「真実の口」1,371 24時間戦えますか?(笑)・・・⑮

前回の続き・・・。

前回、パラオキシ安息香エチル及びパラオキシ安息香酸イソプロピルの安全性について寄稿した。

続いて・・・。

《パラオキシ安息香酸ブチル》

■最大使用量
経口投与・・・ 10mg
その他の内用・・・ 1㎍
局所麻酔注射・・・ 2mg
一般外用剤・・・ 50mg/g
経皮・・・ 6mg
舌下適用・・・ 1mg/g
直腸膣尿道適用 10mg
眼科用剤・・・ 0.35mg/g
耳鼻科用剤・・・ 0.1 mg/g
歯科外用及び口中用・・・ 1mg/g

■単回投与毒性

動物種 投与経路 LD50(mg/kg体重)
マウス 経口 13,000mg/kg
マウス 経口 >5,000mg/kg
マウス 経口 950mg/kg ナトリウム塩で投与
ラット 経口 5g/kg 0.2%含有製剤
ラット 経口 25g/kg 0.3%含有製剤

■反復投与毒性
【マウス】
ICR/jcl マウス(※注 1 ) 1 群雌雄各 10 匹にパラオキシ安息香酸ブチル 900 、 1,900 、 3,800 、 7,500 、 15,000mg/kg 相当を摂取するよう飼料に混入して 6 週間投与し、対照群には飼料のみを与えた。
7,500 、 15,000mg/kg(※注 2 ) 群は、投与2週間以内に全例が死亡した。
➡ 1,900 、 3,800mg/kg群では,対照群と比較して 10% の体重増加抑制がみられたが,低用量群における体重増加は対照群と差がなかった。
1,900mg/kg 以上(※注 3 )の投与群では、リンパ組織の萎縮,肝臓の変性・壊死が認められた。

(※注 1 ) マウスの種類。(参照:https://www.crj.co.jp/product/domestic/detail/37)

(※注 2 ) (※注 3 ) 残念ながら、当該サイト(一般社団法人 日本医薬品添加剤協会・IPEC JAPAN)では、上記の 15,000mg/kg が 1,500mg/kg に、 1,900mg/kg 以上が 1,900mg/kg 以外になっていたので修正させていただいた。

【ラット】
ラットにパラオキシ安息香酸ブチル 0 、 0.25 、 50mg/kg をダイズ油に 100mg/0.5 ml 濃度に溶解して、 13 ~ 15 週間連日強制経口投与した。
体重は週 2 回測定した結果、対照群と差はみられなかった。
➡一部のラットは病理組織検査のため試験計画に従った屠殺したが、散発的な死亡例はみられず、対照群と比較して病理組織学的変化は認められなかった。
無影響量(NOEL)(※注 4 )は 50mg/kg/日とみなした。

(※注 4 ) NOEL(no-effect level)。化学物質の毒性試験で、複数の用量段階で動物への毒性を観察したとき、有害/無害を含めた影響が認められない最高の暴露量のこと。

Wistar ラット(※注 5 )に 1 群雌雄各 12 匹のパラオキシ安息香酸ブチル 0 、 2,000 、 8,000mg/kg 相当を摂取するよう飼料に混入して 12 週間投与し、体重、摂餌量は 2 週に 1 回測定し、剖検・病理組織学的検査は試験終了時に行ない、試験終了時までに死亡した例では剖検後、適切な組織を病理組織学的検査のため固定した。
低用量群では変化はみられなかったが、 8,000mg/kg 群雄全例及び雌多数例は投与数週間いないに死亡した。
これらの死亡例では、体重及び自発運動の減少,軽度な体重増加抑制が認められた。
無影響量(NOEL)は 2,000mg/kg とみなした。

(※注 5 ) マウスの種類。(参照:https://www.crj.co.jp/product/domestic/detail/8)

■遺伝毒性

試験 試験系 濃度 結果
復帰変異 サルモネラ菌TA92,TA94
TA98,TA100,TA1535
TA1537,TA2637
1,000mg/plate 陰性
復帰変異 サルモネラ菌TA98,TA100 ≦1,000mg/plate 陰性
染色体異常(in vitro) チャイニーズハムスター
由来細胞
60mg/ml 陰性

