「真実の口」1,297 遺伝子組み換え問題に朗報・・・⑫

前回の続き・・・。

前回、食品安全委員会における『遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価の原則と基本的な考え方』について、引っ張った結果で寄稿したのだが・・・。

食品安全委員会から、平成 16 年 1 月 29 日に『遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準』という中で基本的な考え方が示されている。

少し古いのだが、これ以降に、新たな見解は示されていないので、この基本姿勢は変わらないものとして抜粋して紹介する。

『遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価に当たっては、その食品がヒトの健康に及ぼす直接的な有害性の他に、その食品を長期摂取した場合の栄養学的な悪影響も考慮する必要がある。

しかし、現在摂取されている多くの食品は、長期にわたる食経験に基づきその有害性がないか、又は限られている、あるいは調理・加工により許容し得るものとなっていることが明らかとされてきたものである。

また、従来の育種の結果得られた食品に関しても、毒性学的又は栄養学的な安全 性試験が課せられてきた訳ではなく、殆どの場合、育種の結果が安全性に係る重大な形質の変化を伴わないという経験に基づき使用されてきたものである。

一般的に、食品の安全性を食品そのままの形で、従来の動物を用いる毒性試験によって評価することには、大きな技術的困難が伴い、通常は用いられない。

また、当該食品の個別の構成成分の全てに関して、安全性が科学的に証明されているものではない。

即ち、これらの食品の多くは、食品の個々の構成成分としてではなく、 食品全体として、経験的にその安全性が確認されたものであるか、重大な健康被害を及ぼさないことが知られたものである。

遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価においても、個別の成分の全てに 関して、安全性を科学的に評価することは困難である。

従って、現時点では、既存の食品との比較において、意図的又は非意図的に新たに加えられ又は失われる形質に関して、安全性評価を行うことが合理的である。

非意図的に新たな変化が生じる可能性は、必ずしも、組換え DNA 技術の使用に限ったことではなく、従来の育種においても発生しうる。

しかし、組換え植物(組換え体)の食品としての安全性を評価する上で、非意図的な変化の評価及びその可能性の予測は重要とされよう。

それは、その安全性に係る長期にわたる経験のない新しい技術に関しては、その技術により非意図的にもたらされた形質の変化に基づき、有害成分が劇的に変化したり、新たな毒性タンパク質が生成する可能性がより高まることを可能な限り予め排除する必要があるからである。

安全性評価は、遺伝子組換え食品(種子植物)の性質の変化が、導入された DNA (遺伝子)の性質又はそれが挿入されたゲノムにおける変化に基づき、科学的に充分に予測することが可能であり、新たな遺伝子を導入する前の種子植物(宿主)等と導入後の種子植物(組換え体)の相違を充分に比較しうる時に、初めて可能となるものである。

更に、安全性の評価に際しては、以下のような基本的な考えに従うとある。

1. 遺伝子組換え食品(種子植物)の食品としての安全性評価が可能とされる範囲は、食経験のある宿主又は従来品種並びに食品(既存の宿主等)との比較が可能である場合とする。

その理由は、組換え体において新たに変化した形質以外の性質については、既にその安全性が広く受け入れられており、改めて考慮する必要がないか、又は、その安全性の評価を行う上で必要とされる知見等の蓄積が十分になされていると考えられるためである。

2. 安全性評価に当たって考慮されるべき最も主要な点は、組換え DNA 技術の応 用に伴い、新たに意図的に付加・改変・欠失された形質、新たに生じ得る有害成分の増大などのリスク及び主要栄養成分などの変化が及ぼすヒトへの健康影響である。

さらに、組換え DNA 技術によって栄養素、機能性成分、あるいは有害成分の含量変化を意図して作出された組換え体においては、これらの栄養素等のその他の食品における含量と摂取量を勘案し、ヒトの健康に安全性面での問題が ないことを評価する必要がある。

3. 遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性に関しては、組換え DNA 技術によって種子植物に付加されることが予想される全ての性質の変化について、その可能 性を含めて安全性評価を行う。

