前回の続き・・・。
iPS細胞に、がん化の存在が判ったときから、山中教授を含むその他の学者が指をくわえていた訳ではない・・・。
2007年11月30日、山中教授等は、当初使用した4因子の内の一つ“c-Myc”を除き、“Oct3/4・Sox2・Klf4”の3因子だけで、マウス・ヒトともにiPS細胞の樹立が可能であり、iPS細胞が癌化するのを抑えるのに成功したことが、英国科学誌「Nature Biotechnology」で発表された。
しかし、今度は、出来る効率が低下してしまった・・・。
2011年6月9日、山中教授等は、“Oct3/4・Sox2・Klf4”に“Glis1”という別の因子を加えることにより、“c-Myc”を加えた時と同様の作製効率となる上に、がん化するような不完全なiPS細胞の増殖も防ぐという画期的な研究を、英科学誌「Nature」で発表している。
更に、2013年11月15日、山中教授等は、米グラッドストーン研究所との共同研究で、人間の細胞にある特定の“マイクロRNA”の働きを抑えることで、iPS細胞の作製効率を10~100倍向上させる新手法を開発し、細胞がん化のリスクを減らす効果もあることを、米科学誌セルの姉妹紙である「セル・ステム・セル」で発表している。
さて、その他の問題点として、拒絶反応がある。
ES細胞では、他人の細胞を使うことにより、拒絶反応が出たのだが、iPS細胞の場合、本人の細胞を使うので、拒絶反応は起きないとされていた・・・。
しかし、2013年5月13日、カリフォルニア大学・趙博士等により、iPS細胞を移植したマウスに、免疫拒絶反応がみられたという報告が、英科学誌「Nature」で発表されたのである・・・Σ(゚Д゚;エーッ!
この論文では、マウスにES細胞とiPS細胞を移植して、一定期間たった後に腫瘍が形成されている、もしくは免疫拒絶反応が起きているかどうかを調べている。
ある種類のマウスから採取されたES細胞を、それとは異なる種類のマウスに移植すると、免疫拒絶反応が起きる・・・φ(..
) メモメモ
しかし、同じ種類のマウスに移植すると、腫瘍はできても、拒絶反応は起こらかったという・・・d(^o^)b ィィョ
一方、iPS細胞を同じ種類のマウスに移植したところ、なんと免疫拒絶反応が起きたというのである・・・?(´;ω;`)マサカ
そして、このiPS細胞の免疫拒絶反応は、免疫反応で働くT細胞が重要な役割を果たしているということが判明したと報告されている・・・Σ(゚Д゚;エーッ!
T細胞とは、血液中を流れている白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種で、我々身体を異物から守る免疫の司令塔ともいうべきものである・・・( ..)φメモメモ
T細胞表面にはT細胞抗原受容体(TCR)があり、これを用いて外から入って来た異物を認識する・・・。
1つ1つのT細胞は、それぞれ異なる形のTCRを持っていて、どんな異物が入って来たとしても、対応できるような準備が出来ている・・・。
つまり、iPS細胞全てを、異物と認識してしまう可能性を指摘しているのである・・・オイオイ・・
(;´д`)ノ
もちろん、趙博士の論文に対して、山中教授等は、以下のような論文でコメントしている・・・。
・1種類のES細胞と数種類のiPS細胞しか実験に用いておらず、きちんと結果を議論するためには足りない。
・用いた胎児細胞由来のiPS細胞は、なんらかの組織の成熟細胞へと分化誘導を行なわず、未分化な細胞のまま体内に導入ており、現在想定されている移植では、患者本人から採取した細胞からiPS細胞を作り出し、その後、目的の細胞に分化誘導をした細胞を移植する、つまり、未分化なiPS細胞は移植することはない。
・未分化な細胞が、体内に移入されるとがん化する可能性があり、その結果、移入されたiPS細胞をがんになる可能性のある細胞(がん原細胞)だと免疫細胞が認識して、攻撃したのかもしれない。つまり、iPS細胞に対する免疫拒絶ではなく、がん原細胞に対する反応だったとも考えられる。
その後、2013年1月8日、独立行政法人放射線医学総合研究所研究基盤センター 荒木良子室長、安倍真澄特別上席研究員らの研究チームは、鶴見大学歯学部二藤 彰教授らとの共同研究において、iPS細胞とES細胞の免疫原性について解析を行い、両者に差がないことが明らかにされ、英科学雑誌「Nature」に発表されるのである・・・(^▽^)=3 ホッ
この研究チームによって、、完全に分化した細胞を用いる場合には、拒絶反応を考慮する必要性がないことを明らかにしたのである・・・┐(´∀`)┌ヤレヤレ
ホッとした所で、次回へ・・・・。