの国のグループである。

1 つは、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドの研究を含むグループ(ここでは「欧米」と呼ぶ)。

もう 1 つは、その他の国(南米、アジア、アフリカ)の研究を含む(「その他」/「非西洋」である)。

当初は、北米の研究をヨーロッパ/オーストラリアと分けて検討していたが、傾向が似ていることと、推定値の 16% のみが北米のものであったことから、これらを統合した。

出生率グループ( 非選択性(※注 1 ) 対 選択性(※注 1 ) )および地理的グループ( 欧米 対 その他) による勾配の変化を評価した。

(※注 1 ) 前編でも出てきたが、非選択性とは不妊男のことであり、選択性とは妊娠能力がある男性のことである。

出生率及び地理的要因による影響が大きいため、 4 つのカテゴリーについて相互作用項を用いたモデルの結果を示す。

非選択性西洋、選択性西洋、非選択性その他、選択性その他。

全体の減少率は、データ収集の初年度と最終年度の精子数( SC または TSC )を推定し、その差を初年度の推定値で割ることによって算出した。

1 年あたりの減少率は、全体の減少率を年数で割って算出した。

TSC を TSC の SE で重み付けし、精液量の評価方法(計量、ピペットからの読み取り、チューブからの読み取り、その他)で調整した上で、すべての解析を実施した。

非直線性を評価するためにメタ回帰分析でサンプル採取年の 3 次、 2 次項を追加する、情報が不完全なグループなど、共変量ごとに特定のグループを除外し、モデルから共変量を一つずつ取り除き、 SE が 2,000万 /ml 以上の研究を取り除くなど、いくつかの感度分析を実施した。

年齢群を平均年齢で置き換え、平均年齢を報告していない研究を除外する
高い喫煙率( 30% 以上)の共変数を追加する
これらの国の影響を調べるために、推定値を最も多く提供した国を除外する最近の傾向を調べるために、1985年以降にデータを収集した研究および 1995 年以降の研究に分析を限定する
・・・など。

すべての解析は、 STATA version 14.1 ( Stata Corp, TX, USA ) を用いて行われた。主効果は P<0.05 、交互作用は P<0.10 を有意とした。

【算定結果】

★系統的批評と要約統計

PubMed と Embase で検索したところ、 7,518 件の論文が見つかった。

PubMed と Embase の検索により、抽象的な選別の基準に合致する 7,518 件の論文を同定した。

このうち、 14 件の重複を削除し、 4,994 件をタイトルまたは抽象的な選別に基づいて除外した。

残りの 2,510 件の論文の全文について適格性を検討し、 2,179 件の研究を除外した。

残りの 331 件の論文のうち、 146 件はデータ抽出と 2 回目の全文選別の際に除外された(主に複数論文のため)。

メタ回帰分析では、残りの 185 件の研究に基づいており、これには 1973 年から 2011 年の間に 42,935 人の男性から収集されたサンプルに基づく、 244 件の固有の平均 SC 推定値が含まれている。

データは 6 大陸、 50 ヶ国から入手可能であった。

平均 SC は 8,100 万 /ml 、平均 TSC は 2 億 6,000 万、データサンプル収集の平均年は 1995 年であった。

244 の推定値のうち、 110( 45% )が 非選択性西洋 、65( 27% )が選択制西洋、30( 12% )が非選択制その他、39(16% )が 選択性その他であった。