例えば、 DNA 配列の挿入により植物に特定の形質(意図的な影響)が賦与されると同時に、余分な形質が賦与されたり、既存の形質が失われたり、又は修飾される場合がありうる(非意図的な影響)。

非意図的な影響は、植物の健全性又は植物由来食品の安全性について有害であったり、有益であったり、又はどちらでもない可能性があるが、意図的及び非意図的な形質の賦与又は変化によってもたらされる事象に関して、毒性学的及び栄養学的観点から個別に評価し、さらに、食品としての安全性を総合的に判断することが必要とされる。

このような安全性評価に当たっては、遺伝子組換え食品(種子植物)がヒトの健康に対し予期せぬ有害影響を与える可能性を最小限とするための充分なデータ又は情報が必要とされる。

4. 遺伝子組換え食品(種子植物)については、家庭での調理を含め、食品加工の影響も検討する必要がある。

例えば、加工後に内因性毒素の熱安定性や重要な栄養素等の生体利用率に変化が起きる可能性もある。

従って、製造における加工条件及び食品成分の変化を示す情報も提供される必要がある。

例えば、植物油であれば、抽出過程やその後の精製段階に関する情報が必要とされる。

5. 組換え体が、残留農薬及びその代謝産物、毒性代謝産物、汚染物質、その他ヒトの健康に影響を与えるおそれのある物質を間接的に蓄積させる可能性を生じ る形質(除草剤耐性など)を示す場合もありうる。

安全性評価ではこのような可能性も考慮すべきである。

6. 安全性の評価においては、当該種子植物の食品として利用される可能性がある 部位について検討する。

例えば、菜種油のように、一般に組換え体からの抽出物のみを食する場合であっても、抽出物以外のものを食する可能性がある場合には、その点も考慮して、組換え体の安全性評価を行う必要がある。

7. 安全性評価のために行う試験は、科学的に信頼できる概念と原則に従うと共に、必要に応じ GLP(※注 1 )に従って計画・実施されるべきである。また、原データは要求に応じて提出されるべきである。

(※注 1 ) Good Llaboratory Practice:優良試験所規範。医薬品や食品の安全性を評価する検査や試験が正確かつ適切に行われたことを保証するための基準であり、安全性評価試験の信頼性を確保するため、試験施設が備えるべき設備、機器、組織、試験の手順等について基準を定めたもの。

安全性評価に必要とされるデータ又は情報としては、開発者等が作成する実験データの他に、既に公開された科学論文や、第三者からの情報等があるが、それらのデータは科学的に信頼できる方法を用いて入手し、適切な統計学的技術を用いて解析されている必要がある。

また、分析方法には可能な限り定量下限値(※注 2) が示されるべきである。

(※注 2 )ある分析方法で分析種の定量が可能な最小量または最小濃度のこと。一般的に、標準偏差を 10 倍したものを定量限界とすることが多い。

8. 安全性評価では、遺伝子組換え食品(種子植物)に新たに発現される物質の試験に際し、その物質の製法又は起源が異なるものの利用が必要となる場合もある。

その際は、試験に用いられる物質が、生化学的、構造的及び機能的に組換え体で生成されたものと同等であることが示されるべきである。

9. 現在、抗生物質耐性マーカーとして使われているカナマイシン耐性遺伝子等は、 適切に安全性の評価がなされたものであり、直ちに安全性上問題となるものではない。

なお、今後の遺伝子組換え食品(種子植物)の開発においては、安全性が充分に評価され、かつ抗生物質耐性マーカー遺伝子を用いない形質転換技術を容易 に利用できる場合には、その技術を用いることも考慮されるべきである。

10. 組換え DNA 技術については、日々進歩しているものであり、本安全性評価基 準に関しても、技術の進歩に伴って、必要に応じた見直しを行っていく必要がある。

敢えて、食品安全委員会における“安全性の評価に際しての基本的な考え”を全文紹介したのだが・・・。

これらの内容を見て安心?不安?

どう感じただろうか??

次回へ・・・。