「真実の口」1,332 知らなければ気にならないのに、知ってしまうと気になる話⑱

前回の続き・・・。

《梅干し & 漬物編②》

前回、本来の梅干しの作り方を寄稿した。

塩分濃度を思い出してほしい。

18 ~ 20% だったはずである。

現在、我々がスーパー等で目にする梅干しは何 % 位だろうか?

多分、 5 ~ 8% と言う所では無いだろうか?

これも偏に、国民の健康志向による賜物である・・・(笑)

店頭で、塩分濃度 8% の商品と 20% の商品が並んでいたとしたら、多くの方が 8% を手にするのではないだろうか?

この低塩分梅干しは、技術の進歩により、塩分濃度を低くすることに成功したのだろうか?

残念ながらそうではない・・・( ̄ー ̄)ニヤリ

時を遡ること 50 年強・・・。

1960 年、アメリカで減塩ブームが始まった。

これは、 1954 年、医学者であるルイス・ダール博士が、塩を食べない民族では高血圧者がいないことを聞き、日本をはじめアメリカ、マーシャル島、アラスカを調査して食塩摂取量と高血圧発症率の関係を調査したことに始まる。

その結果、塩分摂取量が少なければ少ないほど高血圧発症率が低いことがわかったのだ・・・(・A・)ヤッパリ

ダール博士の考え方は、画期的だったので、またたく間に世界中に広まったらしい・・・(^д^)スゲー!

そして、 18 年後の1972 年、アメリカのジョージ・メーネリー博士が、ラットに対して行なった実験をもとに、『毎日 20 〜 30gの食塩を摂取させたところ、 10 匹中 4 匹が高血圧になった』という論文が提出されたのである。

このことにより、『高血圧の犯人は塩分の過剰摂取』という仮説が世界中で信じられるようになったのだ。

そして、1970 年代には、日本でも減塩志向が広がって行ったのである。

まあ、メネリー博士の実験については、人間に換算しなおすと、厚生労働省の推奨値(※注 1 )約 63 倍にもなる 500g 相当を与えていたのだから、そりゃそうなるだろうよ・・・(笑)

(※注 1 ) 厚生労働省が 2014 年 3 月に発表した「日本人の食事摂取基準( 2015 年版)策定検討会」の報告書では、 18 歳以上の男性は 1 日当たり 8.0g 未満、 18 歳以上の女性は 1 日当たり 7g  未満という目標量が定められている。

塩分については、「真実の口」80 高血圧と塩分①で寄稿しているので、気になる方は再読して欲しい。

そして、消費者の低塩志向を受け、 1973 年 、 JAS 法が改正され、低塩分の梅干しが作られるようになったのである。

しかし、これは厳密にいうと梅干しではない・・・ゥ─σ(・´ω・`*)─ン…

調味梅干しという名称になる。

JAS法では、前回寄稿したような伝統的製法によって製造された製品のみを「梅干」と言い、調味されたものを「調味梅干」と表示するよう義務付けている。

調味とは・・・?

梅干しの製造過程において、塩漬けにした後、 3 日ほど日干しにする(土用干し)ことは前述したが、この状態のものを白干しと呼ぶ。

保存性には優れているが、塩分が多く 20% 前後となるため、この白干しの梅を水につけ、塩分を減少させ味付けを施すことを調味という。

調味梅干の種類としては、シソ(赤じそ)の葉とともに漬けて赤く染め風味をつけた「しそ梅」、蜂蜜を加えて甘くした「はちみつ梅」、昆布とともに漬けて味をつけた「昆布梅」、鰹節を加えて調味した「鰹梅」、黒糖に黒酢を使って漬け込んだ「黒糖黒酢仕込み」などがある。

1980 年代に入り、自然食品や健康食品需要の増加により、青梅や梅干しの消費も拡大し、栽培面積も増加していったため、業界の努力により生まれた産物なのだが・・・。

残念ながら、余り、有難くないのである・・・ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

少し話はそれるが・・・。

梅干には、以下のような効能があると言われている。

【ミネラル吸収効果】

人間の体を形成する骨、歯、血液、組織液など中には鉱物性の栄養素(カルシウム、リン、水、鉄分など)が含まれている。

これらの一般的にミネラルと呼ばれる栄養素が不足すると、人間の体はバランスを崩し、いろいろな病気を引き起こすと言われている。

梅には身体に必要なミネラルが豊富に含まれており、梅のミネラル含有量は、カルシウムはリンゴの 4 倍、鉄は 6 倍も多く含まれており、マグネシウムや亜鉛もリンゴ等より梅の実の方が多い。

【唾液分泌促進効果】

梅干を見たり想像しただけで唾液が分泌されるという経験は誰しもあると思うが、これは、梅干を実際に食べてみてクエン酸の酸味を感じた経験を有することに由来するのだが、これにより、唾液分泌が促進され消化吸収あるいは食欲増進を良くするらしい・・・。

【疲労回復効果】

私たちの体は、筋肉を動かすため、糖分を消費するのだが、糖分が分解される際に乳酸が作り出され、この乳酸が疲労の原因となる。梅干しに含まれるクエン酸がこの乳酸の生成を抑制してくれるらしい・・・。

【解熱】

梅干を潰し、おでこに貼り付けることにより熱を下げるという作用で、民間に伝わる療法があるらしい・・・。

【抗菌・防腐】

梅干しには、抗菌・防腐の効能があるとされ、弁当やおにぎりに、昔から梅干が入れられている。但し、 1 個丸ごと入れただけでは梅干の周囲にしか効果は期待できないことは証明されているので要注意。

【ピロリ菌抑制効果】

胃痛や胃潰瘍、胃がんの原因となるピロリ菌は蛋白分解酵素を持ち、それが粘液を分解し、胃の防御作用を低下させ、これにより胃の粘膜が傷つけられ、胃の病気になりやすくなるのだが、一日 2 粒程度梅干しを食べることでピロリ菌を抑制することができるらしい・・・。

【生活習慣病予防効果】

梅干しに含まれる成分がα-グルコシダーゼ(小腸で糖質を吸収する酵素)を抑制することで糖尿病を予防する働きがあるらしい・・・。

また、この酵素を抑制することで、糖質の消化吸収を抑え食後に血糖値が上がることを防ぐことができるらしい・・・。

更に、アンジオテンシン(血圧上昇作用を持つ生理活性物質)を抑制し、動脈硬化や心臓病を防ぐ効果があるらしい・・・。

【脂肪燃焼効果】

梅干しに含まれるバリニンには脂肪燃焼効果らしい・・・。

【肝機能強化】

梅干しに含まれるピルビン酸は、肝機能の強化に有効といわれているらしい・・・。

また、ジャムや梅肉エキスなど梅を加熱した製品では、梅に含まれている糖とクエン酸が結合しムメフラールという成分が作られ、ムメフラールは血流を改善し血栓予防、動脈硬化などの生活習慣病の予防に役立つらしい・・・。

【カルシウム・鉄の吸収効果】

梅干しに含まれるクエン酸などの有機酸には、吸収率の低いカルシウムや鉄の吸収を促しカルシウムが骨から持ち出されるのを防ぐなどの働きがあるといわれ、梅を毎日食べることにより、体内でのカルシウム定着率が徐々に高まっていくらしい・・・。

ただし、これらの効果は梅干しの効果であり、調味梅干の効果ではない・・・(笑)

声:「まあ、そりゃそうだ・・・。白干しの梅を水につけ塩分を抜くという作業をするのだから、水に流れ出すわな・・・。」

次回へ・・・。