「真実の口」260 オール電化で良いんかい?⑨

前回、各家庭において、調理をするときにガスと電気では、どのくらいコストに違いが出るのかと言う点を寄稿した。

ご飯を作るという作業は、一回だけのことではない。

家に誰かいれば、一日3回、これが一年になると、単純に1,095回になる。

我が家でもそうだが、土日になれば、子等が起きてこずに、味噌汁を何度も温め直したり、実際の生活では、単純な計算のようにはいかない。

私は、まずい料理を作るために、コストをかけるほど悠長な性格ではないので、IHクッキングヒーターなどは、選択の余地もない。

さて、今回は、各家庭ではなく、今現在、問題になっている原子力発電所を含めた各発電所の発電コストから、経済性を見てみたいと思う。

国や電力会社は、「原子力発電は、火力発電や水力発電と比べ、単位電力あたりのコストが安い」と言う理由で、永年、原発を推進してきた。

果たしてそうなのだろうか?

早速、“発電コスト”と入力して検索してみた。

面白いHPを見つけた・・・

「よくわかる原子力 原子力教育を考える会」

ここを見てみると、いかに原子力を推進していこうかというカラクリが読める。

平成16年1月に、電気事業連合会が、「モデル試算による各電源の発電コスト比較」というものを発表しているらしい・・・

電気事業連合会(通称:電事連)とは・・・

HPによれば、「電気事業連合会は、日本の電気事業を円滑に運営していくことを目的として、1952年(昭和27年)に全国9つの電力会社によって設立されました。以来、地域を代表する電力会社間の緊密な対話と交流をはじめ、新しい時代の電気事業をつくり出していくための創造的な意見交換の場として貢献してきました。また、日本のエネルギー産業の一翼を担うという自覚のもと、安定したエネルギー供給体制の確立に向けても多彩な活動を行っています。2000年(平成12年)3月に沖縄電力が加盟し、現在10電力体制で運営されています。」というものらしい。

まあ、読み方を変えれば、いかにして原子力を推進させ、利権と利潤を確保していくかというところだろうか???

以下のリンクが、「モデル試算による各電源の発電コスト比較」のPDFである。

http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/gijyutu2004/gijyutu03/ssiryo3.pdf

これが“原子力発電はコストが安い”という根拠になっているらしい???

この資料が作られた平成16年当時と現在では、為替も燃料(石油、石炭、LNG)費用も全く違う。

しかし、今回はそれを敢えて無視して、考察したいと思う。

資料の10ページを見て欲しい。

水力、石油火力、LNG火力、石炭火力、原子力火力の5種類を比較している。

この資料では、割引率3%を基準にしているようなので、それに準じてみる。

割引率とは、将来価値から現在価値を算出するときに使う割合のことで、将来の現金は現在の現金より不確実であり、その分を割り引いて試算し、リスクが高いほど割引率は高くなり、現在価値は小さくなる。

運転年数40年・設備稼働率80%(水力は45%)の場合・・・

水力・・・・・・・11.9円

石油火力・・・10.7円

LNG火力・・・ 6.2円

石炭火力・・・ 5.7円

原子力・・・・ 5.3円

おおっ!やっぱり、原子力が一番安いではないか!!

残念ながら、そうはならないのである。

この運転年数自体にカラクリがあるのである。

本来、原子力の“運転年数=耐用年数”は、減価償却の終わる「法定耐用年数」16年だったのである。

これを、近年になって、初期投資は大きいが、資源の乏しい我が国にとって、燃料費の割合が化石燃料に比べて比較的に小さい原発の“耐用年数”を40年として、電力会社や経済産業省主導で、コスト計算方法を変えてきたのである。

では、実際の運転年数、水力40年、石油・LNG・石炭火力は15年、原子力16年で計算してみると・・・

水力・・・・・・・11.9円

石油火力・・・12.4円

LNG火力・・・ 7.2円

石炭火力・・・ 7.4円

原子力・・・・ 7.0円

あれ?石油以外の火力と原子力では大して変わらないではないか?

今回の福島原発で考えさせられたと思うが、そこまでのリスクを背負う必要がある数字なのだろうか?

しかし、、ここで更によく考えてみよう。

原発は80%稼働しているか(?)という点である。

ここ数年の原発の稼働率は50%~60%というところである。

これを考慮すると、石油火力と変わらなくなってくる。

いやはや、稼働年数(耐用年数)を16年から40年に引き延ばし、稼働率さえもごまかした数字のカラクリで、原子力は安全・安心・安価とは、よく言えた物である。

さらにここでは詳しくは触れないが、原子炉を安定させるための揚水式発電所のコスト、原子力発電所建設の為に投じられた地元の懐柔資金、使用済み燃料の再処理や工場の解体、廃棄物処分に係る費用等は、原子力の発電コストには計上されていないのは言うまでもない。

次回へ。