「真実の口」2,162 来るべき大地震に備えて ㉕

前回の前兆現象の続き・・・。

5. 井戸水や温泉の混濁,枯渇,異常湧出,温度変化,化学組成変化など

地震の前にプレート境界付近で人間には感じられないほど地殻がゆっくりすべる「ゆっくりすべり」と呼ばれる現象が原因で地下水位が変化する。

【例】

・ 1943 年の鳥取地震では、 3 月 4 日 と 5 日、そして 9 月 10 日に地震が発生したが、鳥取市の吉方温泉では 3 月 4 日 19 時 40 分の地震の 30 分前に、無色の湯が米汁のように白濁し、湧出量が平常の 1.5 倍になったが、温度は大差なかった。ただ、 9 月の地震のときは特に変化はなかった。吉岡温泉では、 3 月と 9 月の地震の前日に、無色から濃い米汁のように白濁し、浴槽内で自分の足が見えないほどであった。

・ 1961 年から 71 年まで続いた長野県の松代群発地震では多量の地下水が湧出し、これによって多くの地すべりが発生した。

・ 1995 年の阪神大震災では,地震の数ケ月前から六甲山地で地下水の湧出量の増加や化学組成(塩素の量など)の異常な変化が見られた。また、地下水や大気中に含まれる放射性元素であるラドンの量が、阪神大震災の 8 日前に著しく増加した。

地震学者は語る。

「ラドンは岩石中のウランやトリウムの放射壊変で生成する気体で、地下水とともに移動すると考えられる。ただし、地下水の量や化学組成の変化が必ず地震発生と結び付くわけではない。」

☞ 私の心の声:「う~ん。発生したり、発生しなかったり・・・。結局、地震と結びつくわけではないのなら前兆と言わなくても良いいの?

6. 石油の滲出

秋田平野などの油田地帯では,地震の前後に石油がしみ出してくることがある.

・ 1810 年の男鹿地震では、 10 日前から前震が頻発した他に、 1 ケ月ほど前から、八郎潟の湖底に石油が滲出したらしく、湖水の色が赤や黒に変化し、魚が大量死したという記録がある。

・ 1939 年の男鹿地震では、地震の前日に八郎潟でフナやコイが岸の近くに押し寄せて、多数捕獲され、一部の場所では手捕りができるほどだったという。ただし,地震の当日には来なくなった。また、海岸では地震の前日の午後から当日の午前(地震発生は 14 時 58 分)に多数のイイダコが酔ったような状態で砂浜にはい上がってきた。これらも石油の滲出によるのかもしれない。また、天然ガスの噴出によって臭いを感じたり、ガスが燃焼して「火の玉」が飛んだりすることもあるらしい。

☞ 私の心の声:「う~ん。油田地帯が日本全国にあったら良かったのに(笑)。」

7. ナマズなどの生態異常

地震の前日~当日に、魚類やタコに異常な行動が見られる。

【例】

・ 1923 年の関東大地震の前日に湘南の鵠沼海岸の池で、投げ網を用いて 30cm 大のナマズをバケツ 3 杯分ほど漁獲した人がいた。ナマズは、昼間は池の底に潜んでいるはずなのに、泳ぎ回っていて容易に捕獲されたことは、地震の前兆の何らかの刺激による異常行動かもしれない。関東大地震の直前に、向島の料亭において、池の水面から頻繁に小魚が跳び上がるのを見て、店の者に何という魚か聞いたところ、ナマズの幼魚で 2 ~ 3 日前からこのように跳ね上がっていて不思議なことだと答えたという。その他、犬、猫、鳥など様々な動物について、大地震の前に落ち着きをなくす、異常な鳴き声を出すなどの変化を示すことが報告されている。

・東京都水産試験場では、東京都防災会議地震部会の研究の一環として、ナマズを供試魚とした“魚類の異常生態に関する調査研究”を 1976 年~ 1992 年の約 16 年間実施した(東京都防災会議地震部会: 1980-1992 )。

『ナマズと地震予知 江川紳一郎』

地震学者は語る。

「昭和 53 年から平成 2 年までの 13 年間に発生した東京都の震度 3 以上の地震は 91 回。実験が欠測となった 4 回を除いた 87 回に対して、明 らかに 10 日 前までに異常行動の見られたものが 27 例あった。単純に打率に直すと 3 割 1 分である。しかし、予知として使うためには、異常行動が見られたのに地震が起きなかった件数と異常行動がみられないのに地震が発生した件数、つまり 2 種類の‟外れ”の件数をはっきりさせる必要がある。」

☞ 私の心の声:「結局、この研究に使われた予算は 1 億 2,000 万円・・・。無駄になった?

