四回にわたり、水産業について寄稿することになってしまったが、そのくらい今の水産業は危ういことを行っていることを伝えたい。
四方を海に囲まれているわが国では、水産物は貴重な資源である。
では、漁獲高はいったいどのくらいあるのだろうか?
少しデータは古くなるが’07年で水産物の漁獲高は、5,513,000トンである
そのうち、4,726,000トンが漁あるいは採集されたもので、残りの1,237,000トンが養殖である。
26%が養殖に頼っていることになる。
どのような魚が養殖されているのだろう?
ブリ、真鯛、カンパチ、フラメ、トラフグ、マグロ、シマアジ、マアジ、ヒラマサ、イシダイ、カワハギ、サバ、クエ、マハタ、etc・・・
なんと30種類以上が養殖されている。
イシダイやクエやマハタと聞いて、そんな魚まで養殖できるのかと驚く人も多いと思う。
養殖の比重が多い順に書けば、真鯛81%、ブリ69%、クルマエビ65%、その他トラフグ、カンパチ、シマアジも天然物より養殖の比重が大きい。
我々の食卓に馴染みのある真鯛やブリはほとんどが養殖物と言って良いくらいである。
養殖業者が利を求めるため、養殖生け簀に大量の魚を養殖し、そのため密度が増し、潮流は滞り、病気が蔓延するという悪循環を行っている。
そのために大量の成長ホルモンや抗生物質を使用していることは前々回に書いた。
しかし、これを良しとしない養殖業者もいる。
例えば、ブリ養殖の一例を挙げよう。
まず、雑排水の影響を受けないように沖合に生け簀を作る。
そして、魚の数をコンピューターで管理することにより、過密養殖とエサの過剰投与を避ける。
しかし、残念なことに、このエサも問題なのである。
ブリが本来エサにしているイワシ等ではなく、魚のアラに大豆タンパクをすりつぶし、ビタミン、天然ミネラルなどを加えた固形の餌を与えているのである。
農業の項で書いたが、ビタミンだけを抽出したもの、ミネラルだけを抽出したものを与えても、それは毒にしかならない。
ましてや、何故、魚に大豆を食わせるのだ?
何故、自然に立ち返ることが出来ないのだろうか?
町中で生け簀料理や活魚という文句を売り物にしている飲食店がある。
しかし、残念なことに、海で生け捕りにされた魚を、生け簀で泳がせれば新鮮どころか、全く持ってまずくなる。
魚は釣った後に、すぐに活け締めにして、血抜きを完全に行い、そこから数時間経ったものが美味いと言うことは魚を扱う料理人や漁師なら知っているはずである。
科学的に言えば、魚の体内にはATP(アデノシン三リン酸)が存在し、イノシン酸などの旨味の元となる物質に分解される。
しかし、生け捕りにした場合、魚は暴れてATPを消費し、乳酸などの疲労物質を蓄積させ味を劣化させるのである。
では、海洋の生け簀はどうなのだろうか?
ストレスはかからないのか?
魚はそこにいたいのか?
ここであえて答えは出さない。
食を維持するために、必要なのであれば、もっと自然に即した方法を考えなければいけないのではないだろうか?
魚がいたい海域をどうすれば作れるか?
その答えは私のブログを読んでいる人なら解ると思う。
海は決して漁師のものでも、我々人間のものでもない。