「真実の口」535 がん遺伝子検査…①

私が、是非、皆に読んで欲しいがんに関する著書を紹介している最中、アメリカの人気女優、アンジェリーナ・ジョリーさん(37)が、乳がんのリスクを高める遺伝子の変異が見つかったため、予防措置として両乳房を切除する手術を受けたということを、14日付のニューヨーク・タイムズへの寄稿文と言う形で告白がされた。

寄稿文によると、医師から「乳がんになる可能性が87%」と説明され、治療を決断。

自身の母親が、がんで約10年間、闘病生活を送り、56歳で他界したことも影響したという。

知らない人もいるかもしれないので、アンジェリーナ・ジョリーについて、少し解説する。

アンジェリーナ・ジョリーは14歳で、アメリカとヨーロッパを基点にファッションモデルを始め、その一方で幾つかのミュージック・ビデオに出演。

自身の兄が製作した学生映画への出演を経て1993年、低予算ながら映画初出演を果たす。

1995年、『サイバーネット』で映画初主演を果たし、興業収入こそ精彩を欠いたものの、ジョリーの存在感と演技は『ニューヨーク・タイムズ』において絶賛を博し、同作品はソフト化されてからカルト映画として再評価された。

1998年、テレビ映画『ジーア/悲劇のスーパーモデル』で、エイズとドラッグにより短い生涯を終えた実在のモデル、ジア・キャランジを演じたジョリーは、この作品で数多くの賞とノミネートを受けた。

1999年、『17歳のカルテ』で、アカデミー助演女優賞を受賞。

2000年、ヒロイン役として出演した『60セカンズ』で、興行的に大成功を収める。

2001年に、人気テレビゲーム『トゥームレイダー』の実写化作品で、過酷なトレーニングで武道を習得した末に主人公を演じ、映画評論家から絶賛を博し、一躍世界的な人気を獲得する。

2005年、『Mr. & Mrs.スミス』で記録的な興行収入をあげる。

その際、共演したブラッド・ピットと7年の事実婚状態から、2012年4月、正式に婚約を発表した。

現在も、30代前半にしてアメリカでもトップクラスのマネーメイキングスターとして活躍を続けている。

プライベートを余り語らないジョリーだが、「がんの家系の女性たちを勇気づけたい」と、3カ月にわたる手術の経過を明かにしている。

2月2日に乳頭温存手術を実施。

「“乳首温存”と呼ばれるプロセスが始まりましたが、その治療は乳首の後ろにある乳管部分の病気を取り除いて、その組織へのさらなる血流の流れを引き止めるものなのです。痛みを伴い、かなりの傷が残りますが、乳首を温存する可能性が高まるのです」と、ジョリーは語る。

2月16日、胸の下部を切開して入れたチューブから、乳房の中核を占める乳腺を抽出し、空間に拡張器を入れる手術を約8時間かけて実施。

10週間かけて、拡張器に塩水を徐々に注入し胸を膨らませた後、4月27日に拡張器をインプラントに入れ替え、乳房再建手術を実施。

「9週間後に、インプラントを使った乳房再建のための最後の手術が完了しました。この手術に関しては近年飛躍的な発展が見られることから、結果的に美しい仕上がりとなりました。」と、ジョリー。

ジョリーは、「これで、子供たちには乳がんによって母親を亡くす心配がなくなったと伝えることができます。子供たちを心配させるような結果にならずに安心しました。多少の傷跡はありますが、それだけです。子供たちにとっては、それ以外は今までどおりのお母さんなのです。それに、私にはブラッド・ピットという愛と献身に溢れたパートナーがいて幸運です。私と同じような苦難を乗り越えている奥さんやガールフレンドを持つ男性は、この辛い時期を乗り越える上で同じく大切な存在だと思います」と、前のニューヨーク・タイムズへ寄稿している。

がん抑制遺伝子に病的異変を持つ女性を対象に、ジョリーのような手術を行う女性が、アメリカ国内では急増しつつあるらしく、「勇気ある決断」と、テレビ報道はおおむね好意的らしい・・・。

一方で、「ジョリーにはできても、大半の女性にはできない選択」(ロサンゼルス・タイムズ)と冷めた見方もある。

その理由は、手術をした病院は、美容整形を含む治療費の総額を明らかにしていないが、一般的には、3カ月で約2万ドル(約200万円)とされ、その他、遺伝子を調べる専門的な血液検査の特許を持つ会社が、「ミリアド・ジェネティクス」(本社・ユタ州)1社しかなく、検査だけで約3,000ドル(約30万円)かかるからだ。

毎日新聞の調査によれば、手術数の全米データはないが、例えばペンシルベニア州では、2002年に94件だったのが、2011年には455件と大幅に増えている。

これも毎日新聞からの引用だが、テキサス州ヒューストンのがんセンターで乳腺摘出のがん予防効果を研究するイザベル・ベッドロシアン医師は「生存率を高めたという証拠はなく、乳腺摘出は不必要な措置」と指摘し、「手術に伴う後遺症を懸念する。」と語っている。

日本国内では、がん抑制遺伝子の変異は、採血し遺伝子を調べることで分かり、既に50以上の施設でカウンセリングと検査を実施しているが、保険が適用されず費用は、20~30万円かかり、検査を受ける人自体がまだ少ないらしい。

世間一般的に、「我が家はがん家系」ということが言われている。

これは、ある意味では正解だが、ある意味では間違っている。

どう違うかを、次回、解説しよう・・・。