「真実の口」392 己の身は己で守れ①

今月4日、株式会社悠香(福岡県)が販売した「茶のしずく石鹸」が原因で、小麦アレルギーを発症したとして、被害者らが悠香など三社に対して、損害賠償を求めた訴訟の第一回口頭弁論が、東京地裁で開かれた。

これは、今年の4月20日、被害を受けた購入者らが、製造物責任法に基づいて、悠香と製造販売に関わった二社の計三社に、損害賠償を求める訴訟を、東京地裁など全国15カ所で一斉に提訴したことを受けたものである。

全国の原告は、男女535人、請求総額は約70億4,000万円にのぼる。

三社とは、販売した悠香、製造元のフェニックス(奈良県)、アレルギーの原因とされる成分を製造した片山化学工業研究所(大阪市)である。

そして、この三社は、請求棄却を求める答弁書を提出し、いずれも争う姿勢を見せているという。

実は、奈良にあるフェニックスは、少なからぬ因縁があるのだが、これは、機会があれば書くことにする。

提訴前の3月23日、厚生労働省は、2月末時点での発症者が、1,567人に上ったと公表している。

昨年10月17日時点の報告数は471人(うち重症66人)だったのが、4カ月あまりで1,000人以上増えたことになる。

1,567人のうち、呼吸困難や意識不明になるなど救急搬送や入院が必要だった重症者は172人にものぼっている。

そして、5月28日、全国の医師に疫学調査の登録を呼びかけていた日本アレルギー学会が、その中間報告を公表したのだが、患者の52%が血圧低下や呼吸困難など重い症状を起こしていたということである。

被害者は、何も知らず、「あきらめないで」というCMの台詞に惹かれて、茶のしずく石鹸を使用しただけである。

たった、それだけのことで、小麦アレルギーに陥ったのである。

一言に小麦アレルギーと括ってしまうと、その生活の大変さがよくわからないと思う。

小麦粉を使った物を、解りやすく挙げてみよう・・・。

麦関連の粉・・・小麦粉、大麦、麦芽、ライ麦、はと麦、等々

主食として・・・パン、うどん、素麺、蕎麦、ラーメン、マカロニ、パスタ、麩、等々

つなぎや衣として・・・天麩羅、フライ、フリッター、餃子、焼売、春巻き、中華まん、等々

ルーや調味料として・・・カレールー、シチュールー、ホワイトソース、ソース、醤油、等々

小麦の加工食品・・・小麦胚芽油、麦茶、ビール、ウイスキー、等々

小麦を使った菓子・・・クッキー、ドーナッツ、ケーキ、ホットケーキ、麦芽ドリンク、等々

これを見て、あなたは今までと、同様な生活を送れるだろうか?

“いわゆる知識人”の中には、和食は洋食と違い、小麦に頼らなくても作れるから、小麦アレルギーになっても極度な心配は不要という輩がいる。

果たして、そうなのか?

和食に欠かせない醤油も、家では、小麦由来でない醤油で料理できるかも知れないが、外ではそんな選択肢はない。

つまり、一生、外食するなと言うことである。

では、重篤な小麦アレルギーになると、これらを口にしたらどうなるかご存知だろうか?

小麦アレルギーを発症する人の血液の中に存在するIGE抗体(免疫グロブリン)が、小麦タンパクと結合し、肥満細胞を刺激して、ヒスタミンを呼び起こすことになる。

ヒスタミンは、全身の血管を開いて、血圧を下げる働きがあり、ときには急な血圧低下を引き起してしまう。

また、呼吸を困難にする作用もあり、気管支喘息発作状態となり、さらに意識低下によって、アナフィラキシー・ショックを引き起こしてしまう可能性がある。

アナフィラキシー・ショックを起こすと、一刻も早く治療をし、緊急の注射薬を打つ必要があり、さもすれば、生命をおびやかすような危険な状態に陥ってしまう。

通常、医師法により、注射ができるのは医師のみのとなっているのだが、アナフィラキシー・ショックの際の緊急の注射は、誰が打っても、医師法には触れないと文部科学省・厚生労働省ともに、通達を出している。

それくらいの緊急性を要するのである。

今回の茶のしずく石鹸でも、アナフィラキシー・ショックまで引き起こした例が、何例もある。

しかし、当該三社は、請求棄却を求める答弁書を提出し、これから先の人生を苦しみ続けなければいけない被害者のことを放置して、争うというのである・・・。

久しぶりに、株式会社悠香のHPを見て、唖然とした。

おととし12月7日まで販売していた製品を、“旧茶のしずく石鹸”として位置づけして、“現在の茶のしずく石鹸”は、無農薬栽培茶のカテキンと、厳選した天然成分を使用しているので安心して使用してください的に、未だに堂々と販売しているのである・・・。

まさに、開いた口がふさがらないとは、このことを言うのであろう。

そりゃ、平気で、被害者の心情も考えずに、請求棄却を叫ぶわなぁ・・・。

あれ?

今日は、茶のしずくのことをメインに寄稿するつもりではなかったのだが、怒りでついつい、長くなってしまった。

次回へ・・・。