前回の続き・・・。
隔週水曜日に行われていた合同部会が、 9 月から隔週金曜日に移行したことはお伝えしていたと思う。
第 70 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和 3 年度第 19 回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)(以下、合同部会)も 10 月 15 日(金)に予定通り開催された。
しかし、前回までと違い、審議会の内容の公表が、以下のように変わっていた。
1. 最新の心筋炎関連事象疑い報告の状況について
2. ワクチン接種後の心筋炎関連事象に関する周知・注意喚起について
3. 添付文書の改訂案について
4. 心筋炎関連事象に関する論点のまとめ
アナフィラキシー報告例及び死亡報告例が削除されているのである。
しかも、何故、アナフィラキシー報告例及び死亡報告例が削除されたかも一切触れていないのである。
また、前回寄稿にも書いたのだが・・・。
9 月 10 日開催の第 68 回合同部会では、 141 件が報告されるはずが、 55 件しか報告されなかった。
10 月 1 日開催の第 69 回合同部会では、第 68 回合同部会未公表分 86 件と第 69 回分 125 件を併せると合計 211 件が報告されるはずが 71 例しか報告されなかった。
方針を変更するのであれば、その理由を説明して然るべきはずなのだが、何ら説明もない。
如何したものだろう・・・???
どのような発表内容かをお伝えする。
【心筋炎・心膜炎の報告について】
○接種が開始された令和 3 年 2 月 17 日から 10 月 3 日までに、ファイザー社ワクチン、武田/モデルナ社ワクチン及びアストラゼネカ社ワクチンについて心筋炎・心膜炎(心筋炎関連事象)の副反応疑い報告の検討がなされ、それぞれ 160 件、 93 件、 0 件の報告でした。ファイザー社ワクチンでは 20 代男性の報告頻度が高く、武田/モデルナ社ワクチンでは 10 代及び 20 代の男性で頻度が高いことが示されました。
○心筋炎関連事象については、いずれのワクチンにおいても、新型コロナウイルス感染症による発生率と比較して、ワクチン接種によるベネフィットがリスクを上回ると評価でき、全年代において、ワクチンの接種体制に影響を与える重大な懸念は認められないとされました。ただし、 10 代及び 20 代の男性については、ファイザー社ワクチンに比べて、武田/モデルナ社ワクチン接種後の心筋炎関連事象が疑われる報告頻度が明らかに高いことから、十分な情報提供の上、ファイザー社ワクチンの接種も選択できることとなりました。
○これまでの報告事例によると、心筋炎関連事象はワクチン接種後 4 日程度の間に、胸痛や息切れが出現していることから、こうした症状が現れた場合は速やかに医療機関を受診するよう引き続き Web サイト( Q&A )等において注意喚起を行うこととされました。 10 代及び 20 代の男性が、適切な情報に基づいてワクチンの選択ができるように、十分な情報提供を行うこととされました。
○国内外における副反応疑い報告の状況やその解析結果等を踏まえ、ファイザー社ワクチン及び武田/モデルナ社ワクチンの添付文書を改訂し、若年男性に係る心筋炎関連事象の報告頻度が高いことについて注意喚起を行うこととされました。
○引き続き、国内の接種状況を踏まえつつ、国内の心筋炎・心膜炎疑い報告の状況や海外における報告状況を注視していくとともに、最新の情報の周知及び注意喚起を行っていくこととされました。
具体的なデータを見てみる・・・。
【ファイザー社製ワクチン】
【モデルナ社製ワクチン】
【アストラゼネカ社製ワクチン】
【ファイザー社製ワクチン及びモデルナ社製ワクチン心筋炎関連事象疑い報告の状況について】
【 COVID-19 感染症の発症とファイザー社製ワクチン及びモデルナ社製ワクチン接種後の心筋炎等の発症頻度比較】
