「真実の口」1,542 新型コロナウィルス・・・74

新型コロナウィルスに関しての面白い記事を見つけたので、要点をまとめて紹介する。

国際医療福祉大学の高橋泰教授の一説である。

高橋教授は、新型コロナの臨床に関わる論文から仮説を立て、公表データを使って「感染 7 段階モデル」を作成し、事実に基づくわかりやすいモデルで新型コロナの特性を説明し、適切な対策をとるための議論を活発化したいという。

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新型コロナウィルスとインフルエンザウィルスの違いについて

新型コロナは、全国民の関心事ながら「木を見て森を見ず」の状態で全体像が見えてこない。

そこで、事実を基に、全体像が見通せ、かつ数値化できるモデルを作り、それが「感染 7 段階モデル」で、新型コロナの感染ステージを Stage0 から Stage6 までの 7 段階に分けて、それぞれに至る確率やそれに関わる要因を見える化したものだという。

このウィルスの性質の特徴は、自身が繁殖するために人体に発見されないように毒性が弱くなっていることで、一定量増殖しないと人体の側に対抗するための抗体ができず、稀に、宿主となる人体の免疫を狂わせ殺してしまうことがある。

新型コロナウィルス「感染 7 段階モデル」日本も含めた各国でそれぞれ数十万人死亡するというような、当初流布された予想は大きく外れた。

その原因はインフルエンザをベースとしたモデルを使っているためだと思われる。

2 つのウィルスには大きな違いがある。

病原体が体内に入ると、まず貪食細胞(マクロファージ)などを中心とする自然免疫(※注 1 )が働く。

次に数日かかって獲得免疫(※注 2 )が動き出し、抗体ができる。

(※注 1 ) 侵入してきた病原体を感知し排除しようとする生体の仕組み。外敵への攻撃能力はあまり高くないが、常時体内を巡回している警察官に相当する。

(※注 2 ) 病原体を他のものと区別して見分け、それを記憶することで、同じ病原体に出会ったときに効果的に排除する仕組み。 1 種類の外敵にしか対応しないが殺傷能力の高い抗体というミサイルで敵を殲滅する軍隊に相当する。

【インフルエンザウィルス】

・ウィルス自体の毒性が強く獲得免疫がすぐに反応する。
・多くの場合、獲得免疫によりウィルスが抑え込まれ短期に治癒する。
・抗体検査を行えば、ほぼ全ケースで「陽性」となる。
・抑え込みに失敗すると、インフルエンザウィルス自体が猛威を振るい、肺炎が広がり、死に至ることもある。
・感染期間は、 1 週間~ 10 日程度で短い

【新型コロナウィルス】

・ウィルス自体の毒性が弱く、獲得免疫がすぐに反応しない。
・多くの場合、自然免疫によりウィルスが抑え込まれ自然に治癒する。治らない場合は獲得免疫が発動する。
・感染初期に PCR 検査を行えれば、新型コロナは体にいるので「陽性」となることもあるが、一方、まだ抗体はできていないので、抗体検査を行えば当然「陰性」となる。
サイトカイン・ストーム(※注 3 )等の別のメカニズムで重篤化、死に至らせることがある。
・感染期間は、 1 ヶ月~数カ月と長い

(※注 3 ) 免疫システムの暴走。免疫細胞の制御ができなくなり、正常な細胞まで免疫が攻撃して死に至ることもある。

第2波が来たら日本は脆弱だという見方について

抗体検査を行ったところ、ロンドン 16.7% 、ニューヨーク 12.3% 、東京 0.1% だった。

これをインフルエンザと同じような感染症モデルで考えると、東京では感染防止は完璧だったが、抗体を持つ人が少ないので、次に防御に失敗したら多くの死者が出る、という解釈になるが、このような解釈には、強い疑義を持つ必要がある。

日本は強力なロックダウンを実施しておらず、新型コロナに暴露した人が欧米より極端に少ないとは考えにくい。

むしろ先に述べた「これまで多くの人が新型コロナにすでに感染しているが、自然免疫でほとんどの人が治っている」という仮説に立って、抗体ができる前に治っているので、抗体陽性者が少ないと考えるほうが自然であろう。

