「真実の口」116 我々は何をすべきか?⑭

前回につづき水産業について寄稿する。

数年前に、私の出身地でもある長崎でフクの養殖にホルマリンを使用していたというニュースが新聞報道され話題になったことを覚えているだろうか?

2003年4月23日の日本経済新聞である。

見出しは“長崎の95業者。県、166万匹出荷停止要請”。

内容は、“長崎県内のトラフグ養殖業者が、発がん性が指摘され使用が禁止されているホルマリンを、寄生虫対策として使っていたことが二十二日、長崎県の調査でわかった。県によると、養殖業者の約六割がホルマリンを使用しており、県はホルマリンを使っていた養殖中のトラフグ約百六十六万匹について、出荷停止を要請した。”というものである。

長崎県はフグの養殖では、約60%の国内シェアを誇っている。

この報道を受けて、ホルマリンを使用していないフグまでも出荷できなくなると言う事態に陥ってしまった。

元々、水産庁は1977年ホルムアルデヒドに発がん性があるとのアメリカ食品医療薬品局からの報告を受け 当時うなぎの寄生虫駆除に使用していたホルマリンに使用を中止するよう通達を出している。

その後、’81年、’91年と再三にわたりホルマリンを用いた寄生虫駆除を行わないように通達を出している。

各都道府県もこれを受けて、管轄漁業協同組合に通達を出している。

何故、禁止されているホルマリンを使用するのだろうか?

フグ養殖の生け簀には、寄生虫の中でもエラムシがやたらと発生するらしい。

エラムシが、フグのエラに寄生すると、血を吸い、養分を奪う。

そうなると、フグがやせ細り商品価値を失くしてしまうためホルマリンで除去するという構図である。

では、天然のフグにもこのエラムシは付くのかというと、皆無ではないが、養殖フグのように大騒ぎしなければいけない程は付かないらしい。

では、何故、養殖だと大量発生するのか?

フグはハマチやタイに比べ市場価格が高く、餌代が安いことから、病気にさえ注意すれば採算性が高い。

そうなれば、人間の考えることは単純である。

大量に飼えば、利益も莫大に産む。

当然、養殖生け簀の密度が増せば、生け簀の潮流は滞り、病気が蔓延、エラムシの大量発生という悪循環を辿るのである。

そこで、とりあえずエラムシを除去しようと安易な発想の元、「毒物および劇物取締法(毒劇法)」による医薬用外劇物に指定になっているホルマリンが登場することになる。

農業、漁業と何ら変わらない。

では、何故、このホルマリン使用がばれたのだろう?

フグの養殖場と同じ海域の真珠養殖業者からの告発である。

真珠を養殖するためのアコヤ貝が、突然、海中で大量死する事件が相次いだことに端を発する。

突然の大量死もさることながら、養殖業者が、一番不気味に思えたことは、死んだ貝からほとんど腐敗臭がしなかったことらしい。

海で何が起きているのだろうと思ったのではないだろうか?

調べた結果、アコヤ貝からホルムアルデヒド8ppmが検出された。

皆も理科室で、腐敗しないようにホルマリン漬けにされた動物等を見て、気持ち悪くなった記憶があるのではないだろうか?

では、何故、フグに使用したホルマリンがアコヤ貝を全滅させたのだろう?

次回へ・・・