前回の続き・・・。
『介護殺人 殺人事件の「告白」』シリーズ第五回目は、12月12日、『母に「楽になろうか」』というタイトルで掲載された。
サブタイトルは、「11年 1日も休まず」。
※2014年 地域:大阪府 加害者:娘(46) 被害者:母(63)
【介護の状況】:交通事故により寝たきりになった母を、11年1日も休まず介護を続け、肉体的・精神的に限界を感じ、心中を謀る。事件後、娘はうつ病と診断される。
記事の内容は、前回同様、要約して、時系列を並び替えてある。
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トラック運転手の父親。
留守がちの父親に変わり家を守る母親。
姉弟の4人家族。
長女は母親っ子で、いつも母親に寄り添う。
料理や裁縫をする母親の傍にいるだけで幸せを感じる。
2011年、朝、母親が自宅近くの交差点で少女の運転する自動車にはねられる。
頭を強く打った母親は死の淵をさまよう。
奇跡的に一命を取り留めるも、寝たきりになり、言葉も発せ無くなる。
入院して2年。
「病院の介護は雑に思える。お母さんも寂しいんじゃないか」
母親っ子の長女は、「介護するのは自分しかない」と自分で介護することを決意。
勤め先のスーパーを辞める。
病院に1週間泊まり込んで、チューブの消毒や痰の吸引を学ぶ。
それから約11年間。
毎朝4時に起き、約二時間かけてチューブによる流動食を与える。
痰の吸引。
おむつの替え。
買い物、洗濯。
昼と夜にも流動食。
夜には、床ずれ防止に1時間おきに身体を動かす。
交際男性とも別れ・・・。
1日たりとも休まず、熟睡した日はない。
寝たきりの母親は、長女が話しかけた時のみ笑ったり、口をぱくぱくと動かしたりした。
「喜んでくれている」
長女は生き甲斐を感じる。
事件の半年前から。
起きるのを苦痛に感じ出す。
「死にたい。」
食事が喉を通らなくなりやせ細る。
「限界が来た。」
心中を決意。
砕いた睡眠薬を水に溶かし、チューブから注入。
「これから襲う痛みを和らげたかった。」
母親の耳元で・・・。
「楽になろうか。」
うなずく母親。
「ごめんな。」
母親の左胸をめがけて包丁を4回突く。
母親に添い寝し、自身の腹を何度も刺す。
連絡が取れないことを不審に思った知人男性が発見。
救急隊員が母親を動かそうとした時、長女は意識を取り戻す。
母親の腕を掴んで叫ぶ。
「お母さんと一緒に行くんだ。」
事件後の精神鑑定で、うつ病と診断。
2015年7月、執行猶予付きの判決が下される。
父親:「近くにいたのに気付いてやれなかった。」
長女:「生まれ変わっても、お母さんの子供として産まれたい。」
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在宅介護によってストレスや悩みを抱え、うつ状態になる人は少なくない。
厚生労働省の研究班によると、2005年、在宅介護をしている人を対象にアンケートを実施し、その回答から4人に1人が「うつ状態にある」と判定された。
その一方、心理カウンセリングなどを受けているのは全体の3%に過ぎないという。
65歳以上の介護者の約3割は、「死にたいと思ったことがある」と答えており、介護者の心のケアが急務である。
次回へ・・・。