「真実の口」262 オール電化で良いんかい?⑪

前回、電磁波の安全性への根拠は、WHOとICNIRPの発表に基づいているということを寄稿した。

確かに、WHOという国連の専門機関が、電磁波の安全性を説いているのだから、これほど安全なものはないのだろう・・・?

WHOは、“ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)ガイドライン”に重きを置ているようである。

ここで、どこかの国であれば、WHOとICNIRPが、利権の絡んだ持ちつ持たれつの関係で、云々ということがよくあるのだが・・・。

少し気になったので、ICNIRPのHPを見てみる。

http://www.icnirp.de/index.html

ICNIRPは、独立した専門機関で、薬、皮膚科、眼科、疫学、生物学、光生物学、生理学、物理学、電気工学、線量測定と多岐にわたる研究をしているようである。

WHOとの直接・間接的な利害関係は見られない???

現在、一般的に用いられているガイドラインは、1998年4月に出されたものである。

おいおい、技術の進歩は速いというのに、随分とまた古いデータを採用しているな・・・と思うかも知れないが、ご安心を。

2010年11月16日に、ICNIRPは12年ぶりに、新ガイドラインを発表している。

新ガイドラインについて、難しい解説をすると、意味不明になりそうなので、簡単に要約すれば、「技術が進歩したことにより、様々な角度から検討した結果、電磁波を長時間浴びたとしても、健康に害を与えるという根拠は何ら見つからない」いう結果を導き出している。

更に、 1998年の旧ガイドラインでは、磁場に関しての参考レベルが、50Hz・60Hzの商用周波数で100マイクロテスラ(1,000ミリガウス)だったものが、200マイクロテスラ(2,000ミリガウス)、と2倍に緩和されている。

当然、IH調理器で使う20~60KHzでも、6.25マイクロテスラ(62.5ミリガウス)が、27マイクロテスラ(270ミリガウス)約4.3倍に緩和されている。

日本では、 これを受けて、『電気設備に関する技術基準を定める省令』を2011年 3月に一部改正し、新ガイドライン参考レベルの200マイクロテスラ(2,000ミリガウス)を規制値として導入している(2011年10月から施行)。

流石、日本は対応が早い!!

東電の電磁波に関するPDFのパンフレットがある。

http://www.tepco.co.jp/ps-engineering/denjikai/panf.pdf

この中では、我が国の電力設備が、如何にICNIRPの参考レベルをクリアし、安全であるかということを訥々(とつとつ)と語っている。

日本は先進国でも珍しいというか(?)、鈍い(?)というのか電磁波に寛容である。

日本の規制は、感電を避けるために「電界を3kv/m(電界の1メートルあたりに生じている電位差で3kvキロボルト)を超えないようにする」というものであり、電圧が大きくなると鉄塔を高くしなければならない理由もここにある。

しかし、高圧線の健康影響は、本来、磁界の方に問題がある。

日本は超低周波の磁界の強さを規制していない、先進国でも珍しい国である。

超低周波の規制は国によって大きなバラツキがあるので、いくつか紹介してみよう。

【日本】
超低周波の磁界の強さの規制無し。

【スウェーデン】
2~3ミリガウスを目安に小学校、幼稚園近辺の鉄塔の撤去や移転、住宅密集地近くの送電線の撤去などを地域の中で行っている。

【アメリカ】
州ごとに磁界の規制があり、磁場については4ミリガウスの独自規制をするところfが増えている。FDA(米国食品医療品局)では、携帯電話業界に対して電波の曝露を最低限にするように要請。

【ドイツ】
ICNIRPガイドラインを踏まえて、法律に基づく電磁波規制。

【イギリス】
93年に英国放射線防護評議会が示した独自のガイドラインに基づいて対応。16才未満の子どもには携帯電話の使用を控えるように勧告。

【スイス】
規制値以外に住宅、病院、学校などのとくに防護が必要な場所においては磁界の規制値を設定。
【イタリア】
幼稚園、小学校などで2ミリガウスに規制。

【フランス】
16歳未満の子どもは携帯電話の使用を控え、イヤホンの使用によって頭部に密着させるのを防ぐように。更に、妊産婦は携帯電話本体を腹部から離すように勧告。

各国の慎重な対応と我が国を比較すると、如何に、国や電力会社あるいは家電メーカーが、国民に電磁波を軽視させ、日本を総電力化しようと目論んでいたのではと訝ってしまう・・・。