「真実の口」267 オール電化で良いんかい?⑯

前回、WHOの真意と日本という国あるいは企業の本音について寄稿した。

8月8日のブログには、日本は先進国の中でも、電磁波に無頓着な稀少な国であるということも書いた。

オール電化では、エコキュートやIHクッキングヒーター等の200vの電化製品を使用するため、200Vの屋内配線工事が必要になるということも書いた。

2001年、電力会社各社と日立製作所、東芝、三菱電機等の重電各社でつくる日本電気工業界は、家庭用電圧を欧州並みの230Vへ昇圧するように提言している。

電気・電力業界が言うには、「送電効率が上がるため大きな省エネ効果が見込めるほか、家庭でもエアコンや乾燥機の能力が上がり便利になる」というのである。

100Vから230Vへ昇圧することにより、100V家電は使えなくなる。

つまり、昇圧することにより、電化製品の買い換えを否応なしに促され、低迷する白物家電ひいては電気事業全体の巻き返しにつながるという腹黒い考えが見えてしまう。

実際の動きとしては、オール電化住宅の影響で、230Vではなく200V化が進んでいるようだが・・・

200V工事の普及率は全国平均で約60%ということらしい。

日本電気工業界のHPでは、ハイパワー家電を推奨し、家庭用電化製品の総200V化へ着々と計画を遂行しているようである。

ちょっと気になったので、いつものように楽天で200V家電を調べてみた。

IHクッキングヒーターや電気温水器は当たり前だが、クーラー、掃除機、食器乾燥機、衣類乾燥機、暖房器具とハイパワー家電が想像よりもあるのでびっくりした。

確かに、世界各国の電圧を見てみると220~240Vが主流である。

前に、電気・電力業界の言い分として、「送電効率が上がるため大きな省エネ効果が見込める」ということを書いたのだが、これには大きな野望があるというのである。

現在、変電所から6,600Vの電圧で電気が送られ、電柱の変圧器によって、家庭に届くまでに100Vに降圧される。

しかし、電力会社や家電メーカーは、前の提言の中で、電柱までを22,000Vまで増やし家庭へも200V級や400V級で届くように求めているというのである。

ちなみに、試算ではこの結果、送電ロスが減り、一年間に電力量の1%弱にあたる70億キロワット時以上の電力が節約でき、CO2排出量に換算すると300万トン以上の低減効果があるという(?)ことを言っている。

しかし、安全性はどうなるのだろう?

電磁波については、今更、書くまでもないと思うのでさらりと流すが・・・

高圧送電線(6600V)の真下では、場所によっては、1~10mG前後の磁場が計測される。

これが22,000Vになったらどうなるのだろう?

マンションの3~4階に住んでいる人で、部屋の「窓を開けると、高圧電線が見える人も少なくないのではないだろうか?

大丈夫?

・・・と、電磁波問題に関しては、深く踏み込むのは止めて、もっと、現実的な問題がある。

電圧をあげることにより、火災は大丈夫なのかということである。

お隣の国、韓国では、1970 年代から2005 年まで国家プロジェクトとして配電電圧の昇圧化事業を行い,単相100V から三相4 線式(220V/380V)への昇圧を完了している。

その間、韓国の電気火災は、1980 年代の2,000 件台から近年では10,000 件台を超えて、約5 倍に増加している。

もちろん、我が国でも、1980 年代の5000 件台から近年では7000 件台に増加しているが、韓国の増加率に比べると、その比ではない。

当然、この当時の電化製品の普及率を考えると、日本の方が遙かに普及しているのは、今更、説明するまでもないと思う。

また、人口も日本が128,056,026人(2010年)に対して、48,333,000人(2008年)と半分以下なのだから、その電気火災の多さは目を見張る物がある。

更に、電圧を上げれば、感電する可能性も増加する。

日本では、例年、感電死傷者数が100~200 名であるのに対し、韓国の死傷者数は800~1000 名にのぼる。

このデータは、以下のリンクを参考にしている。

http://www.jniosh.go.jp/publication/JOSH/pdf/vol1no1/Vol01No1-02c.pdf

ある会社が調べた面白いデータがある。

築30年以上の住宅と新築5年以内の住宅について、分電盤の回路数、屋内配線の量、コンセントの数、照明の数とデータを取った。

その結果、屋内配線の量:150m→950m、分電盤の回路数:6回路→23回路、コンセントの数:16箇所→48箇所、照明の数:16箇所→42箇所と30年前の住宅と比較して、近年の住宅は電気設備が大きく増えている。

それだけ、我々の住む家は電磁波に囲まれており、200Vに昇圧すれば、電気火災のリスクも増えると言うことである。

電化製品のパワーが上がったと喜ぶには、その代償は大きくないだろうか?