■がん原性
ICR/jcl マウス 1 群雌雄各 50 匹にパラオキシ安息香酸ブチル 0 、 225 、 450 、 900mg/kg 相当を摂取するよう飼料に混入して 102 週間投与し、試験開始 30 週間は、摂餌量は週1回測定し、その後 20 週間は、隔週 1 回測定し、終了時までは 4 週に 1 回測定し、体重は試験開始 6 週間は週 1 回測定し、その後 24 週間は隔週 1 回として、終了時まで 4 週に 1 回測定し、投与期間中に死亡した例はすべて剖検し、生存例は投与 106 週目に前例屠殺し、組織は死亡時期にかかわらず、病理組織学的検査に供した。
腫瘍発生率は投与群と対照群で差はみられなかった。
無影響量(NOEL)は 900mg/kg とみなした。

■生殖発生毒性
該当文献なし

■局所刺激性
ウサギに 0.1% パラオキシ安息香酸ブチル及び 0.2% パラオキシ安息香酸プロピルを含有する製剤を ドレイズ法(※注 6 )に従い、皮膚一次刺激性を調べた結果、刺激性は認められなかった。

(※注 6 ) ウサギを用いた急性毒性(刺激性)試験法の一種。

■その他の毒性
・依存性
該当文献なし。

・抗原性
モルモットにパラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチルそれぞれ生理食塩液に 0.1% に溶解して、週 3 回、 3 週間(合計 10 回)皮内投与で感作した。
➡初回投与 24 時間目に変化は認められなかった。
➡最終感作投与後 2 週間目に、感作局所(※注 7 )近くに惹起(※注 8 )皮内投与を行い、 48 時間後に観察したが、いずれのパラオキシ安息香酸塩もアレルギー反応を惹起しなかった。

(※注 7 ) 生体を抗原に対して感じやすい状態にしている部位のこと。

(※注 8 ) じゃっき。引き起こすという意。

モルモット 10 匹にパラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチルをそれぞれ 0.1% に溶解して、ドレイズ法に従って週 3 回、 3 週間(合計 10 回)皮内投与で感作した。
➡初回投与 24 時間目に変化は認められなかった。
➡最終感作投与後 2 週間目に、感作局所近くに惹起皮内投与を行い、24時間に観察したが、パラオキシ安息香酸塩には感作性はないものとみなした。

モルモット 20 匹に完全フロイントアジュバント(※注 9 )を 0 及び 9 日目に皮内投与し、 5% パラオキシ安息香酸ブチルを 49 時間閉塞パッチして、隔日 3 週間投与した、最終感作後 12 日目に、被験物質を今まで投与されていない部位に 48 時間惹起パッチし、パッチ除去後 1 、 7 、 24 、 48 時間目に刺激性の評点をつけ、顕微鏡的に感作状態を調べた。
➡その結果、平均紅斑評点(※注 10 )は 1.7 (最大 4 )であった。
➡病理組織学的検査では、アレルギー性変化と判断された。

(※注 9 ) アジュバントとは、広義には主剤に対する補助剤を意味するが、一般的には主剤の有効成分がもつ本来の作用を補助したり増強したり改良する目的で併用される物質のこと。タンパク質抗原を単独で投与しても免疫応答は誘導できないため、免疫応答を誘導するには、タンパク質抗原をアジュバントに混和して投与する必要がある。完全フロイントアジュバントはアジュバントの一種で、結核死菌を含む油のことで、これに混ぜて投与すると、タンパク質抗原に対する Th1 型免疫応答が誘導できるようになるらしい・・・。

(※注 10 ) 紅斑とは、炎症性の充血によって皮膚にできる淡紅色の発疹のことで、評点とは、その反応の程度のより 0 ~ 4  に分類される。

■ヒトにおける知見
ヒト 50 名の背部にパラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチルを 5 、 7 、 10 、 12 、 15% 濃度で連日 5 日間パッチを貼付し、パッチ交換時には投与局所の刺激性について評点をつけた。
➡ 12%パラオキシ安息香酸ブチル、 7%パラオキシ安息香酸エチル、 12%パラオキシ安息香酸プロピル、 5%パラオキシ安息香酸メチルでは刺激性は認められなかった。
濃度が高くなると、ある程度刺激性が認められた。

男女各 25 名の損傷皮膚に上記の試験で刺激性がみられなかった用量を隔日 3 週間(合計 10 回)、 4 ~ 8 時間パッチを貼付し、 3 週間の休薬後、 24 ~ 48 時間惹起貼付した。
➡その結果、感作性は認められなかった。

《パラオキシ安息香酸イソブチル》

掲載なし

前述したが、イソという接頭辞は、同じ分子式の化合物(異性体)を区別するための慣用名として、あるいは異性体(isomer)や同位体(isotope)など類似の物質の構造をもつものの接頭語として使用されるため、前のパラオキシ安息香酸ブチルと同じと捉えて良いだろう・・・。

次回へ・・・。