「真実の口」55 運動は身体に悪い?

今回はテーマの前に少しだけ前置きを書かせてもらう。

前々回のテーマで、我々は酵素により身体を維持していると言う話を書いた。

食べ物を消化したり、手足を動かしたり、呼吸したり、内臓を動かすのでさえ酵素を必要としている。

では、このエネルギーを作りだしている源はどこであろう?

それは、細胞内にあるミトコンドリアである。

では、どのようにして、ミトコンドリアはエネルギーに変えるのであろう。

我々は呼吸により、肺に酸素を取り込む。

そして、その酸素は赤血球中のヘモグロビンと結びつき、全身の細胞に運搬される。

ミトコンドリアは、ブドウ糖や脂肪酸を効率よく燃やし、エネルギーへと変える。

しかし、その際、大量の酸素を消費する。

その過程に於いて、酸素の電子を奪い活性酸素が発生する。

つまり、生命を維持するために、我々の身体の中では、一日に活性酸素100億個以上が発生しているというわけである。

活性酸素=敵、不要なもの・・・と思っている人もいるようだが、活性酸素は人間にとって必要なものである。

最近、毎週日曜18:30にテレビ朝日系列で放送される“奇跡の地球物語~近未来創造サイエンス~”という番組が面白くて見ているのだが・・・

その中で、免疫について取り上げていた。

体内にウィルスが侵入すると、まず、白血球中にあるマクロファージという斬り込み隊長がウィルス退治に出動するらしい。

マクロファージは、侵入者であるウィルスを、最前線で食べまくり、更なる増殖を食い止めようと必死で戦う。

そして、マクロファージは相手がやや手ごわいと判断すると最も数が多い好中球に指令をだす。

すると、好中球もウィルスを食べて援護する。

また、マクロファージは、侵入者の情報を伝達する働きと、侵入者の動きを弱めるために脳に体温を上げる指令する働きもある。

「食べることが身体に悪い」の項でも書いたが、病気の時の発熱は免疫システムの一つのシステムと言うことがここでも解る。

マクロファージと好中球がウィルスを分解するのに活性酸素を使っているのである。

このように活性酸素は我々の身体を守る上でも必要なのである。

しかし、体内で発生した活性酸素全てが、上記のように使われる訳ではない。

当然、余ってしまうものもある。

その余剰な活性酸素が、体内のタンパク質や脂質を酸化させ変質させてしまうのである。

タンパク質や脂質が変質させられることにより、癌、生活習慣病等々、様々な病気を誘引するのである。

このことから活性酸素は悪者に仕立て上げられているのである。

だが、人間の身体は良くできていて、余分な活性酸素を除去するSOD酵素というものを持っている。

このSOD酵素が活性酸素を中和してくれるのである。

ただ、残念ながら、SOD酵素は25歳をピークに40歳からは極端に減少するのである。

・・・と、前置きが長くなったが、本題に入る。

我々が健康診断に行くと、問診で運動していますか?と必ず聞かれる。

また、テレビや雑誌でも運動は身体に良いと訴えている。

日常会話の中でも、「最近、運動不足だ」とか良く話される内容である。

特定健診で前回のテーマにあげた“メタボッリックシンドーロム”とでも診断された日には、こういう人も多いのではないだろうか?

ジョギングでも始めようか・・・とか?

ジムに通おうか・・・とか?

あるいは、ダイエットするか・・・とか?(ダイエットの危険性に関しては、また、別のテーマで書く)

皆はどうだろう?

やはり、運動は身体に良いと思ってないだろうか?

我々は運動すると、大量のエネルギーを消費する。

そのために、大量の酸素を取り入れなければいけない。

取り入れた酸素の2%は、何もしなくても活性酸素になってしまうのである。

つまり、運動量が多ければ多い程、活性酸素が体内に発生してしまうのである。

前項でも述べたが、余剰な活性酸素は、万病の元である。

活性酸素により、DNAが損傷し、様々な病気を誘引するのではないかと言われている。

40歳を超えて、健康のために運動不足を解消しようと運動を始めたら、SOD酵素も減少する一方なのに身体に良いはずはない。

私は、数年前から、1日最低1万歩、歩いている。

時折、淀川沿いを歩くのだが、ジョギングする人の多いこと。

その人達を横目に、ジョギングしたら「死に近づくよ」と、頭の中でつぶやいている。

呼び止めて、「そんな健康に悪いことは止めた方が良い」と言えば、変人扱いされるだけだから・・・

まさか、健康のために、行なっていることが、死に近づいているとは誰も思っていないだろう。

死(4)に近づかないように、1、2、3(散)歩で留めた方が良いのである。

1977年、アメリカで出版され、後に、世界的なベストセラーとなった『The Complete Book of Running(邦題:奇蹟のランニング)』という本がある。

これは、ジャイムズ・フィックスというジョギングの神様を言われる人が書いた本である。

フィックスは大学卒業後、30代半ばで100kg近くまで太ってしまい減量のために毎日15kmのランニングを続けた。

その結果30kg以上の減量に成功し、ランニング(ジョギング)を続ける健康法を記した上記著書の大ヒットで1970年代後半から1980年代前半にかけて、世界規模のジョギング健康法ブームを巻き起こした。

しかし、1984年7月20日、日課としていたジョギング中に心筋梗塞を起こして、52歳という若さで突然死したのである。

運動中の突然死で一番多いのは、ジョギング、次いでゴルフである。

ジョギングでの突然死の一因は、早朝に走る人が多いからではないだろうか?

ゴルフも朝早いスポーツになるだろう?

特に寒い日には、血圧の上昇を招き心臓負荷が大きくなるので更に危険度は増す。

南部イングランドのブルネル大学のリゲリ・ディミトリ博士の研究では、「朝起きて、すぐに走ったり、泳いだり、ジム通いすると、免疫力の低下により細菌などに感染しやすくなる」とされている。

健康のためにと始めた運動が死へ結びついては洒落にならない。

テレビや雑誌では、有酸素運動を盛んに奨める。

しかし、酸素を取り入れて運動をするという時点で、活性酸素を発生させるわけであるから、本当に身体に良いのかどうか分からないものである。

最近は、ウォーキングでも、2本のストックを使ったノルディックウォーキングなるものが流行っている。

これも負荷をかけてしまうので返って危険になる。

ただ、運動が趣味で、運動しないとストレスが溜まると言う人は、逆にストレスによって活性酸素が発生するので、過度にならないよう運動することを奨める。

健康のための運動程、危険なものはない。

今まで、このブログ内で、水、食事、酸素と人間にとって、必要でありながら、一歩間違えると毒になるという話をしてきた。

如何にバランスをとることが大切なのかを理解していただきたい。