「真実の口」311 ふるさと(番外編その1)

前回、少し触れたが、11月26日放送の「フジテレビ・新報道2001」で香港の実業家ゴードン・ウー(胡応湘)氏が、取り上げられたのだが、今回は番外編として、氏に触れながら話を進めてみたいと思う。

私の日曜の朝は、「フジテレビ・新報道2001」で始まる。

前番組の報道2001の時には、竹村健一氏が出演しており、政治色が強かったため敬遠していたのだが、竹村氏の勇退とともに、番組もリニューアルされ、政治一辺倒ではなく、身近な話題も取り上げるようになってから、ほぼ毎週、見るようになった。

今週は、香港有数の大富豪である胡氏が、北海道のニセコに土地を買い、海外富裕層向けのリゾートマンションを作るという話題を取り上げていた。

私は、また、富裕層の好みそうな瀟洒なマンション群でも作るのかと思いながら、テレビを見ていたのだが、全く違っていた。

居住者が、実際に農地を耕し、収穫した野菜を食べることができるという体験型のマンションなのである。

富裕層の遊び心をくすぐるソフト面を考慮した計画なのである。

私がプロデュースする商品は、デザインや容器の形状等々、徹底的にこだわる。

そんな常日頃から、ソフト面の重視を考えている私は、胡氏の考え方に興味を持ち、氏について少し調べてみた。

ゴードン・ウー(胡応湘)氏は、合和集団(ホープウェルグループ)という香港有数のディベロッパーの主席である。

胡氏は、1935年、香港に生まれ、1958年に米国プリンストン大学の土木科を卒業し、香港に戻った後は、土木の知識を生かし香港政府の技師を経て、1969年に実業家だった父親の支援を受け合和実業を設立している。

土木系出身である胡氏は、インフラ整備や不動産開発などを得意とし、国の先行きを見据えてインフラ投資し、着実に収益を上げている人だと言う。

例えば、自転車全盛の時代の共産中国政権に、「国の為には高速道路が必要」と説き、自前資金で有料高速道路を造り、現在、自動車全盛の中国において多額の高速代を手にしているらしい・・・

合和実業を一躍有名にしたのは、1980年に完成した香港島の主要商業地区・湾仔(ワンチャイ)地区にそびえる「合和中心(ホープウェルセンター)」である。

ホープウェルセンターは、高さ216mを誇る超高層ビルで、建設当時、香港一高かった中環(セントラル)地区にあるジャーディンハウスを抜いて、1990年に中銀タワー(367.4m)が完成するまで香港で最も高いビルとして君臨していた。

面白いのはその形状で、真円柱型をしており、ビルの最上部には、360度回転する展望レストランがある。

ホープウェルセンター

この独特のデザインも胡氏自身の設計と言うことである。

このハード・ソフトの両面を考慮した建物は、ワンチャイ地区のシンボル的存在となり、観光スポットにもなっている。

また、胡氏は香港の財界では、大胆な投資戦略を実行することで有名らしい。

例えば、中国・香港・マカオに代表されるいわゆる珠江デルタ内の関係緊密化を受け、近年建設の議論が活発になっている「港珠澳大橋」の構想を初めて提案したのは胡氏である。

港珠澳大橋は、香港から海を隔てて約60キロ離れているマカオ(澳門)と中国大陸の珠海市の三地を結ぶ壮大なインフラ整備事業であるが、胡氏は83年にすでにこの計画を提唱しており、現在もその実現に変わらぬ情熱を示して続けている。

港珠澳大橋を実現するには400億香港ドル(約5,600億円)を超える建設費と、投資回収に36年の年月が必要であると試算されているが、これ対して、胡氏は「回収に300年かかるとしても、3年で回収できるとしても、いずれにせよ投資に興味がある」と応じている。

発想が凄い・・・

ただ、その先には、国の行く末を見据えてのハード・ソフトの両面を考えた戦略が頭にあるのだろう・・・

胡氏の業績は、香港の経済の繁栄に貢献したばかりでなく、タイの運輸業、インド、パキスタンの電力業にも功績がある。

胡氏は、自分の“ふるさと”香港を愛してやまないそうである。

日本という国の未来を見越して、投資して、ハード・ソフト両面から考えることの出来る日本人はどれだけいるのだろう?

次回へ・・・。