「真実の口」644 万能細胞・・・①

「STAP細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)」

1月30日の朝刊各紙の1面を飾ったニュースである。

神戸市にある理化学研究所発生・再生科学総合研究センターのチームが、弱酸性の刺激を与えるだけの簡単な方法で、あらゆる細胞に分化できる万能細胞を作製することにマウスで成功したというものである。

工エエェェ(´ロ`ノ)ノェェエエ工・・・と驚くほど、んでもないニュースなのだ。

再生医療への応用と新薬の開発への期待が大きく注目される理由なのだが、判りやすく解説するために、これまでの歴史を紐解いてみよう。

20世紀後半までは、一旦分化した細胞は、その特化された細胞機能以外を担うことはできないと考えられてきた。

しかし、1964年(奇しくも私の生まれ年)、“ガンの一種から”、幹細胞のように培養が可能な細胞株が、初めて取り出すことができた。

ここで、“ガンの一種から”という単語を、心に留め置いて欲しい・・・。

そして、1981年7月にケンブリッジ大学(マーティン・ジョン・エヴァンズ教授、マシュー・カウフマン教授)で、同年12月にカリフォルニア大学(ゲイル・マーチン教授)で、初めてマウスの胚性幹細胞(=ES細胞)が樹立された。

マーティン・ジョン・エヴァンズ教授は、2007年、『胚性幹細胞を用いての、マウスへの特異的な遺伝子改変の導入のための諸発見』で、ノーベル生理学・医学賞を受賞している。

更に、1998年 ウィスコン大学(ジェームス・トムソン教授等)により、初めて、ヒトの胚性幹細胞(=ES細胞)が樹立された。

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その製法は、受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生したところで取り出して、フィーダー細胞という下敷きとなる細胞と一緒に培養をすると、内部細胞塊が増殖を始めるというものであった。

この内部細胞塊は、胎盤などの胚体外組織以外の、全ての身体の組織に分化してゆく細胞集団である。

増殖した内部細胞塊由来の細胞をばらばらにしてフィーダー細胞に植え継ぐ操作を繰り返し、最終的に「ES細胞株」を樹立する。

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しかし、ヒトの場合は、受精卵を材料にするため、生命の芽を摘んでしまうと言うことから、倫理的な問題により、現在、研究に取り組んでいる国と取り組んでいない国に対応が分かれている。

特に、アメリカやイギリスでは、クローン人間の産制に繋がる懸念があるため、新たな研究の禁止をするなどの措置をとっている。

クローンと言えば、クローン羊ドリーを思い出すが・・・。

クローン羊誕生という衝撃の発表の時には、SFの世界でしか考えられなかった世界が、医療の進歩と伴に、それらの技術が現実となっていくことに危惧感を覚えたものである。

ただ、ES細胞を生体外にて増殖させ続けると、染色体変異、遺伝子異常が生じて次第に蓄積していく事が明らかとなっており、こうした遺伝子異常の結果、“ガン化する”可能性が指摘されている。

ここでも、“ガン化する”ということを心に留め置いて欲しい・・・。

そして、ES細胞が、再生医療への応用へと研究が進められていく中、2006年8月25日、米学術雑誌セルに、京都大学再生医科学研究所教授である山中教授らによる論文が発表された。

論文は、マウスの胚性繊維芽細胞に4つの因子 (Oct3/4・Sox2・c-Myc・Klf4) を導入することで、ES細胞のように分化多能性を持つマウス人工多能性幹細胞を樹立したというものだった。

iPS細胞である・・・o(^-’o)♪☆(o^-^)o~♪

更に、研究を進めた山中教授は、ヒトiPS細胞を生成する技術を開発し、2007年11月20日、論文として科学誌セルに発表し、世界的な注目を集めた

ただ、前述のヒトES細胞を樹立したウィスコン大学のジェームス・トムソン教授のグループも、山中教授と同じプロセスで、Oct3/4・Sox2・Nanog・Lin28の4遺伝子を選び出して、ヒトiPS細胞の樹立に別個に成功し、山中教授と同日に、サイエンス誌に発表された。

山中教授は、『成熟細胞が初期化され多能性をもつことの発見』により2012年のノーベル生理学・医学賞を受賞した。

しかし、ジェームス・トムソン教授の同時受賞はなかった・・・(@・Д・@)??

これには、面白い舞台裏があったらしく、少し披露してみようと思うので、次回へ・・・。