「真実の口」270 泉南石綿訴訟、原告が逆転敗訴!

25日、アスベスト(石綿)による健康被害を認識しながら対策を怠り被害を拡大させたとして、大阪府南部の泉南地域の元石綿工場従業員らが国に計9億4,600万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が、大阪高裁であった。

一審では、「国は必要な規制を怠った」として、石綿被害で初めて国の賠償責任を認め、4億3,500万円の賠償を命じたものだったが、一転、原告側の請求をすべて棄却した。

原告は石綿工場などで働き、石綿肺などを患った元従業員や遺族、工場の近隣住民ら32人。

裁判長は判決理由で、『「国は昭和22年に制定した旧労働安全衛生規則で、事業者に換気などの措置を講じることを義務づけていた」とし、事業者側が粉塵(ふんじん)の飛散を防止する排気装置の導入に積極的でなかったと指摘。国はその後も法整備や行政指導を順次行っており、「規制権限を適切に行使しなかった違法はない」と結論づけた。』

25日早朝、原告の一人、大阪府岸和田市に住む80歳の女性が死去した。

弁護団によると、死因は石綿肺に起因する心不全だった。

原告等は、日々、悪化する病状を訴えている。

しかし、結果は・・・。

原告等は上告する予定だが、国の責任を厳しく指摘する近年の流れとは異なる判断が、高裁レベルで示されたことで、係争中の同種訴訟にも影響を与えることが予想される。

また、控訴審判決では、「工業製品の製造や加工の際に新たな化学物質の排出を避けることは不可能であり、その弊害への懸念を理由に規制を厳しくすれば、工業技術の発達や産業社会の発展を大きく阻害する」と指摘している。

結局、企業の利益優先を結論づける結果となっており、国の責任も、旧労働安全衛生規則で工場へのマスクの整備や使用義務を定め、その後も労働基準監督署を通じて排気装置の普及などを指導しており、国の規制態度として著しく緩慢であったとはいえないと判断ということらしい。

このケースをCS(化学物質過敏症)・シックハウスに置き換えて考えてみよう。

Q.国は、化学物質の基準を決めているか?

A. シックハウス対策に係る法令等は、2003年7月1日に施行されている。

Q.設計者、工事監理者、住宅供給事業者への指導は徹底されているか?

A.確認申請では、使用建築材料表で告示対象建築材料の種別(等級)を明示しなくてはならず、使用建築材料の個々の商品名、JISの認証、又はJASの認定の別を特定する必要はないが、原則として、国土交通大臣の認定に係る認定書の写しを提出する必要がある。また、中間検査及び完了検査では、内装の仕上げに用いた全ての建築材料について、その種別(等級)、種類、数量及び確認に要した表示又は書類等(JIS、JAS、国土交通大臣の認定に係る認定書の写し等)その他の工事監理の状況に関する事項について、具体的かつ詳細に記載した受入検査の記録が必要となる。

Q.建材の販売業者、輸入業者の方への指導は徹底されているか?

A.告示対象建築材料に関して、JISの認証、JASの認定又は国土交通大臣の認定を受けていない場合で、これから建築材料として用いようとする場合には、JISの認証、JASの認定又は国土交通大臣の認定の手続きが必要になる。その他、告示対象建築材料を用いる製品は、建築物の工事現場での受入検査までに、JISの認証、JASの認定又は国土交通大臣の認定を取得し、その種別(等級)を明らかにする必要がある。

如何だろう?

この状況下では、国は法整備をし、企業へは様々なことを義務づけているということになる。

また、設計者、工事監理者、住宅供給事業者、建材の販売業者、輸入業者も国の法整備の下、対応していると言うことになる。

その上、CS(化学物質過敏症)・シックハウスは、つかみ所のない症状が特徴である。

現在、1,000万人を超えてるという潜在的なCS(化学物質過敏症)・シックハウスの羅漢者が、もし、国や企業を相手に訴えを起こしても、一審で敗訴と言うことになるのではないだろうか?

ましてや、前回のテーマで取り上げたEHS(電磁波過敏症)などは、もっと逃げ道があるのではないだろうか?

やはり、この国では、自分の健康は自身で守らなければいけないということなのだろうか?

恐るべし日本・・・。