「真実の口」646 万能細胞・・・③

前回の続き・・・。

少し寄り道をしてノーベル賞の舞台裏を書かせてもらったが、本題に戻そう・・・。

さて、山中教授のiPS細胞とは、いったいどういうものなのか・・・???

ES細胞と何が違うのだろうか・・・???

前述したように、ES細胞は、受精卵が胚盤胞と呼ばれる段階にまで発生したところで、体のすべての元になる細胞を取り出し、多能性を保たせたまま培養して増やしていくというものだった。

しかし、ES細胞を利用して、臓器を作ったとしても、所詮、他人の細胞を利用して作ったものである・・・。

つまり、通常の臓器移植と同じく、拒絶反応が起こるという問題点があった・・・( ̄へ ̄|||) ウーム

ただ、クローン技術の応用で、患者本人の細胞の核を受精卵に注入し胚盤胞まで培養し、そこからES細胞を作り、臓器を作れば、拒絶反応という問題点はクリアすることはできる・・・σ( ̄、 ̄=)ンート・・・

しかし、受精卵を犠牲するという倫理的な問題は、依然残ってしまう・・・(;`・д・`)ウンウン

では、iPS細胞は、どうなのだろう・・・???

山中教授は、『マウスの胚性繊維芽細胞に4つの因子 (Oct3/4・Sox2・c-Myc・Klf4) を導入することで、ES細胞のように分化多能性を持つマウス人工多能性幹細胞を樹立した』ということを前述しているが、これだけでは、何のこっちゃ(?)と、思う人もいるだろう・・・。

要は、既にできあがった体の分化した細胞(例えば、皮膚)を取り出し、人工的に4個の遺伝子を組み入れることによって、ES細胞同様、いろんな臓器・組織の細胞に分化する能力を持たせることができたということである。

iPS細胞の場合は、自身の細胞を使うので、臓器を移植した際の、拒絶反応は起きない・・・。

また、受精卵を使用しないので、倫理的な問題もクリア(?)したことになる。

ヒトiPS細胞樹立の成功により、再生医療の実現に向けての大きな一歩を踏み出すことができた・・・。

2007年11月23日、日本政府も、5年間で70億円を支援することを決定している。

しかし、嫌らしい話しだが、このような発明には、常に利権がついて回る・・・。

舞台裏で、手放しで喜べない状況が起きていた・・・(^-^;)

ナント・・・。

2008年4月11日、毎日新聞の朝刊1面に、『バイエル薬品、ヒトiPS細胞を先に作製–特許も出願、山中教授抜く』という記事が出たのである・・・Σ(゚Д゚;エーッ!

ヒトiPS細胞の樹立について、更に、特許出願さえも、山中ら京大グループよりもバイエル薬品の方が先行していた可能性が出てきたのである・・・工エエェェ(´ロ`ノ)ノェェエエ工

バイエル薬品と言えば、言わずと知れた、ドイツに本社を置く、世界的薬品メーカーである。

しかも、iPS細胞を作成したのは、『神戸リサーチセンターの桜田一洋センター長らのチーム』なのだ・・・。

前述したが、山中教授が、マウスによるiPS細胞の樹立を、セル誌に論文を発表したのが、2006年8月25日である。

これ以降、山中教授と同様の方法で研究を進める学者・チームがあったとしても不思議ではない。

当然、山中教授より、先んじて、ヒトiPS細胞の樹立に成功する学者・チームがあったとしても・・・工エエェェ(´ロ`ノ)ノェェエエ工

しかし、そうなると、ヒトiPS細胞の作製に関わる基本特許を、拝金主義の企業だったり、更に、海外企業に奪われたとしたら、日本の企業や研究機関は高い特許使用料を支払う必要が生じる可能性がでてくるのである。

引いては、iPS細胞の実用化の遅れや、患者の負担増につながりかねない・・・。

バイエル製薬は、2006年8月に開発に着手し、2007年春には作製に成功していたという。

これは、山中教授らの論文発表(2007年11月)に先行している・・・。

一方、実際の特許出願時期は、バイエル製薬の2007年6月に対して、山中教授京大グループは2006年12月であり、山中らの方が先行・・・。

2011年8月現在、日本、アメリカ、ヨーロッパ等で、山中教授の特許が成立している。

ただ、この特許問題も、何とか解決に至っているのでご安心を・・・(^▽^)=3 ホッ

バイエル薬品が出願していた特許は、iZumiバイオという米バイオベンチャーを経て、同社と合併してできた別の米バイオベンチャー、アイピエリアンに権利が移った後、2010年に英国で成立・・・。

しかし、2011年2月、アイピエリアンが京都大に特許を無償譲渡し、京都大が同社に特許使用を許諾する形で事態は決着した。

アイピエリアンは、京都大が出願していた特許が2008年に日本国内で先に成立したことなどから、数億円単位の費用がかかる係争を避けたのでは・・・???

次回へ・・・。