「真実の口」2,161 来るべき大地震に備えて ㉔

前回の続き・・・。

前回、‟地震学ムラ”が作られる過程を寄稿した。

実際、どの規模の予算が当てられたのかを見てみよう。

震予知計画の各次における予算額推移

上のグラフは、文部科学省から出されているものなのだが、昭和 40 年 ~ 平成 20 年までのものである。

具体的な数字を見てみよう。

第 1 次(昭和 40 ~ 昭和 43 年 / 4 年)・・・ 10 億 7,200 万円

第 2 次(昭和 44 ~ 昭和 48 年 / 5 年) ・・・34 億 7,800 万円

第 3 次(昭和 49 ~ 昭和 53 年 / 5 年) ・・・128 億 3,200 万円

第 4 次(昭和 54 ~ 昭和 58 年 / 5 年) ・・・310 億 9,900 万円

第 5 次(昭和 59 ~ 昭和 63 年 / 5 年) ・・・ 300 億 2,900 万円

第 6 次(平成 1 ~ 平成 5 年 / 5年) ・・・363 億 1,900 万円

第 7 次(平成 6 ~ 平成 10 年 / 5 年) ・・・786 億 5,000 万円

新第 1 次(平成 11 ~ 平成 15 年 / 5 年) ・・・736 億 5,000 万円

新第 2 次(平成 16 ~平成 20 年 / 5 年) ・・・ 295 億 8,700 万円

合計・・・ 2,967 億 1,600 万円

1965 年~ 2008 年の 43 年間で実に約 3,000 億円が投入されているのである。

この間に、一度でも地震予知がされいたのであれば、この予算は無駄ではない。

しかし、ただの一度も、地震予知がなされたことはない(笑)

そして、令和 4 年度までに費やされた予算は、ナント、 4,000 億円超()

地震学者は言う・・・。

「大地震の前には必ず予兆がある。」

1. 前震

大きな地震の数日~数ケ月前(短期前震)または数ケ月~数年前(長期前震)に、本震の震源周辺の地域で小さな地震が頻発することがある。

【例】

・ 1872 年の浜田地震では、島根県東部では本震の発生 4 ~ 5 日前から西方に鳴動が聞こえ、地震を感じた。当日も 11 時頃に微震が 3 回あり、 16 時頃と 17 時頃にも地震があって、 17 時過ぎに本震が来た。

・ 1930 年の北伊豆地震では、その年の 3 月をピークとして 2 月 ~ 5 月に伊東沖で 3,000 回以上の有感地震を含む群発地震があったが、その後も完全には収束せず、 11 月中旬になってまた頻発するようになった。 11 月 25 日には東京でも揺れを感じる地震が 3 回あり、翌 26 日に本震が来た。

これに対し、地震学者は語る。

「実際上は、 1 ~ 2 回の前震があっても、大地震が来る前にそれを前震と判断するのは不可能であり、群発地震も大きな地震に至らずに収束することが多いので、これらを根拠にして大地震を予報することはできない。ただし,とにかく小さな地震を感じたら、大きな地震に対する身の回りの備えを確認する習慣をつけるのは賢明だろう。また、大地震の後は、 1 ケ月程度にわたって必ず余震が続き、地域によっては、本震よりも余震の方が大きな揺れになることがあるので、余震域やその周辺地域では、本震による被害が少なかった場所でも、これを前震と考えて、大きな余震への対策を準備すべきである。イタリアで 300 人が死亡した 2009 年の L’Aquila 地震では、群発地震が続いていたのに当局が‟安全宣言”を出したことが、その後に起きた本震の被害を大きくした,として裁判沙汰になっている。」

☞ 私の心の声:「うんうん。私でも言える(笑)。」

2. 鳴動(地鳴り)

前震に伴って鳴動(地鳴り)が聞こえることがある。

【例】

・ 1854 年の伊賀地震では、本震の 3 日前から鳴動が始まり、 2 日前にはかなり強い前震が 2 回あって鳴動が盛んになり、 27 回の小地震があった。前日には午後 2 時頃に強い地震を 1 回感じただけで、比較的静かになったが、当日の午前 2 時に本震が来た。

地震学者は語る。

「地震の直前(数秒~数十秒前)に聞こえる地鳴りは、本震の大きな揺れ( S 波)が来る前に到着する初期微動( P 波 )による音であろう。」

☞ 私の心の声:「うんうん。今では、地震緊急速報だね。皆、知ってる(笑)。」

3. 地盤の隆起・沈降またはそれらの傾向の変化

地盤の隆起。沈降を観測し、沈降が地震発生に繋がることが多い。

【例】

・ 1964 年の新潟地震の震源(粟島付近)に面する日本海沿岸地域では、 1940 年頃から隆起が顕著になり、 1960 年には 1900 年と比べた隆起量が最大 16 cm に達したが、 1962 年には隆起が止まり、 1964 年の地震の際に一挙に 10 ~ 20cm 沈降した。一方,新潟市付近では 1900 年以後ゆるやかな沈降が続いていたが、 1955 年頃から隆起に転じ、 1962 年頃にはその隆起も停止して、 1964 年の地震では数 cm 沈降した。地震の数年前から隆起・沈降の長期的な傾向が大きく乱されていたことがわかる。

・関東大地震についても,三浦半島三崎の地盤は、 1900 年の観測開始以来、年 1cm の割合で沈降していたが、 1921 年から逆に年 3cm の割合で隆起するようになり、 1923 年の大地震で 1.4m ほど隆起した。

地震学者は語る。

「沈降傾向が地震に繋がった事例は、 2016 年に起きた熊本地震と 2018 年に起きた北海道胆振東部地震があります。数ケ月前から明らかに震源周辺は沈降傾向を示していました。沈降したままで地震が起きる場合もありますが、沈降から隆起に転じた時に地震が発生する場合もあります。いずれにしても『沈降が危険』と言う経験則は重要な前兆です。」

☞ 私の心の声:「うんうん。後だしジャンケンだね。地震発生前に言ってよ(笑)。」

4. 海面の変動(潮が引くなど)

日本海は干満の差が少ない(数 cm 程度)ので、漁業者や住民が地震前後の地盤の上下変動に気がつく場合があった.

【例】

・ 1927 年の丹後地震では、 3 月 7 日 18 時 28 分の地震発生の数時間前に、今まで表れたことのない岩が海面上に露出していた。この隆起量は 1m 程度と考えられる。この一時的隆起は、地震で出現した郷村断層の東側の地域で顕著だったが、地震後はもとに戻った。しかし断層の西側の地域では地震によって80 cm程度隆起し,その後もとにもどっていない。

地震学者は語る。

「このような地震直前の隆起現象は 1793 年の西津軽地震、 1802 年の佐渡地震、1872年の浜田地震でも記録されている。 2007 年の能登半島地震では、門前を通る断層の南側の海岸が地震後に 50cm 程度隆起したが、地震の直前に隆起・沈降があったかどうかはわからない。」

☞ 私の心の声:「えっ?。かいめんの話だよね?隆起の話なの?・・・で、結局、わらないって。」

次回へ・・・。