この仮説を用いれば、無症状のPCR陽性者が数多く発生している現状の説明もできる。

第 2 波が来ても、自然免疫の強さは日本人にとって強い助けとなり、再び欧米より被害が軽くなるという考え方が成り立つ。

新型コロナの全体像を把握するためには、全国の暴露者数を推計することが大切なので、①全国民 1 億2,644 万人、②年代別患者数の実数値、③抗体陽性率推計値(東京大学の推計と神戸市民病院の推計)を使って、パラメータである暴露率(新型コロナが体内に入る率)をいくつか設定し、動かしながら、実際の重症者や死亡者のデータに当てはまりのよいものを探るシミュレーションを行った。

シミュレーションの結果の概略は、まず、国民の少なくとも 3 割程度がすでに新型コロナの暴露を経験したとみられる。

暴露率は、 30~45%が妥当。

暴露した人の 98% がステージ 1 かステージ 2 、すなわち無症状か風邪の症状で済み、自然免疫までで終了。

獲得免疫が出動(抗体が陽性になる)するステージ 3 、ステージ 4 に至る人は暴露者の 2% 程度。

サイトカイン・ストームが発生して重症化するステージ 5 に進む人(暴露した人の中で)は・・・。

・20 代・・・ 10 万人中 5 人
・30 ~59 歳・・・ 1万人中 3 人
・60 ~ 69歳・・・ 1,000 人中 1.5 人
・70 歳以上・・・ 1,000 人中 3 人程度。

欧米との死者数の違いについて

 日本の死者数が欧米の 100 分の 1 であることについて、以下のような 3 つの要因の差という仮説で試算を試みた。

第 1 に、「暴露率」

日本の場合、重症化しやすい「高齢者の暴露率」が低かったのが効いたのではないか。

例えば特別養護老人ホームではインフルエンザやノロウィルスの流行する季節は家族の面会も禁じている。

これらウィルスに対する対策も取られている。

高齢者の外出自粛など自発的な隔離も積極的に行われた。

他方、海外では介護施設や老人ホームのクラスター化による死者数が多い。

「高齢者の暴露率」は日本が 10% 、欧米が 40% と設定してみた。

第 2 に、「自然免疫力」

自然免疫で治る人の比率が欧米より日本人(アジア人)のほうが高く、その結果「軽症以上の発症比率」が低くなるが、抗体陽性率も低くなる。

自然免疫力(特に細胞性免疫)の強化に BCG の日本株とロシア株が関与した可能性は高いとみている。

「(暴露した人の)軽症以上の発症比率」については、自然免疫力が標準分布と仮定し、シミュレーションの結果を当てはめると、自然免疫で処理できる率が日本人は 98% で、対応できないのは 2% ということになる。

日本では、新型コロナにかかった人が次の人にうつしても、その大半が自然免疫で処理され、次の人への感染につながらない

すなわち新型コロナ感染のチェーンが切れやすい。

よほど多くの人に暴露を行わないと、そこで感染が途切れる可能性が高い。

一方、抗体陽性率から考えると、欧米では自然免疫で対応できずしっかり発症する人が、日本よりもはるかに多いと考えられるので、「軽症以上の発症比率」を日本の 5 倍の 10% と想定した。

日本と欧米の自然免疫力の差をそれぞれ 2% と 20% と想定すると、両者の差はわずかに見えるかもしれないが、このわずかな差が欧米と日本の新型コロナ被害の大きな差を生んだ可能性が高い。

欧米では感染後、しっかり発症して他の人にうつす、再生産確率が高いため、日本と比べて感染スピードが速く、かつ感染拡大のチェーンが途切れないということになる。

第 3 に、「発症者死亡率」

日本は欧米に比べて低いと考えられる。

その理由としては、欧米人に比べて血栓ができにくいことがある。

サイトカイン・ストームが起きても、日本のほうが重症化する可能性が低いと考えられる。

「発症者死亡率」を見てみると・・・。

日本・・・ 0 ~ 69 歳で 0.01% 、 70 歳以上が 0.4%
欧州・・・ 0 ~ 69 歳で 0.05% 、 70 歳以上が 2%。

他の条件は変わらないという前提で、このような数字を設定すると、 10 万人当たり日本の死亡者は 0.9 人、ベルギーの死亡者は 82 人となり、現在の実態とほぼ一致する。

