「真実の口」117 我々は何をすべきか?⑮

前回、何故、フグに使用したホルマリンがアコヤ貝を全滅させたのかというとこで締めた。

何故を紐解く前に、フグに付いたエラムシを、どのようにホルマリンを使い、除去していたかを説明したい。

まず、養殖の生け簀を想像できる人はどれくらいいるだろうか?

こんな感じを想像して欲しい。

生け簀

大きさはまちまちだが、大方の深さは10m程度である。

まず、この生け簀に消毒用のシートを張り、シートの中にホルマリンを投入し、海水と混ぜ合わせる。

そこに、フグを追い込み、一定時間シートの中でフグを回遊させ、生け簀に戻す。

フグを生け簀に戻した後、シートを取り外す。

・・・という工程でエラムシを除去するのである。

フグをホルマリンの海で泳がせて、ホルマリンは残留しないのだろうかと疑問に思う人もいると思う。

前述の新聞報道を受けて、東京の消費者団体が、ふぐの切り身を日本食品分析センターに依頼分析したところ、調べたところ、1.3ppmのホルムアルデヒドが検出された。

建築に使用される薬品がシックハウスを引き起こす原因となっていると言うことで、平成15年7月1日、建築基準法が改正施工された。

ホルムアルデヒドは、0.08ppm以下にするように指針は決められた。

フグの残留ホルマリン濃度1.3ppmは大丈夫なのか?

高級料理のフグは、そう頻繁に食べる物でもないからという理由からなのか、国水産物卸組合連合会は早々に安全宣言をだし、厚生労働省も追随するように安全宣言を出した。

産業従事者の保護や保障問題があるからだろうか?

ここでも消費者は二の次である。

少し、横道にそれたが、使用されたホルマリンは何処に行くのか疑問に思った人はいるだろうか?

皆の予想通り、使用されたホルマリンはそのまま海中に放出されていた。

消毒のペースは、大凡、2~3週間に1回のペースで行われ、当時の養殖業者の話では1週間に1回のペースで消毒を行っていたらしい。

その結果、一基の生け簀だけで、年間数トンものホルマリンが海洋放棄されていたことになる。

これが、アコヤ貝全滅の真相である。

何故、わざわざこんな昔のことを引っ張り出してきたかというと、離島に渡り、本土に帰ったその日、行きつけの寿司屋に、その土地の漁師が来ていて、少し飲みながら話したときに、信じられないことを口にしたからである。

「天然と養殖は歯ごたえの違いだけだから、寄生虫が付かない分、養殖の方が良い」と言ったのである。

その瞬間、長崎のホルマリンフグを思い出したのである。

皆は、養殖魚の現状を知っているだろうか?

畜産と何ら変わらないのである。

早く成長させたいために、成長ホルモンの入った餌を与える。

多くの収益を上げるために、生け簀に大量養殖し、病気を防ぐために抗生物質を投与する。

漁師の言葉を聞いたときに、所詮、魚は金儲けの手段でしかないんだな・・・と諦めの境地になった。

子供の魚放れが言われて久しい。

これは何故なのだろう?

私の3女は、「刺身を食べると生臭くて美味しくない」と言っていた。

しかし、私の田舎の五島列島から漁師がその日水揚げしたものを送ってもらったものは、全然、食い付きが違う。

また、大阪事務所の近くのスーパーで、明石や和歌山から活き絞めされた魚を売っている店があるのだが、そこから買ってくると、美味しいといって沢山食べる。

魚は肉と違って、生で食べることが出来る。

そのために、子供は養殖の魚には毒があると気づき易いのかもしれない。

全3回にするつもりだったが、後一度だけ、水産業に触れる。