「真実の口」1,711 熱海土石流被害

私事だが、例年、私はお中元やお歳暮を、その年に自然災害に遭った被災地のものを送るようにしている。

少しでも被災地のお役に立つことが出来たらという想いからである。

今年もお中元の時期になり、数日前、「今年は自然災害が無いね。久しぶりに、お中元に被災地からのものを選ばなくてよさそうだ。」と家内と話していたところだった。

ここ数年の 8 月以前に起こった自然災害を並べてみる。

◆ 2020 年 7 月・・・令和 2 年 7 月豪雨(別称:熊本豪雨)

・ 7 月 3 日~ 7 月 31 日にかけて、熊本県を中心に九州や中部地方など日本各地で発生した集中豪雨。特に、熊本県を流れる球磨川水系は、八代市、芦北町、球磨村、人吉市、相良村の計 13 箇所で氾濫・決壊し、約 1,060 ヘクタールが浸水した。熊本県では、死者 64 人の被害がでた。

【人的被害】死者 84 人、行方不明者 2 人、負傷者 80 人(うち重傷者 25 人)
【建物等被害】全壊 1,620 棟、半壊 4,509 棟、一部破損 3,594 棟、床上浸水 1,652 棟、床下浸水 5,173 棟

◆ 2019 年 6 月・・・九州南部大雨

・ 6 月 28 日~ 7 月 4 日にかけて、九州付近に停滞する梅雨前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、九州南部を中心に降り始めからの総雨量が 1,000mm を超える記録的な大雨が降った。この大雨で、鹿児島県南さつま市の大王川で堤防が決壊したほか、河川の氾濫により広範囲で浸水被害が発生した。また、土砂災害は212か所で発生し、このうち鹿児島県では 150 ケ所にのぼった。

【人的被害】死者 2 人、負傷者 5 人(うち重傷者 1 人)
【建物等被害】全壊 9 棟、半壊 7 棟、一部破損 30 棟、床上浸水 92 棟、床下浸水 385 棟、非住家被害 8 棟

◆ 2018 年 6 月・・・大阪府北部地震

・ 6 月 18 日 7 時 58 分 39 秒に、日本の大阪府北部を震源として発生した地震。最大震度 6 弱を大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市の 5 市区で観測された。

【人的被害】死者 6 人、負傷者 462 人(うち重傷者 62 人)
【建物等被害】全壊 21 棟、半壊 483 棟、一部破損 61,266 棟、床上浸水 3 棟、床下浸水 3 棟、
【火災】 7 件

◆ 2018 年 6 月・・・・平成 30 年 7 月豪雨

・ 6 月 28 日~ 7 月 8 日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で発生した、台風 7 号および梅雨前線等の影響による集中豪雨。西日本を中心に多くの地域で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生し、死者数が 200 人を超える甚大な災害となり、平成に入ってからの豪雨災害としては初めて死者数が 100 人を超え、「平成最悪の水害」と報道された。

【人的被害】死者 263 人、行方不明 8 人、負傷者 484 人
【建物等被害】全壊 6,783 棟、半壊 11,346 棟、一部破損 4,362 棟、床上浸水 6,982 棟、床下浸水 21,637 棟、公共建物の被害 720 棟、その他の非住家被害 6,100 棟

◆ 2017 年 7 月・・・・平成 29 年 7 月九州北部豪雨

・ 7 月 5 日~ 6 日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨。被害の規模は気象庁が豪雨について命名する基準(損壊家屋、浸水家屋の数)を下回ってはいたものの、人的被害が大きいことから、同年 7 月 19 日付で命名された。

【人的被害】死者:福岡県で 37 人(朝倉市で 34 人、東峰村で 3 人)、大分県日田市で 3 人の計 40 人死亡、行方不明者 2 人(朝倉市)
【建物等被害】福岡県と大分県の合計で、全壊 336 棟、半壊 1,096 棟、一部破損 44 棟、床上浸水 180 棟、床下浸水 1,481 棟

◆ 2016 年 4 月・・・平成 28 年熊本地震

・ 4 月 14 日 21 時 26 分以降に熊本県と大分県で相次いで発生した地震。気象庁震度階級では最も大きい震度 7 を観測する地震が 4 月 14 日夜(前震)および 4 月 16 日未明(本震)に発生したほか、最大震度が 6 強の地震が 2 回、 6 弱の地震が 3 回発生。

【人的被害】死者 273 人(直接死: 50 人、関連死: 218 人、豪雨被害関連死: 5 人)、負傷者: 2,809 人
【建物等被害】全壊 8,667 棟、半壊 34,719 棟、一部破損 163,500 棟、床上浸水 114 棟、床下浸水 156 棟、また、公共建物の被害 467 棟

