「真実の口」1,304 価値の低い医療・下

前回の続き・・・。

≪症状のない人の腫瘍マーカー検査≫

近年、腫瘍マーカー検査も、人間ドックでも安易に行われるようになってきたようだが・・・。

TVとかでもよく聞く言葉ではあるのだが、腫瘍マーカーとは何ぞや?

国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターが運営する「がん情報サービス」のインターネットによる情報提供を参考に解説する。

“がん”と一口に言っても、数多くの種類がある。

脳腫瘍、舌・上下顎がん、喉頭がん、甲状腺がん、食道がん、胃がん、大腸・直腸がん、肝細胞がん、胆のうがん、胆管がん、すい臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体がん(子宮がん)、賢細胞がん、腎盂尿管がん、前立腺がん、膀胱がん、皮膚がん、骨運動器腫瘍、白血病、悪性リンパ腫、小児がん

“がん”の中には、そのがんに特徴的な物質(タンパク質)を産生するものがある。

そのような物質のうち、体液中(主として血液中)で測定可能なものが、いわゆる「腫瘍マーカー」として臨床検査の場で使われている。

例えば、消化器系の“がん”を発見するのは、CEAという腫瘍マーカーだ。

CEA( Carcinoembryonic Antigen :がん胎児性抗原)とは、胎児期に見られるタンパク質のことで、出生後の CEA は、胎児期と比較すると濃度が非常に希薄となるため、正常であればほとんど検出されないが、消化器系の“がん”をはじめとした病変が現れると CEA の値が上昇するらしい・・・。

CEAの基準値は、 5.0ng/ml 以下となっている・・・。

消化器系の“がん”を罹患した方は、検査の度、この数値に一喜一憂することになるわけだ・・・(●U∋U)。o☆ドキドキ

この数値を大きく超えていたら、消化器系の“がん”の疑いが高いと言えるそうなのだが・・・( ̄へ ̄|||) ウーム

注意しなければならない点もあるらしい・・・(@・Д・@)??

CEA の高値が、胃がんや大腸がんだけを表すのではないらしいのだ・・・( ゚д゚)ハッ!

CEA 自体は、臓器に対しての特異性が決して高いわけではなく、その他の臓器に病変があった場合でも高値を示すことがあるらしいのだ・・・。

例えば、糖尿病や肝硬変、胃潰瘍など別の病気や、ましてや、高齢や喫煙量によっても数値が高くなるというのだから厄介だ。

基準値の 2 倍や 3 倍という CEA が検出された場合であれば、消化器系の“がん”の可能性が高いという・・・。

しかし、 CEA の基準値を微妙に超えている程度の場合は、胃腸だけでなく、肺、腎臓、甲状腺といった臓器に炎症などの病変が生じている可能性もあるらしい・・・。

胃がんや大腸がんが疑われる場合は、 X 線や CT あるいは超音波などを使って消化器系を中心に検査していくのが一般的らしい・・・。

もし、これで検査を終えたとしたら、他の臓器の病変を見逃すことになるわけだ・・・(;゚д゚)ェ..

ただし、ここで重要なのは、腫瘍マーカーは、進行したがんの動態を把握するのに使われているものであり、早期診断ができるものではないのだ!

