前回の続き・・・。
2016年1月5日の毎日新聞に介護殺人事件の加害者のその後について掲載された事例。
内容は、要約してある。
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■病気の妻を殺害した大阪府の男性(70)も昨年、事件から約三年半後に自殺。
家族によると、男性は事件を引きずった様子で、家でぼんやり過ごすことが多かったが、カウンセリングなどを受けたことはなかった。
■2014年に寝たきりの母親を殺害した大阪府の女性も保釈された後、睡眠薬を飲んで自殺未遂。
一命を取りとめたが、精神鑑定では「うつ病」と診断された。
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心身不調で裁判が中断された例もある・・・。
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■2015年3月、知的障害の長男(当時54歳)を殺害したとして、大阪市旭区の女性が殺人罪に問われた事件。
検察側は、介護疲れで将来を悲観したとみての審理。
12月16日、大阪地裁の法廷に車いすで出廷した被告の女性(81)。
裁判長の呼びかけに、何も反応せず、ただ、ボーッと前を見つめる。
裁判長は、「被告の訴訟能力に疑いがある。」として審理を打ち切る。
精神鑑定の結果待ち・・・。
訴訟能力が否定された場合、公訴棄却となる。
詳細が明らかにされないまま、闇の中へ・・・。
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O学院大学社会福祉学准教授F.K氏の話も掲載されていた。
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介護殺人事件は社会保障制度の問題を内在しており、加害者の証言や心理分析を再発防止に生かすことが不可欠だ。
しかし、日本では司法手続きで罪を裁くのが主眼で、事件を検証したり、加害者の社会復帰を支えたりする機能に乏しい。
再発防止につなげるためにも、精神的に追い詰められた加害者の心をケアする公的な仕組みを作るべきだ。
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少し時を遡るが、毎日新聞、『自らに重ね 涙の反響』が掲載された同日(12月29日)、京都にある男性介護者を支援する会の代表・H.Mさん(67)の話も掲載されていた。
実際は、団体名も名前も実名で掲載されていたのだが、伏せさせていただく。
一部、記載法を変更したが、ほぼ原文ままである。
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シリーズ企画「介護家族」には多くの介護者が共感したはずです。
私も昨年まで9年間、認知症の母親を介護していました。
介護殺人事件の加害者に不眠が多いという記事を読んで当時の自分を重ねました。
私自身も介護で自分を見失い、母親に手をあげたこともあります。
「自分も加害者になったかもしれない。」という共感にも似た気持ちになります。
毎晩、何度もトイレに起きる母親の付き添いなどで疲れ果てていました。
不眠の怖さは体だけでなく、心もおかしくなってしまうことです。
気が落ち込み、多くの介護者が心身を疲弊して、自分を見失ってしまいます。
今の日本の社会では在宅介護は無償の営みと考えられがちで、ほとんど評価されることがないと思います。
そうすると、介護者は無意識に代わりの何かを探そうとします。
自分自身に負荷をかけて頑張りすぎるのです。
また、葛藤もあるのです。
「介護をやり遂げたい。」
「大切な家族と離れたくない。」
介護家族の絆は強いのです。
子育てが未来への懸け橋なら、介護は来し方への尊敬と未来への継承です。
介護の尊さに本人や周囲が気付いたとき・・・。
「社会で認められている。苦境を周囲に話していいんだ。」
・・・という思いが介護者を孤独から救い、支援につながると思います。
介護の社会的評価を高めて理解を広げる。
これが介護者支援の第一歩だと思います。
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現実問題、私自身が介護というものに直面していないせいか、このような団体があることさえ知らなかった・・・。
上記のH.M氏の話を読んで、考えさせられることもあった・・・。
次回へ・・・。