◆ 2015 年 6 月・・・九州豪雨

・ 九州中部付近に停滞する梅雨前線の活動が活発化したため、九州地方は 6 月 11 日午前、広い範囲で大気の状態が不安定になり、熊本県や長崎県などで局地的に非常に激しい雨が降った。熊本県宇城市では 1 時間雨量が 6 月の観測史上最大の 63mm に達し、同市三角町で土砂崩れが発生。正午現在で熊本、長崎両県で計約 13 万 7 千世帯、 35 万人に避難指示や避難勧告が出され、交通機関も乱れた。ただし、この災害は、気象庁の豪雨基準に達していないため命名はされていない。

◆ 2014 年 8 月・・・平成26年台風第12号

・南から暖かく湿った空気が流れ込んだため、雨雲が西日本の広範囲に広がって台風の接近前から九州や四国に大雨を降らせ、通過後も降り続いた。降り始めた 8 月 1 日からの積算雨量は 4 日に高知県で 1,000mm 、徳島県で 600mm を越え、高知県の約 24 万世帯・約 50 万人を筆頭に、北海道・青森県・秋田県・広島県・山口県・徳島県・愛媛県・宮崎県で約 59 万人に避難勧告が出された。

【人的被害】死者 6 人、重傷者 14 人、軽傷者 78 人
【建物等被害】全壊 14 棟、半壊 162 棟、一部破損 857 棟、床上浸水 1,648 棟、床下浸水 5,163 棟

◆ 2013 年 7 月・・・島根県と山口県の大雨

・ 7 月 28 日に発生した島根県と山口県に発生した豪雨災害。山口県と島根県の県境で大雨が降り、山口市で 1 時間あたり 143.0mm という山口県内で観測史上最大・全国でも 11 番目の雨を観測した他、島根県津和野町では 24 時間での降水量が 381.0mm という島根県内で観測史上最大の降水量を記録した。

【人的被害】死者 2 人、行方不明者 2 人、負傷者 10 人
【建物等被害】全壊 49 棟、半壊 72 棟、一部損壊 81 棟、床上浸水 778 棟、床下浸水 1,309 棟、非住家被害 6 棟
※ただし、この災害は、気象庁の豪雨基準に達していないため命名はされていない。

◆ 2012 年 7 月・・・平成24年7月九州北部豪雨

・ 7 月 11 日~ 7 月 14 日にかけて、九州北部を中心に発生した集中豪雨。 12 日未明から朝にかけては、熊本県の熊本地方と阿蘇地方、大分県西部で猛烈な雨が続き、熊本県阿蘇市阿蘇乙姫で 12 日 1 時から 7 時までの 6 時間に 459.5mm の雨量を観測する記録的豪雨となった。 13 日には佐賀県と福岡県を中心に、 14 日には福岡県と大分県を中心に大雨となった。

【人的被害】死者 30 人、負傷者 27 人
【建物等被害】全壊 363 棟、半壊 1,500 棟、一部損壊 313 棟、床上浸水 3,298 棟、床下浸水 9,308 棟、非住家被害 1,936 棟

◆ 2011 年 3 月・・・東日本大震災

・ 3 月 11 日 14 時 46 分 、宮城県牡鹿半島の東南東沖 130km を震源とする東北地方太平洋沖地震。地震の規模はモーメントマグニチュード 9.0 で、発生時点において日本周辺における観測史上最大の地震であり、この地震による災害及びこれに伴う福島第一原子力発電所事故による災害の総称である。東日本各地での大きな揺れや、大津波、火災などにより、東北地方を中心に 12 都道府県で 22,000 人余の死者(震災関連死を含む)、行方不明者が発生した。これは明治以降の日本の地震被害としては関東大震災(死者・行方不明者推定 105,000人)に次ぐ 2 番目の規模の被害となった。沿岸部の街を津波が襲来し破壊し尽くす様子や、福島第一原子力発電所におけるメルトダウン発生は、地球規模で大きな衝撃を与えた。発生した日付から、3.11(さんてんいちいち、さんいちいち)などと称することもある。

【人的被害】死者 15,899 人(災害関連死 3,767 人・ 2020 年 9 月末時点)、行方不明者 2,525 人、負傷者 6,157 人
【建物等被害】全壊・家屋流失 121,992 戸、半壊 282,920 戸、全半焼 297 戸、床上浸水 1,628 戸、床下浸水 10,076 戸、一部破損 730,392 戸

毎年、毎年、甚大な自然災害が日本を襲っていることが伺い知れる。

そして、私が呑気な会話をしていた矢先に、静岡県熱海市の伊豆山地区で 7 月 3 日の午前 10 時半ごろに起きた土石流では 131 棟の住宅が被害を受け、 8 日午前現在、 9 人の死亡が確認され、安否不明者も 22 人にのぼっている。

一体、どのような降水状況だったのだろうか?