本来、進行したがんに対して化学療法や放射線療法が行われている場合、その治療効果を判定する指標として使われるものなのである。

しかし、人間ドックでも腫瘍マーカー検査が行われているわけだ・・・ゥ─σ(・´ω・`*)─ン…

毎日新聞では、以下のような例を紹介している。

府中病院(大阪府和泉市)の津村圭・総合診療センター長は、来院者からこんな相談をよく受けるという・・・。

「人間ドックで腫瘍マーカーが陽性でした。詳しく調べてください」。

これに対して、腫瘍マーカー検査で疑われたがんを見つける為、内視鏡で胃や大腸、CT を使って胸などを精密検査を行うらしいのだが・・・。

津村氏に言わせれば、「腫瘍マーカーの数値の上昇だけでがんが見つかるケースは極めてまれ。」だと言う。

そして、検査後、こんなやり取りが多いらしい。

津村氏:「大丈夫でしたよ。」

患者:「マーカーが『がん』を示しているのだからきっとあるはず。費用はいくらかかってもいい。もっと検査して見つけてください。」

実情を知らない患者は、疑心暗鬼になり、病気でもないのに、勝手に“がん”パラドックス状態になっているわけだ・・・( ̄▽ ̄;)アハハ…

日本人間ドック学会から、「人間ドックの現況( 2015 年)」というものが発表されている。

この中で、人間ドックで発見した臓器別がん症例数( 2015 年)というのが紹介されている。

人間ドックで発見した臓器別がん症例数( 2015年 )

男性・・・ 5,139 件
女性・・・ 3,166 件
総計・・・ 8,305 件

特に、男性の胃がん・大腸がん、女性の乳がんの発見率は高く見える・・・…((φ(。・c_,・。)φ))…フムフム

しかし、日本人間ドック学会のコメントでは、「胃がんの早期胃がん比率は 1984 年には 70.0% であったが、次第に増加して 2015 年には 81.5% となっており、ドック検診の有用性を示すものと言える。恐らく、内視鏡検査が広く行われるようになったためと思われる。」

決して、腫瘍マーカー検査ではないのである。

しかし、こんなデータもある。

年齢別に見た胃がん及び大腸がんの発見率( 2015 年)

年齢別に見た胃がん及び大腸がんの発見率( 2015 年)

えっ!

40 歳未満の胃がん・大腸がんの発見率は、共に 0.009% ・・・!!!!

10 万人で 9 人・・・?

多いのか・・・??

まあ、私と同年だの50代では、胃がん・大腸がんの発見率は、共に 0.05% ・・・!!!!!

1 万人で 5 人・・・???

これも多いのか・・・????

人間ドック学会が、堂々と発表するくらいだから、医学的に見たら高いのだろうか・・・ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

ただし、これも腫瘍マーカー検査のみでの発見率ではない・・・(笑)

因みに、意地悪な計算をしてみよう・・・!

CEA の感度(※注 1 )・特異度(※注 2 )は色んなデータをかき集めると、共に平均 90% 程度・・・。

胃がん検診の精度評価研究

(※注 1 ) 臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」として定義される値である。平たく言えば、病気であるかどうかを緩く判断する確率。

(※注 2 ) 臨床検査の性格を決める指標の1つで、ある検査について「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」として定義される値である。平たく言えば、病気背あるかどうかを厳しく判断する確率。

感度と特異度の関係は・・・。

・感度が高い検査で、“陰性”なら“除外”
・特異度が高い検査で、“陽性”なら“確定”

人間ドック受診者のがん有病率は、 1% 程度とされている。

つまり、 1 万人が腫瘍マーカー検査を受けた場合、 100 人が“がん”で、 9,900 人は“がんでない”。

感度が 90% なのでの 100 人のうち、“がんの疑い”と判定されるのは 9人ということになる。

更に、特異度も 90% なので、“がんでない” 9,900 人のうち、判定が“がんの疑いはない”は 8,910 人、“がんの疑い”は 990 人になる。

結局、腫瘍マーカー検査で、“がんの疑い”と判定されるのは、9 人 + 990 人 = 計 999 人ということになる・・・。

つまり、人間ドック受診者のがん有病率は、 1% 程度を照らしわせると、 999 人中、9 人だから、陽性的中率は 0.9% ということになるのだろうか?

まあ、あくまでネット上の数字を拾って計算しただけだが・・・。

過去にがんと診断された方は別として、“がんでない方”は、腫瘍マーカーを信じるか信じないかはあなた次第です!

心労により、別の病気になることだけは避けてください・・・。