「真実の口」1,339 WELLNESS GLASS Season Ⅱ・・・①

新年一つ目のネタと言うことで、良い話をお届けしよう!

昨年 4 月の寄稿で、WELLNESS GLASS を取り上げた際、〇〇〇〇メガネさんから、「レンズも抗酸化加工出来ないだろうか?」というオファーを受けているという旨のご報告をさせて頂いた。

このオファーを受けて、2018 / 4 / 27  (金)に、ピスタコーポレーションの N 氏に同行して大阪にある加工メーカーを訪れた。

この時は、どのようにして抗酸化の効果を引き出すのが良いかと言う打ち合わせだった。

前回、 N 氏が最大手メガネチェーン在籍中に作った抗酸化眼鏡の場合、レンズは東海地方にあるレンズメーカーで製造を手伝っていただいた。

日本で“唯一の眼鏡レンズ専門メーカー”なのだが、N 氏と訪れた際に、出迎えの凄さにはお驚かされた・・・。

十数人が玄関に立ち並び、お出迎えをして頂いたのだ。

そして、中に入り名刺交換をした時にさらに驚いた・・・!

お出迎えして頂いたのは、専務取締役を始めとして、役員さん、部長さんという肩書の立場の人ばかりだったのだ。

この時は、製造工程を聞いたうえで、レンズにどのタイミングで抗酸化溶液を添加するかということを提案する段取りだった。

当然のことながら、レンズの作る工程など知る由もないので、一からお教えいただいた。

プラスチックレンズの作り方だが・・・。

1940 年初めに製造がはじまり、今日、メガネレンズの主流となっている。

現在では、ほぼほぼ、合成プラスチックで出来たレンズらしい・・・。

最初に、液体の原料(モノマーと呼ばれている)に、特殊な添加物を混合する。

➡これは、レンズが完成した時の硬度と紫外線吸収率を上げるためらしい・・・。

次に、この混合液を鋳型に入れる。

➡鋳型は、フタをふたつに合わせたようなガラス製円形で、各容器ごと数時間温度処理を施すらしい・・・。

原料が固ったら、完成したプラスチックレンズを鋳型から取り出し、“焼き戻し”をする。

➡“焼もどし”とは、再加熱して硬さを調整しながら、強靭性を高める作業らしい・・・。

更に、溶解温度以下まで熱してそのままの温度をしばらく保つ。

➡これにより、原料の内部圧力が低下するらしい・・・。

こうして出来上がるのが、セミフィニッシュレンズというものである。

セミフィニッシュレンズ

通称、“セミ品”と呼ばれ、半完成品である。

この時に、レンズの表カーブは既に仕上がっており、レンズの裏面を削ってカーブをつける事により、指定度数やプリズム等を形成し、さまざまなコーティング等の過程を経て、レンズが完成品となっていくそうだ。

因みに、ガラスレンズは、鋳造法で作られるそうだ。

この時は、モノマーの時点で添加しようということで出来上がった眼鏡がこれである。

抗酸化眼鏡

通常、メガネは時間の経過と伴に変色していく。

パッド(鼻あて)、先セル(耳に掛る先端部)は勿論のこと、レンズも同様である。

以前、紹介したので参考にして欲しいのだが・・・。

「真実の口」1,168 抗酸化眼鏡販売開始・・・①

8 年経っても、劣化が見られない。

帰り際に更に驚かされた。

お出迎えの時より、更に、人数が増えていた・・・( ̄▽ ̄;)アハハ…

流石、業界最大手のメガネチェーン店からの依頼なだけある・・・ε=┏(; ̄▽ ̄)┛

ここまで完成したのに、時のトップの鶴の一声で、抗酸化眼鏡は世に出ることが出来なかったのだが、その後、N 氏の熱意で、 7 年後に陽の目を見るのだから皮肉なものである。

ところで、今回は、“セミ品”の状態からの加工である。

ここで、取り敢えず、メガネレンズが出来上がるまでの工程を紹介しよう!

加工メーカーの N 専務に説明を頂きながら案内して頂いた。

◆工程 1 荒削り

工程 1 荒削り

ジェネレーターと呼ばれる機械を使ってレンズの裏面を削り、カーブをつける工程。

◆工程 2 スムージング

工程 2 スムージング

荒削りしたレンズの裏面を、研磨パット(※注 1 )を使用して、水をかけながら磨き、より細かく面を整えていく工程。

(※注 1 ) 極めて細かい紙ヤスリのようなもの。

◆工程 3 ポリッシング

工程 3 ポリッシング

“スムージング”したレンズの裏面を研磨粉(※注 2 )と研磨パット(※注 3 )でさらに細かく磨き、鏡面状態(ピカピカの透明な状態)まで仕上げる工程。研磨完了。

(※注 2 ) 非常に細かい研磨剤を含む液体。イメージ的には、歯磨き粉のようなもの。
(※注 3 ) (※注 2 )と同じ名称だが、(※注 2 )よりも布に近い、より柔らかなもの。

◆工程 4 カラー染色

工程 4 カラー染色

レンズに色付けする工程。

この時、ふと疑問に思い、案内して頂いていたN 専務に訊ねてみた。

私:「手作業なんですか?」

N 専務(以下、専):「プラスチックレンズは素材が樹脂なので、 レンズ一枚一枚、状態が違うんです。」

私:「ああ、そうなんですか?」

専:「作った時期 、熱硬化の程度の違いで変わるんです。」

私:「へ~っ。」

専:「だから、同じ工程で染色しても色の染まり具合が微妙に変わってくるんですよね。」

私:「ああ、そうなんですね?」

専:「染色剤の濃度自体も作業開始と終わり頃では少し変わってくるんで、その影響もあります。」

私:「ああ、そんなに微妙なんですね?」
.
専:「あと、レンズの種類によっても、色が染まりやすい素材と染まりにくい素材があるんです。」

私:「大変ですね~。」

専:「ええ。これだけコンピューター化、機械化が進んでも、この作業だけは手作業なんですよね(笑)。」

◆工程 5 検査

工程 5 検査

全てのレンズが職人により、キズや異物混入などへの“目視検査”、手作業による“汚れ拭き取り”が行われるチェック工程。

◆工程 6 超音波洗浄

工程 6 超音波洗浄

チェックが済んだレンズを超音波洗浄する工程。

◆工程 7 ハードコート加工

工程 7 ハードコート加工

レンズにハードコート(キズ防止コート)を加工する工程。

◆工程 8 マルチコート加工

工程 8 マルチコート加工

レンズ表裏の不要な光の反射を防ぐコーティングをすることにより、透明感の高いレンズに仕上げる工程。

◆工程 9 検品

工程 9 検品

熟練者により、厳しい品質チェックが行われる工程。

如何だろうか?

レンズ一つでも、かなりの工程を経て、製品化されるのである。

次回へ・・・。