熱海市の時間降水量時系列

分かりやすいので tenki.jp さんの画像を借りるが、上記のグラフを見てわかるように、我々が想像するような強いとまとまった雨が降ったわけでは無いようだ。

気象庁・雨の強さと降り方

土石流発生の 3 ~ 4 時間前に、激しい雨が降ったことは確認できる。

果たして、この状況で、避難を考える人はいるだろうか?

しかし、もう一つのグラフを見てみると考えを改めなければいけないかもしれない。

熱海市の過去の降水量比較

時間の経過とともに、 48 時間での過去最大の降水量を上回っていたのだ。

地面は相当量の雨水を含んだ状態だったというのが理解できる。

そして、静岡県の川勝平太知事は発生翌日( 4 日)午後、県の災害対策本部会議後に記者会見した。

「(土石流の起点部分に開発行為による盛土があったとし)、盛土部分がほぼ全部、土石流とともに流されたことが明らかになった。どういう工法で、どういう目的で、どなたが盛土をしたのか、しっかり検証する決意だ。熱海においては大勢が移住したいこともあって地価上昇している中で、住宅のための造成も考えられていた。」と背景を説明。

そのうえで「それと山の崩落、森林破壊の調整がどうなされてきたのか問われなくてはならない。盛土部分が全部持っていかれたのは極めて重要な、危険をもたらすような山への手の加え方」と開発と土石流の因果関係に厳しい見方を示した。

そして、 7 日(水)午後、静岡県・難波喬司副知事の会見を開いた。

疑惑の盛り土の経緯である。

平成 18 年、神奈川県小田原市の不動産業者 A が土地を取得。

平成 19 年、「静岡県土採取等規制条例」に基づいて、 1 ヘクタール近い土地で造成工事を行う計画を市に届け出。

しかし、無断で開発地域を広げていた林地開発許可違反が発覚。

県が是正するよう指導。

是正が完了したとして、 12 年前から、別の土地から土砂を運搬。

36,000㎥ 余りの盛り土を計画。

平成 22 年 8 月、造成工事完了。

その後、盛り土の中に木くずなどの産業廃棄物が混ざっていることが判明。

県が撤去を要求。

翌月、熱海市が工事の中止を指導。

業者は行政の指導を無視。。

平成 23 年 2 月 25 日、現在の所有者に売却。

静岡県の推定では、盛り土の土砂の量は少なくとも 50,000㎥ にのぼるとみられている。

計画では 高さ 15m/36,000㎥ のものが、 50m/50,000㎥ と随分杜撰な造成を行っていたようだ。

県と市は今後、土石流との関連についても調べるとともに、さらに土砂崩れが起きないよう対策を早急に検討するとしている。

一方、業者は・・・。

土石流の発生翌日、この業者の代表取締役の男性から代理人を務めるよう依頼された、蜂谷英夫弁護士によると・・・。

「男性から電話があり『土石流があった場所は自治体に開発申請をして自分が開発した土地だ。許可を取ってやっているので悪くない』と話していた。書類を見ていないので細かいことは分からない」と話している。

また、この業者が開発の過程で盛り土をしたかどうかについては分からないとしている。

そのうえで「開発に関わる書類一式を事務所に持ってきてほしいと業者に伝えたが、その後、代理人を務めてほしいという依頼は断った」と話しているそうだ。

ヤマシイことがあったのだろうか・・・ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘

また、現在の土地所有者は・・・。

「“造成地”とは知らずに購入した」と言うのだが・・・。

土石流被害の後に相談を受けた弁護士が、「今の所有者が造成地と知らなかったと言ってるけど、そんなことありえない。それは全く違うね。開発がある程度進んだ段階で売ってるみたい、業者に・・・。」と語っている。

人命、宅地、その他諸々の財産、思い出等まで流された人々の気持ちを考えているのだろうか?

自然災害はいつも起こってからの原因究明と言うのは致し方ないのだろうか?

8 日(木)、静岡県・難波喬司副知事が新たな事実を突きつけた。

「(これまで)最大 10 万㎥ くらい落ちたのではないかと推定していましたが、結果として上からは 55,000㎥ 落ちたということになります。」

土石流の量は、推定 55,000㎥ で、そのほとんどが山の斜面に人工的に積まれた盛り土だったと判明したようだ。

このうち住宅街まで流れたものは、およそ 48,000㎥ で、砂防ダムがおよそ 7,500㎥ を受け止めていたということらしい。

今回ばかりは、人災と言い切って良いのでなないだろうか?

安否不明者の一分一秒でも早い救出と、犠牲となった人たちへの哀悼と、被害を受けた人たちが少しでも早く平穏な日々を取り戻すことを切に願う。

まだ、しばらく梅雨の影響で、全国で不安定な天気が続くことも予報されている。

自身の住む地域のハザードマップの確認を怠ることなく、天気の状況には十分注意をした方が良さそうだ。