「真実の口」286 東日本大震災・・・抗酸化からの提案ⅶ

前回、被災地の農業の被害状況をあげてみた。

農水省が、9月22日に発表した農業の再開状況を見てみよう。

http://www.maff.go.jp/j/tokei/census/afc/2010/pdf/n_zentai_110922.pdf

7月11日時点で、農業では被災した8県の経営体のうち、73.7%が再開している。

・・・と聞くと、聞こえは良いが、農業生産の準備を一部でも始めた場合でも、“再開”と見なしており、全面再開にはいたっていない経営体がほとんどである。

特に、宮城などは再開遅れが目立っており、他の地域との復興格差が顕著になりつつあるようだ。

また、福島も原発事故の影響で調査が困難であるため除外されている。

栃木、新潟では100%再開、岩手、茨城、千葉も9割を超え、青森、長野も8割以上が再開、宮城は塩害被害などが深刻で、34.1%だった。

被害の内訳を見て、津波被害からの再開に限定すると、宮城が約2割のほか、岩手でも約1割に過すぎず、津波の影響の大きさが浮き彫りとなっている。

農地の復旧・再開を考えるにあたり、被害のパターンに応じて、復旧・再開を考える必要性があると思う。

一つ目は、排水施設のみ被害を受けた農地。

二つ目は、津波により冠水しただけの農地。

三つ目は、津波により冠水し、瓦礫の撤去が必要な農地。

四つ目は、津波により冠水した上に、汚泥が堆積している農地。

五つ目は、東京電力福島第一原発事故により、放射能汚染した農地。

簡単に分けるとこれくらいなのだろうか?

まず、排水施設の被害を受けた農地は、青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島、茨城、栃木、千葉、長野、新潟の全農地1,913地区のうち402地区である。

農林水産省が6月6日に発表した『被災した農業集落排水施設の復旧支援』によれば、402地区のうちの379地区は、5月18日時点で仮復旧が済んでいる。

残りの23地区のうち、12地区は原発近傍のため被災地への進入不可の農地であり、宮城県では、通水不可となっている9地区は、津波による被害が甚大で、住民がすべて避難している地区であり、1地区は一部通水しており、茨城県の通水不可1地区は、施設の完成直後であり、まだ一般に供用されていないものらしい。

冠水した農地では、“塩害”が心配され、“除塩”が必要とされている。

農林水産省農村振興局が、『農地の塩害と除塩』というレポートを出しているので参考にさせてもらう。

http://www.maff.go.jp/j/press/nousin/saigai/pdf/110414-01.pdf

このレポートによると、塩害による農作物に与える影響を以下のようにしている。

▼土壌中に塩分が過剰に存在すると、土壌溶液の浸透圧が増加して、植物の根の吸水機能の低下や植物体外への水分流出が起こり、水分不足(生育障害)となって植物が枯死。

▼海水が土壌中に浸入すると、土壌の単粒化や緊硬度を高め、土壌の透水性が著しく低下。排水不良による作物の根腐れが発生。

次に、除塩の仕組みだが・・・

土中に浸入した塩分を土粒子から分離するため、石灰系土壌改良資材を投入し、真水を地下浸透させることによって、塩分を洗い流すという方法を一般的に使用する。

ただ、石灰を使った場合、水と反応して水酸化カルシウムになって、アルカリ性の強い土壌となり、別の問題が発生しそうだが・・・?

まあ、農水省が言っていることなので、揶揄せず、そのまま行程を見てみよう。

① 水条件の改善

農地表面の湛水や耕作土中の過剰な水分を排除し、作業機械の走行性を確保するため、水切溝の設置、排水路の掘り下げ。

② 灰等の施用

土壌中の塩分濃度や除塩後の営農計画を勘案し、”石灰系土壌改良材”を施用。

③ 耕起・砕土

NaイオンとCaイオンの置換反応と地下水排除促進のため、耕起・砕土し土壌改良材を混合。弾丸暗渠等を併せて施工。

④ 塩分の洗い流し

土壌中の塩分の排出状況に応じて湛水、排水作業の繰り返し。

なかなか・・・気の遠くなる作業である。

青森から千葉までの太平洋沿岸6県のまとめでは、昨年のコメの作付面積計約40万(ha)のうち約2万(ha)が浸水し、このうち除塩などにより、今春、作付けができたのは約2,700ヘクタールにとどまった。

来春までに全面作付けが可能となりそうなのは青森、茨城、千葉の3県だけだ。

次回は、今の農業に抗酸化で何が出来るかを考察したい。