「真実の口」354 続・韓国こぼれ話

昨年の訪韓の報告も一通り終わったので、韓国の諸事情をお伝えしようと思う。

ここ数年、日本でも、韓国の受験戦争の熾烈さがテレビ等で放送され、話題に登るようになった。

それも年に一度きりの、「大学修学能力試験」、略して“修能(スヌン)”を受けるためである。

通訳の李さんに聞いたのだが、この試験は、近年、11月中旬の木曜日に実施されているらしい。

日本と違い、各大学で試験を実施するわけではなく、大学に進みたい人間は、国立・私立関係なく、この日の試験を必ず受けなければいけないのである。

この“修能”の結果次第で、希望の大学に行けるか(?)、果ては、希望の人生を歩めるか(?)、学生も親も、全てをこの日に懸けているわけである。

そのため、試験当日の朝は受験生が交通渋滞につかまらないようにと、各企業は出勤時間を1時間遅らせ、バスの運行も増やされているという。

その上、ヒアリング試験の時間帯では、試験会場周辺のバスや列車は徐行運転を強制され、クラクションも禁止されるというのだから驚きだ。

韓国に行ったことのある方ならお判りだと思うが、渋滞とクラクションはソウル名物と言っても良いくらい、朝から晩までクラクションが鳴っているというのに・・・。

受験生が、パトカーや白バイ(?)に乗って、試験会場にやってくるという光景を、テレビで見て、驚いた人も多いと思うが、あれは、警察官が、遅刻した受験生を発見したら、即座に試験会場まで送り届ける為にスタンバイしているらしいのである。

本人はもちろん家族、町、国を挙げて、この“修能”を応援するというのだから、いやはや凄い物である。

日本の高等教育進学率(大学に順ずる高等教育機関=専門大学つまり日本の短期大学・専門学校相当を含める)は50%台程度なのに、韓国は、なんと90%弱というのだから、“受験戦争”という言葉が、ピッタリである。

ただ、韓国には、中国の影響を受けて、李氏朝鮮王朝(1392~1910)時代にも、優秀な官吏を選ぶために“科挙”制という制度があった。

この“科挙”は、現在の韓国より熾烈を極めていたというのだから、想像にも及ばない。

ソウルでの話だが、殆どの家族が、毎月、一人あたりの学外教育費に100万ウォン前後を、払っているという。

では、1世帯当たりの月平均収入はというと、300万ウォンらしいので、実に30%を教育費にかけているのでる。

韓国でも少子化が進んでいるというのだが、これでは、2人目など考える余裕もないだろう。

韓国の2011年の合計特殊出生率は、1.23で、222カ国・地域で217位というのだから、人ごとながら心配してしまう。

アメリカの専門家の試算によると、このままでは、韓国の人口は、2100年には現在の3分の2に、2200年には140万人、その後も変わらなければ、韓国人は地球上から消滅してしまうという。

しかし、通訳の李さんに聞いた話だが、“修能”の前後で受験生の自殺が、後を絶たないというのである。

“修能”に人生の全てを懸けて、自信がなくて命を絶つ者、結果を悲観して命を絶つ者・・・。

私は一浪して、大学に行ったのだが、韓国でなくて良かったとつくづく思う。

更に、李さんによると、“修能”を乗り越えて、大学生という地位を得た彼(彼女)らだが、現在の韓国は、就職率が著しく低いらしい。

5人に2人、ここ最近は5人に3人は就職出来ていないというのである。

そして、就職出来ないことを苦に、自殺する大学生も増えてきているというのだから、全く、笑えない話である。