「真実の口」282 東日本大震災・・・抗酸化からの提案ⅲ

前回の寄稿は、読む人によっては、荒唐無稽に感じたかも知れない。

今回は、水産業にスポットをあてて、今更と思うかも知れないが、その被害実態を見てみたいと思う。

多くの人が、テレビの映像で見たと思うが、東日本大震災では、巨大地震のあとに大津波が幾重にも押し寄せ、陸上の最奥部まで到達すると、今度は引き波となって、強大なエネルギーを持って海に向かって逆流していた。

その押し波と引き波で、太平洋沿岸の漁港、漁村などに甚大な被害が発生し、漁船、養殖施設、市場、水産加工場など水産業にとって重要な施設に加え、造船など関係産業も、史上類を見ない大打撃を受けた。

漁港数も漁船数も多い岩手県、宮城県では、ほとんどの漁港が深刻な被害を受けた。

漁船をはじめ、様々な船が海底に沈んだり、沖に流されたりし、また、津波によって多くの船が陸上に打ち上げられ、宮城県塩釜港では国道上に5472トンの貨物船が打ち上げられ、岩手県大槌町では109トンの客船がビルの上に載っているという衝撃的な映像は今でも忘れられない。

4月26日の農林水産省によると、漁船の被害数は1万8,936隻、被害漁港数は319漁港にのぼる。

具体的に紹介するのは、東北4県に絞るが、被害状況は以下のようになっている。

◆青森県

漁船:546/6,990隻
漁港:17/92漁港
被害を受けた養殖種類:コンブ、ホタテ
市場:被災2~3カ所(浸水、設備破損など)/7市場
水産加工施設:八戸地区で被害。全壊4、半壊14、浸水39/119施設

◆岩手県

漁船:壊滅的/10,522隻
漁港:ほぼ全漁港で壊滅的被害/111漁港
被害を受けた養殖種類:ホタテ、カキ、コンブ、ワカメ
市場:13市場すべて被災。大半は壊滅的被害。宮古・久慈・大船渡は建屋などが残存
水産加工施設:大半が流失・損壊。全壊59、半壊6/178施設

◆宮城県

漁船:壊滅的/9,717隻
漁港:全漁港で壊滅的被害/142漁港
被害を受けた養殖種類:ギンザケ、ホタテ、カキ、ホヤ、コンブ、ワカメ、ノリ類など
市場:10市場すべて被災。壊滅的被害(全壊、浸水、設備破損など)
水産加工施設:半数以上が壊滅的被害。全壊304、半壊17、浸水29/439施設

◆福島県

漁船:873/1,068隻
漁港:全漁港で壊滅的被害/10漁港
被害を受けた養殖種類:ノリ類
市場:12市場すべて被災。半壊4、建屋・機器の流出5、原発避難地区2
水産加工施設:詳細不明/135施設

津波が去ったあとの漁港は・・・見るも無残な姿に変貌していた。

加工場、市場は壊滅、湾内には漁具やブイ、建物の残がいが漂流し、何から手をつけて良いのかからない状況だった。

先日、別件でお会いした方の知人が、ある漁協の副漁協長をしているらしい。

震災後、すぐに連絡が取れず、「もしかしたら・・・」と悲痛にくれていたら、5月になって、先方から連絡があったらしい。

無事を喜んだが、話を聞くと手放しで喜べる状況ではなかったようである。

当然、副漁協長という立場から、震災後、漁港・漁協の再開に奔走していたらしい。

湾内に沈んだ船や建物などのがれき、海面に浮かぶ漁具などの膨大な量の残がいが撤去しなければ、安心して船を出すことができない。

加工処理施設や市場を再建・再開しなければ、魚を消費者に届けることもできない。

養殖施設も壊滅的な被害を受けたそうである。

カキの養殖は短くても、収穫できるまでに1年以上かかるらしい。

丁度、これから収穫時期を迎えるはずだったワカメの養殖いかだは、津波によって一瞬のうちに破壊・流失してしまったそうである。

養殖業者の落胆は大きく、廃業を考えている人が多いらしい。

そのご本人はと言えば、19トン級の大型漁船を保有していたのだが、津波で、打ち上げられて、内陸で発見したらしいが、とても使える代物ではなかったらしい。

全国で1万8,936隻の漁船が損失し、被災地の造船所も壊滅状態で、被害を受けていない県の造船所へ造船を依頼しても、どの造船所も受注を抱えフル稼働で、いつ船が出来上がるかさえ解らないらしい。

また、中古の船でさえ手に入らない状況で、出漁の目処が立っていないというのが当時の状況らしい。

今回は、水産業の被害を具体的に見てみたが、次回は、今の水産業に抗酸化で何が出来るかを考察したい。