前回の続き・・・。
マイクロプラスチックの現実的な影響とは・・・?
科学的影響について・・・。
プラスチックに使われる添加物には有害性が指摘されるものもあり、マイクロプラスチックになっても残留している。
また石油から作られるプラスチックは汚染物質を吸着しやすい性質があるので、海を漂う間に海洋生物が汚染物質(環境ホルモン)を吸収して、環境に悪影響を与えることも想像できる。
マイクロプラスチックから検出された環境ホルモンの濃度は、海水中の汚染濃度の 10 万~ 100 万倍と言われ、汚染物質を吸着したマイクロプラスチックが魚介類や海鳥の消化器官から検出されている。
これらの汚染物質は生物の脂肪に移行し生物濃縮となって蓄積されている。
引いては、それを口にする我々人間への影響は・・・?
平成 10 年に環境庁(当時)が公表した「環境ホルモン戦略計画 SPEED’98 」において、「内分泌攪乱作用を有すると疑われる化学物質」が 67 群がリストアップされている。
プラスチックそのものとマイクロプラスチックに吸着した環境ホルモンによる人への影響は明らかにはなってはいないが、ヒト細胞の室内実験では影響があるという研究結果も出ているそうだ。
主なものをピックアップすると・・・。
残留性有機汚染物質 |
使われた製品 |
及ぼす影響 |
---|---|---|
PCB |
工業・家電製品、インクなどの溶剤 | 発がん性、免疫機能低下、知能への影響 |
ダイオキシン |
除草剤、ごみの焼却後の灰 | 発がん性、免疫機能低下、生殖機能障がい |
DDT(DDE) |
殺虫剤(マラリアなど)、農薬 | 発がん性、動物における奇形 |
ディルドリン |
農薬、殺虫剤、シロアリ駆除剤 | 発がん性、中枢・抹消神経系への影響 |
ノニルフェノール |
洗剤などの界面活性剤、プラスチックの添加剤 | 内分泌かく乱作用全般 |
ビスフェノールA |
プラスチックの原料および添加剤 | 胎児、乳幼児の発達・発育異常 |
安易に放ってはおけない・・・!
物理的影響について・・・。
プラスチックはその大きさに応じてさまざまな生物に取り込まれるようだ。
研究機関では、現在、 200 種以上の生物がプラスチックを摂食していると考えられている。
クジラ、ウミガメ、海鳥、魚の消化器から mm サイズから cm サイズのプラスチックが検出されていているらしい。
その中でも、海鳥は報告例が多く、採餌特性や消化管の形状と関連づけて,種によるプラスチック摂食の違いも報告されている。
また、μm サイズの微細プラスチックの二枚貝や魚類への蓄積は、近年、多数の報告がされているそうだ。
生態系への影響は、看過できない状態にまでなっているということだろう。
更に無視できないのは、我々が口にする水道水への影響である。
2018 年 4 月、米ミネソタ大やニューヨーク州立大学などの研究グループが行った調査により、世界 13 カ国の水道水のほか、欧米やアジア産食塩や米国産のビールに微小なマイクロプラスックが含まれていることが発表されている。
Anthropogenic contamination of tap water, beer, and sea salt
研究グループは、世界の水源の 159 のサンプル、 12 ブランドのビール、および 12 ブランドの市販の海塩に含まれるマイクロプラスチックの調査を行っている。
分析された水道水サンプルのうち、 81% にマイクロプラスチックが含まれていることが判明。
これらのマイクロプラスチックの大部分( 98.3% )は、長さが 0.1 〜 5mm の繊維だったようだ。
1㍑ に対して、 0 〜 61 のマイクロプラスチックが発見され、全体平均では 1㍑ に対して 5.45 のマイクロプラスチックが見つかっている。
また、ビールと塩の各ブランド全てでマイクロプラスチックが発見されている。
幸か不幸か、日本の水道水は調査の対象外だったので、日本の水道水に混入しているのかどうかは不明だが、研究チームは「日常生活で避けられない水道水の汚染が世界に広がっていることは大きな懸念材料だ。」と警告している。
これに対して、世界保健機関( WHO )は、今年 8 月 22 日、「マイクロプラスチックが混入した飲料水について、現状の検出レベルでは健康リスクはない。」とする報告書を公表している。
Microplastics in water pose ‘no apparent health risk’
報告書によると、「大きな粒子と、小さな粒子のほとんどが、体内で吸収されることなく排出されると確認した。」とある。
ただし、「これは限られた情報に基づいたものだ。」という断り付きだが・・・(笑)。
そりゃそうだろう・・・。
2年弱の研究報告なのだから・・・。
更に、これまで実施された研究には、基準が設けられておらす、異なる研究者らが、異なる水源に含まれるプラスチック片の数を測定するために、異なるフィルターを使用していたというオチもある。
WHOのブルース・ゴードン博士は、「 1 つの水源からは、 1㍑ あたり、 1,000 のマイクロプラスチックが検出され、別の水源からはわずか 1 つしか検出されなかったとすれば、それは単純に、使用されたフィルターのサイズによるものだ。研究方法としてかなり信頼度が薄弱なものであると言える」とも説明している。
これらを踏まえても、ゴードン博士は、すべての大きなプラスチック片と、小さなプラスチック片のほとんどが、まったく体内へ吸収されずに排出されるという研究結果が示すように、消費者に「相当の安心感」をもたらしているはずだという主張は揺るがないようだ。
また、 WHO はフィルターだけの問題であれば、排泄物や化学物質の除去といった、適切な下水処理で、マイクロプラスチックの 9 割以上を取り除けるはずだともしている。
しかし、石油から作られるプラスチックは汚染物質を吸着しやすい性質があるということを上記したが、身体から排出されると言っても、通過する間は、これらの環境ホルモンが身体を駆け巡っていることは間違いないのではないだろうか・・・?
WHO を信じるかどうかはあなた次第である・・・(笑)。
次回へ・・・。