「真実の口」1,451 化学物質過敏症・・・②

前回の続き・・・。

前回、厚生労働省発表の資料『科学的エビデンスに基づく新シックハウス症候群に関する相談と対策マニュアル改訂新版( 2018 )』の中での意図的な資料の引用を意地悪な目線で取り上げてみた。

ただ、この公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターへのシックハウス相談件数にしても単体で見ても意味がない。

住宅着工戸数と比較しなければ、総合的な判断は出来ない。

そこで次のグラフを見て頂こう・・・。

住宅着工戸数推移

前述したが、改正建築基準法(シックハウス対策法)が施工されたのは、平成 15 年( 2003 年)である。

このグラフから読み取れるのは、厚生労働省が“ミスリード”させるための「 2004 ~ 2010 年にかけて減少、 2010 年以降は横ばい」という表現とは、捉え方が変わってくるのではないだろうか?

2005 ~ 2010 年の間に何が起こったかは、多くの人がお気付きのことだと思う。

忘れている人も「あぁ・・・。」と納得することはずである。

リーマン・ショック

リーマン・ショックとは、 2008 年 9 月 15 日に、アメリカ合衆国の投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングス( Lehman Brothers Holdings Inc. )が経営破綻したことに端を発して、連鎖的に世界規模の金融危機が発生した事象を総括的によぶ通称である。

この背景には、 2007 年のアメリカの住宅バブル崩壊をきっかけとして、サブプライム住宅ローン(※注 1 )危機を始め、オークション・レート証券(※注 2 )、カードローン関連債券など多分野にわたる資産価格の暴落が起こっていた。

(※注 1 ) 主にアメリカ合衆国において貸し付けられるローンのうち、優良客(プライム層)よりも下位の層(サブプライム層)向けとして位置付けられるローン。

(※注 2 ) 地方債や社債、優先株などで構成され、数週間おきにオークション(入札)により金利や配当金を見直す借換債のことで、既に発行していた債券の償還資金を調達するために、新たな債券発行をして、長期金利が低下してきた場合などに、既に発行していた高利の債券をいったん繰上償還し、低利の債券を再び発行して金利負担を軽減するなどの目的で発行される場合が多い。

2007 年からの住宅市場の大幅な悪化と伴に、危機的状態となっていた連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ(※注 3 ))やフレディ・マック(※注 4)などのへは、政府支援機関における買取単価上限額の引上げや、投資上限額の撤廃など様々な手を尽くしていたものの、サブプライムローンなどの延滞率は更に上昇し、住宅差押え件数も増加を続けていた。

(※注 3 ) アメリカ国内の住宅供給の安定化を目的とした特殊法人。主要な業務は、民間金融機関に対する住宅ローン債権の保障業務で、サブプライムローン問題が問題化するまでは、ファニー・メイ発行の証券は政府機関債と見做され、米国債に次ぐ高い信用力を保っていた。

(※注 4) 連邦住宅抵当公庫(ファニー・メイ)と役割はほぼ同じ。ニューヨーク証券取引所上場の民間企業だったが、 2010 年 7 月に上場廃止となった。政府設立の民間企業であり、金融機関の住宅ローン債権を保証するのが主業務。国策会社として巨大な金融機関へと成長したが、返済能力が低い低所得者の住宅ローン債権を保証していたため、金融危機によって経営危機に陥り、国有化された。

リーマン・ブラザーズは、負債総額約 6,000 億ドル(約 64 兆円)というアメリカ合衆国の歴史上、最大の企業倒産により、世界連鎖的な信用収縮による金融危機を招いた。

同日、大手投資銀行のメリル・リンチ も、米国大手商業銀行バンク・オブ・アメリカに買収されることが発表された。

それまで、大手金融機関については、“大きすぎてつぶせない( Too big to fail )”、また、他の金融機関との“関係が密接なのでつぶせない( Too interconnected to fail )”ため、市場関係者の多くが漠然と破綻することはない(=政府の救済がある)と考えていた。

しかし、 リーマン・ブラザーズの破綻により、大手金融機関についても、破綻のリスクがある ことが強く認識され、金融機関はお互いの財務状況について急速に相互不信に陥っていった。

その結果、短期金融市場は、資金が枯渇したり、大幅なリスク・プレミアムを付して取引される事態となった。

日本は長引く不景気から、サブプライムローン関連債権などにはあまり手を出していなかったため、金融会社では大和生命保険が倒産したり、農林中央金庫が大幅な評価損を被ったものの、直接的な影響は当初は軽微であった。

しかし、リーマン・ショックを境に世界的な経済の冷え込みから消費の落ち込み、金融不安で各種通貨から急速なアメリカ合衆国ドルの下落が進み、アメリカ合衆国の経済への依存が強い輸出産業から大きなダメージが広がり、結果的に日本経済の大幅な景気後退へも繋がっていった。

このような背景で、住宅着工戸数も落ち込んでいる状況下で、シックハウス相談件数が減り、その後横ばいというのは無理があるのではと思うのは私だけだろうか?

しかし、上の住宅着工戸数の推移グラフの引用自体が私の印象操作だったとしたら如何だろう・・・( ̄ー ̄)ニヤリ

上のグラフでは、 2000 ~ 2005 ~ 2010 ~ 2014 と言う風に間が抜けている。

では、この期間の住宅着工戸数はどうなっているかと言うと、以下のグラフのようになっている。

住宅着工戸数推移

2003 年 7 月、改正建築基準法(シックハウス対策法)が施工された翌年から 2006 年までは住宅着工戸数は右肩上がりなのである。

2004 年・・・ 1,193,038 戸/ 345 件 / 0.029%
2005 年・・・ 1,249,366 戸/ 248 件 / 0.020%
2006 年・・・ 1,285,246 戸/ 211 件 / 0.016%

左に住宅着工戸数、中央に新築のシックハウス相談件数、右に比率を記した。

改正建築基準法施工後、相談件数が減っていたのは事実である。

2010 年・・・ 819,020 戸/ 66 件 / 0.008%
2011 年・・・ 841,246 戸/ 65 件 / 0.007%
2012 年・・・ 893,002 戸/ 59 件 / 0.007%

2010 ~ 2012 年の横ばいも納得がいく・・・(笑)

しかし、 2013 年以降を意図的(?)に除外されるとねぇ・・・(笑)。

2013 年・・・ 987,254 戸/ 39 件 / 0.004%
2014 年・・・ 880,470 戸/ 45 件 / 0.005%
2015 年・・・ 920,537 戸/ 70 件 / 0.007%
2016 年・・・ 974,137 戸/ 83 件 / 0.009%
2017 年・・・ 946,396 戸/ 90 件 / 0.01%
2018 年・・・ 952,936 戸/ 84 件 / 0.009%

このような数字を全て出した上で、横ばいというのであれば納得いったのではないだろうか?

つまり、誰かが作った下のグラフも、意図的か検証不足か、結果的に受け手を“ミスリード”させることになっているになるわけだ・・・( ̄へ ̄|||) ウーム

シックハウス関連の相談件数 2018

相談件数の数字が増えて、グラフが右肩上がりになる前でデータを端折った厚生省も然り・・・( ̄▽ ̄;)

相談件数の数字が増えているグラフを、如何にも相談件数のみが右肩上がり増えているかのようなグラフを作る人間も然り・・・┐( -_-)┌ ヤレヤレ

公正に判断できるような提示をしてもらいたいものだ・・・怒(-"-)怒

インターネットの時代、誰でも情報を発信できるし、受信もできる。

しっかり、判断できる自身を持たなければいけない!

次回へ・・・。