【国内外のファイザー社ワクチン接種後における心筋炎関連事象について】
【国内外のモデルナ社ワクチン接種後における心筋炎関連事象について】
【心筋炎関連事象についてのまとめ】
○ 心筋炎関連事象に関しては、国内外において、報告頻度は稀ではあるものの、 2 回目接種後数日以内に発症する若年の男性での報告が多く、その因果関係が疑われてきた。
○ 国内の報告では、ファイザー社ワクチンにおいては 20 歳代男性の報告頻度が高く、武田/モデルナ社ワクチンにおいては 10 歳代及び 20 歳代男性の報告頻度が高かった。
○ 一方で、国内外の報告によると、若年者においても、ワクチン接種後に心筋炎を発症する確率は、 COVID-19 感染症後に心筋炎を発症する確率と比較して低い。
○ また、循環器の専門家によると、ワクチン接種後に発症する心筋炎は、 COVID-19 感染症後と比較して軽症であるとされており、国内の心筋炎関連事象疑いの報告事例においても、因果関係が疑われている若年男性の多くの事例について、軽快又は回復が確認されてきた。
○ これらの状況を踏まえ、前回の審議会においては、国内の接種状況を踏まえつつ、国内の心筋炎関連事象疑い報告の状況や海外における報告状況を注視していくとともに、最新の情報の周知及び注意喚起を行っていくこととし、 COVID-19 感染症によるリスクと比較して、接種によるベネフィットが上回ると考えてよく、若年男性も含め、全体としてワクチンの接種体制に直ちに影響を与える程度の重大な懸念は認められないとしたところ。
○ 今回、ワクチン間の被接種者の属性等が異なることに留意が必要であるが、最新の年齢、性別別の報告頻度の解析で、男性においては 10 歳代に加え 20 歳代についても、ファイザー社ワクチンに比べて武田/モデルナ社ワクチン接種後の報告頻度が明らかに高いことが確認された。なお、北欧においては、若年者に対するモデルナ社ワクチンの使用が停止又は非推奨となる等の対応がされたところ。
【若年男性及び保護者の方へのリーフレットによる周知について】
一応、以下のような症例報告はなされている。
心筋炎関連症例一覧(製造販売業者からの報告): 報告日 2021 年 2 月 17 日~ 2021 年 10 月 3 日
あなたは、ワクチンで心筋炎を起こしたが、そのほとんどが、“軽快”又は“回復”が確認できているという報告を聞いてどのように思うだろうか?
多くの方は、「ああ。大したこと無いんだな・・・。」と思うのではないだろうか?
しかし、内情は副反応から心筋炎を発症し、治るまで長い期間を要している場合も多い。
一つの例を挙げてみよう。
● 症例: No.2,201
● 年齢: 30 歳
● 性別:男性
● ワクチン名及び製造業者:コミナティ筋注/ファイザー
● ロット番号: EP9605
● 接種回数: 2 回目
● 接種日:2021/04/15
● 経過及び症状
発生日 | 症状名 | 転帰日 | 転帰内容 |
---|---|---|---|
4/20 | 心筋炎 | 9/16 | 後遺症あり |
4/19 | 胸痛 | 9/16 | 後遺症あり |
4/19 | 背部痛 | 9/16 | 後遺症あり |
4/20 | 酵素濃度増加 | 9/16 | 後遺症あり |
4/20 | 心電図 ST 部分上昇 | 9/16 | 後遺症あり |
4/17 | 倦怠感 | 未記入 | 未回復 |
4/16 | 発熱 | 4/17 | 回復 |
●専門家の意見:筋炎について、因果関係は肯定も否定もできないが、情報不足。
今回は 1 つの例をピックアップしたが、ファイザー社製 160 件、モデルナ社製 93 件の症例は、上記リンクから確認して欲しい。
今回の合同部会の報告をあなたはどのように感じただろうか?
私は、敢えて、意見や感想は書かないことにする。
将来のリスクはご自身で判断することを願う。
次回へ・・・。
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