「暴露率、軽症以上の発症比率、発症者死亡率の数字の設定はもちろん仮説的なものであり信頼性は低い。だが、全部の数字を掛けたり足したりして求められる日本の死亡率が、欧米の死亡率の 100 分の 1 になる必要があるので、 3 要因のいずれか、またはすべてにおいて、日本が欧米に大きく勝っていることは間違いない。」

今後の対策について

緊急事態宣言の解除後は「感染者数」、正確には検査で PCR 陽性とわかった人の数が増えているが、自然免疫で 98% も治るとすれば、とるべき対策は違ってくる。

PCR 検査でどこから見ても元気な人を捕捉することには大きな問題があると考えている。

PCR 検査はコロナウィルスの遺伝子を探すものなので、体内に入って自然免疫で叩かれてしまい他の人にうつす危険性のないウィルスの死骸でも、陽性になってしまう。

発症可能性がゼロに近い抗体陽性者でも、再度新型コロナウィルスが体内に入った時点で検査を行えば陽性になる。

また、新型コロナウィルスにとって東京は人口密度が高く、そうした中でもいわゆる 3 密を形成するような、ウィルスが生き延びるための条件が揃う場所がある。

だが、地方ではそうした場所ができにくい。

98% 自然免疫で処理されるので、人が密集していないと、次の人にうつしていくチェーンがすぐ途切れてしまうからだ。

本ではこれまでのところ、人口 10 万人に対し 0.8 人が亡くなっている

われわれは自然免疫の存在を重視しており、それを前提としたシミュレーションでは、新型コロナウィルスが現状の性格を維持する限り、どんなに広がっても 10 万人中 3 人以上、つまり全国で 3,800 人以上死ぬことはなさそうだというのが、結論の一つだ。

一方、人口 10 万人に対して 16 人、全国で 2万人強が自殺で亡くなっている。

過去に景気が悪化したときは 3 万人を超えて 10 万人当たり 24 人になった。

そうであれば、 10 万人対比で見て、新型コロナによって 2 人亡くなるのを防ぐために、景気悪化で 8 人の死者を増やすのかということになる。

対策のメリットとデメリットのバランスを考えないといけないのではないか。

また、ステイホームによって肥満の人が増えると、 ACE2(※注 4 ) 受容体が増加し、新型コロナの感染リスクも血栓形成のリスクも高まる。

(※注 4 ) 新型コロナウィルスのスパイクと結びついて、細胞の中に取り込んでしまい、感染が成立する。子どもにはほとんどなく、年齢が上がると増える。また、高血圧や糖尿病でも数が増える。

社会活動の停止で暴露率は下がっても、感染率や重症化率が上がる

そうしたバランスも考える必要があるだろう。

30 歳未満では重症化リスクは限りなくゼロに近いのに、対面授業を行わないとかスポーツをさせないというのは誤った政策だと思う。

対面での教育が行われず、オンライン教育のみにすることの弊害のほうがずっと大きい。

平常に戻すべきだ。

そして、そこで学生から PCR 陽性者が出てもマスコミが騒がないことが重要だ。

明らかな症状が複数の学生に現われる集団発生が起きてはじめて、報道を行い学級閉鎖を行えばいいのではないだろうか。

30 ~ 59 歳も通常の経済活動を行ってよいはずだ。

罹患した場合は症状に応じて自宅待機などを行い、集団発生すれば職場の閉鎖をすればよい。

70 歳以上の高齢者は流行している間は隔離的な生活を維持せざるをえないだろう。

何度も言うが、感染リスクはある。

しかし、 2% 未満の重症化リスクを減らせばいい。

肺炎や呼吸困難といった兆候が認められなければ宿泊所、無症状・軽症なら自宅待機といった変更が必要だ。

老齢者の施設等の対策に重点を置くべきだ。

第2波が来たと判断したら、最初にやるべきは PCR 検査の拡大ではなく、ウィルスの遺伝子解析だ。

従来と同じ型のものなのか、違うものが来たのかを判別することが重要だろう。

感染者を捕まえて隔離することより、感染パターンを把握することが重要だ。

感染力が上がったのか、毒性が強まって死亡率が上昇するのか。

それに応じて対策も変わる。

感染 7 段階モデルのようなものを作っておくと、そうした議論をすることが可能になる。

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如何だろうか?

未だに PCR 検査を拡大すべきと声高に叫んでいる人たちに一石を投じるようなシミュレーションである。

次回へ・・・。