「真実の口」92 健康診断(医者)が病人を作る?③

前回、東海大学医学部の大櫛教授が著した「検査値と病気 間違いだらけの診断基準」に基づき糖尿病について寄稿した。

昨年、11月にコレステロールに関して、寄稿しているが、大櫛教授の著にコレステロールに関しても、興味深いことが書いてあったので書いてみたいと思う。

大櫛教授は、こう結論づけている。

「遺伝などの理由での高い数値の場合以外、ほとんどの場合はコレステロールが高いからと言って治療の対象にはなりません。薬を飲むことはかえって危険です。日本人の場合、コレステロールを無理に下げると死亡率が高くなります。」

医者でもない私が、“コレステロール値は気にしなくても良い”というより、100万倍の強みがある。

また、大櫛教授は、「コレステロールの診断基準が間違っていて病気でもないのに病名が付けられて、副作用の多い薬が投与されて、病気になっていると知ったら驚くでしょう。しかも、それが希なことではなく、中高年受診者の50%を超えているとしたら他人事ではないでしょう」と続けている。

私が、以前、寄稿したとおりではないか?

大櫛教授の著によると、悪玉あるいは善玉コレステロールについては、前段で寄稿しているのでここでは解説はしないが、大櫛教授が言うには、LDL-C=悪玉、HDL-C=善玉という法則は、心筋梗塞のリスクが高い人だけにあてはまることらしい。

次の図を見て欲しい。

高脂血症①

大櫛教授のデータによる、男女別・5歳ごとに科学的方法に基づいて求められた総コレステロールの上限値と下限値を、日本動脈硬化学会の上限値219mg/dLと比較した物である。

20代前半は、学会のものとほぼ同じだが、それ以降はどんどん開きが出ている。

次にこの図を見て欲しい。

高脂血症②

これは、大櫛教授の新基準と学会の従来基準ではじき出した異常率である。

これによると、従来の学会基準であれば、中年男性の35%、閉経後女性の55%が高脂血症という病名をつけられてしまうことになる。

大櫛教授の新基準であれば全年齢・男女ともに4~5%程度である。

更に、目を引くのは、この異常率は年齢が高くなれば高くなる程、減少していると言う点である。

ヨーロッパでは、49歳~70歳女性の高脂血症率は5.4%程度らしく、この新基準に合致してくる。

では、従来の年齢・性別を無視した基準により、”高脂血症”と診断された人には、スタチン系あるはフィブラート系という医薬品が処方されるらしい。

しかし、これらの薬は、服用者のうちの5~15%に副作用が見られ、死亡例などの重篤な副作用も報告されているとのことである

しかも、この副作用の臨床実験は半年から1年の期間だけのもので、複数年、薬を飲み続ければ、その数倍の副作用率となるようである。

誤った基準により、”高脂血症”と診断され、副作用の高い薬を飲まされるのも怖い話だが・・・。

大櫛教授によると、更に、コレステロール値の誤った判断により、もっと怖いことが起きるというのである。

「日本人では、コレステロールを下げすぎると死亡率が高まる」というのである。

まず、次の図を見ていただきたい。

高脂血症③

これは、神奈川県伊勢原市(人口10万人)と福島県郡山市(人口30万人)を対象として、1999年度の老人健診受診者を2004年度まで追跡したものらしい。

平均年齢が、男性65.5歳、女性62.6歳。

これは、日本動脈硬化学会の基準で異常率が高いとされている年齢にあたる人たちが対象になっていると言える。

コレステロール値220~239のところに◎がついているが、この集団が最も死亡率が低い。

更にコレステロール値が低い方の*が着いているところを見てみると、明らかに死亡率が高くなっている。

この死亡率上昇の原因は、ガン、感染症、事故(自殺)による死亡らしい。

たった一つの誤った診断基準で、病人にされ、ひいてはガンにさせられてしまう。

怖い話である。

少し長くなったので、次回も高脂血症について触れたいと思う。