メタ解析に含まれる 185 の出版物からのデータは、リクエストに応じて入手可能である-アクセスについては対応する著者に連絡すること。

★単純な線形モデル

4 つの男性グループの結果を組み合わせると、単純な線形モデル(未調整、サンプルサイズによる重み付け)を用いた場合、 SC は調査期間中に有意に減少した。

SC は 1973 年から 2011 年の間に年間 0.75% 、全体では 28.5% 減少している。

TSC についても同様の傾向が見られ、これは TSC が 1 年あたり 0.75% 下し、全体で 28.5% の低下に対応するものである。

精液量( 156 人の推定値)は、研究期間中、有意な変化はなかった。

★メタ回帰モデル

出生率と地理的グループの交互作用項の有無にかかわらず、未調整および調整後のメタ回帰モデルを実行した。

推定値を SE で重み付けし、共変量調整を行わない SC の単純メタ回帰モデルでは、勾配は単純回帰のものと同様であったが、 CI (※注 2)が広くなった。

(※注 2 ) CI ( Confidence Interval ):信頼区間。統計学で母集団の真の値(母平均等)が含まれることが、かなり確信( confident )できる数値範囲のこと。

共変量調整により、傾きは有意に変化しなかったが、 CI はさらに広がった。

勾配は、出生率および地理的グループと時間の相互作用によって有意に変化した。

三元交互作用項(時間 × 受胎率グループ × 地理的グループ)は有意ではなく、最終モデルには含めなかった。

2 つの交互作用項(時間 × 受胎率グループ及び時間 × 地理的グループ)を含む SC の最終調整モデルでは、非選択制西洋と選択制西洋で著しい減少が見られ、非選択制西洋の方が急な傾きを示した。

完全調整モデルによる推定値、 1973 年の 9,900 万 /ml から 2011 年の 4,710 万 / ml を用いると、非選択制西洋グループの SC は 1973 年から 2011 年の間に年 1.4% 、全体で 52.4% 減少していることがわかる。

TSC の最終調整モデルでは、時間 × 受胎率グループ、時間 × 地理的グループを含み、欧米の研究では、非選択群 対 受胎率で TSC に急激な傾斜が見られた。

1973 年の 3 億 3,750 万人から 2011 年の 1 億 3,750 万人という完全調整モデルによる推定値を用いると、非選択西洋人グループの TSC は 1973 年から 2011 年の間に年間 1.6% 、全体では 59.3% 減少していることがわかった。

その他諸国全体でも、また非選択男性、選択性男性に分けても、 SC や TSC に有意な傾向は見られなかった。

★感度分析

我々は、モデルの仮定、共変量の影響、欠損データの推定、 SE の傾向、研究期間に対する結果の感度を調べるために、複数の分析を行った。

簡潔さのために、感度分析の結果は、ここでは非選択的欧米人グループの SC の傾きについて示している。

すべての感度分析において、非選択欧米人群では有意かつ強い減少が見られた。

– メタ回帰モデルに年の二次関数または三次関数を追加しても、全体でも、地理的または出生率のどのグループ内でも、傾向の形状を大きく変えることはなく、モデルの適合性も向上しなかった。

– SC > 2000 万 /ml の SE を持つ 9 つの推定値を除外した後、非選択制西洋の傾きは -131万 /ml であった。

– 平均年齢に関するデータがない 85 件の研究を除外し、年齢群の代わりに平均年齢で調整すると、傾きは -168 万 /ml となった。

– 喫煙者の割合は、 25% の研究でのみ報告されていた。この変数を調べるために,喫煙者の割合が高い( 30% 以上)という共変数を含む感度分析を行ったところ,傾きはわずかに変化した。

– 非選択制西洋の傾きは、一度に 10 以上の推定値を持つ各国・地域を除外しても、大きくは変わらなかった。オーストラリアとニュージーランドからの 28 件の推定値を除外すると、北米/ヨーロッパからの非選択男性の研究の傾きは -113 万 /mlであった。米国またはデンマークからの推定値を除外すると、傾きはそれぞれ -146 万 /ml であった。

– 最近のデータ( 1985 年以降に収集された 196 の推定値)に分析を限定すると、傾きはフルモデルと同様であった。 1995 年以降のデータに限定すると、傾きはやや急であった。

TSC の勾配に関する結果は、すべての感度分析で頑健であった。

1995 年以降のデータに限定して解析すると、傾きはいくぶん急であった。

次回へ・・・。