8. 発光現象(光りもの)

地震に伴う顕著な発光現象が、科学者を含む多くの人によって観察されている。

【例】

・ 1930年の北伊豆地震では、伊東で観測していた地震研究者が未明の地震に際し箱根方面(この地震で活動した丹那断層の北方延長)に顕著な発光現象を観察した。他にも多数の人が光を目撃したが、この現象が発生した時刻は、地震の前というよりも、地震と同時だったらしい。この地震に伴う発光現象については、武者金吉氏や寺田寅彦氏の研究論文がある。

・ 1751 年の越後高田の地震では、夕暮れから海に出た名立の漁師が沖でボラやカレイを釣っていたが、名立の村の方向が一面に赤くなり、火事だと思って急いで帰ったところ、何事もなかった。しかし、夜半過ぎになって大地震が起こり、裏山が崩れて海になだれ込んだため、名立の村は全滅した(これは海を漂流していて救助された村の主婦の話)。つまり、この時の赤い光は、地震の数時間前に発生したことになる。

地震学者は語る。

「このような光は微弱であり,昼間は見えないだろう。」

『地震前の謎の発光現象、ついに解明か?』

上のリンクは、米サンノゼ州立大学とNASAエイムズ研究センターに所属する物理学者フリーデマン・フロイント氏の研究である。

フロイント氏は語る。

「世界中で発生する地震で、発光の条件が揃うケースは 0.5% 未満である。」

☞ 私の心の声:「 0.5 %未満かあ?残念!

9. 火山の噴火

地震活動と火山活動の関連を示す事例は多々ある。

【例】

・平安時代の 869 年の貞観三陸地震、 878 年の元慶関東地震、 887 年の仁和関西地震に先だって、 864 年~ 866 年に富士山が大噴火し、青木ヶ原溶岩を噴出した例がある。しかし、いつも富士山の噴火が地震に先行するわけではなく、 1703 年の江戸地震、 1707 年の東海・南海地震( 10 月 28 日)の場合は、その直後( 1707 年 12 月 16 日)に富士山が噴火した(宝永噴火)。そして、 1854 年の東海・南海地震、 1944 ・ 1946 年の東南海・南海地震の際には、富士山は噴火しなかった。

・歴史上初の木曽御嶽の噴火( 1979 年)の 5 年後( 1984 年)に直近で長野県西部地震が発生したことも、それらの関連を示唆する.

学者は語る。

『地震予知と火山噴火予知 -半世紀を振り返って-』

上のリンクは京都大学名誉教授でもある同大学防災研究所火山活動研究センターの石原和弘氏の報告である。

「地震予知と火山噴火予知の考え方には相違がある。火山噴火予知の最大の目的は、その発生を予知し、危険区域外に避難することによって、人的被害を最小限にくいとどめることです。そのためには、いつ(時期)、どこから(場所)、どのような(様式)噴火が、どのくらいの激しさ(規模)で発生するか?また、いったん噴火が始まったら、いつまで(推移)続くのかを予測することもが大切である。これに対し、地震予測とは、地震の発生時間、地震の発生場所、地震の大きさ(マグニチュード)の一部またはすべてを地震発生前に推定することであり、地震予知とは、地震予測の中でも特に確度が高く警報につながる。」

☞ 私の心の声:「火山の噴火は入山規制等を出して役に立っているのでは無いだろうか?それに対し、地震学者は何らかの規制や注意を出したことってあるのか?

10. 電磁気異常

大きな地震の発生の 2・3 週間程度前からさまざまな電磁気の異常が発生する。

【例】

・ 1855 年の江戸地震では、地震の直前に磁石についていた鉄が落ちたなどの報告がある。

・ 1995 年の阪神淡路大震災では、地震の 2 週間程度前から数時間前にかけて、ラジオやテレビの雑音、リモコンや携帯電話などの動作異常があったという多数の報告が地震の後でなされている。兵庫県立西はりま天文台(佐用町)では、阪神淡路大震災の 40 ~ 20 分前と地震発生から 45 分間、地表からと思われる異常な電波放射を観測している。

・ 1970 年代に中国で起きたいくつかの大地震の前にも同様なラジオの雑音あったことが報告されている。中国でもレーダーが地震の前に擾乱を受けたことが報告されている。

学者は語る。

『地震前に起きる電磁気異常の発生メカニズムの仮説を室内実験で実証』

「(ラボ実験では)、万能試験機を使って岩石が破壊したと同時にガスが破壊面に流れ込む装置を作成し、発生した電流を流れの下流(岩石の背後)に置いた網状の電極で測定しました。いくつかの種類の岩石を実験した結果、自然放射線を多く含む花崗岩からの電流量が多いことが分かりました。また試算したところ、地震マグニチュードによりますが、予測されていたような地震直前の大電流発生の可能性が高いことも分かりました。このことは、地震の直前に断層破壊が進み、侵入した深層のガスが帯電して大きな電流となり、さまざまな電磁気異常をもたらすという上述した仮説を支持するものです。今後は、このモデルを検証するための野外観測を実施する予定でいます。」

☞ 私の心の声:「期待の星(?)かのようだが、ラボの実験をどのようにして地球で観測を行うのだろうか?

さあ、いくつか前兆現象を紹介したが、次回、後だしジャンケンの例を紹介する。