「真実の口」1,511 新型コロナウィルス・・・㊾

5 月 13 日、日本相撲協会から、三段目力士の勝武士(しょうぶし・本名:末武清孝さん)が、新型コロナウィルス性肺炎による多臓器不全のため死去したと発表があった。

勝武士さんは 28 歳と言う若さだった。

日本国内で初めての新型コロナウィルスによる 20 代の死者であり、スポーツ界でも死者が出たのは初めてのこととなる。

協会によると、勝武士は 4 月 4 日に 38 度台の発熱があった。

師匠の高田川親方(元関脇・安芸乃島)らが保健所や複数の病院に連絡したが、受け入れ先が見つからない日が続いた。

血痰(けったん)があった 8 日に救急車を呼び、同日夜に東京都内の病院に入院。

9 日に症状が悪化して転院し、 PCR 検査の結果、 10 日に陽性と判定された。

19 日に病状が悪化し、集中治療室( ICU )で治療を受けていたが、 5 月 13 日午前 0 時半に亡くなった。

関係者によると、力士の職業病とも言われる糖尿病を患っていたという。

この勝武士さんの死こそが、「新型コロナウィルスに感染してはならない!」と、私が再三伝えていることを、メッセージとして教えてくれている。

4 月下旬、“コロナの爪先”という言葉がメディアで飛び交った。

新型コロナウィルスに感染した患者の足の指の写真である。

「しもやけ」のように赤くなっている。

スペインの皮膚科医:フアン・ガビン医師は、「おそらく一般的な病名は、 Covid toes (コロナの爪先)。(この症状は)本当によくあって、ここスペインでは何百件もある。さらに、赤い斑点や、手足の甲が青くなる、あるいは黒い斑点ができる症状のほか、首にも現れることもある。」という。

「子どもと若者によく見られる典型的な(発熱などの)症状があって、 2 ~ 3 週間後に皮膚の異変が見られる。」とも語っている。

フアン医師によれば、「明確な原因はわかっていないものの、ウィルスによる血管内の損傷などが考えられる。」という。

また、新型コロナウィルスに感染した 30 ~ 40 代の患者が脳梗塞を併発する症例がアメリカで相次いでいることもわかった。

ウィルスが「血栓」の形成を促進したことが原因となった可能性が指摘されている。

アメリカでは今、新型コロナウィルスと「血栓」の関連性が注目を集めているという。

マウントサイナイ医科大学病院のチームがまとめた報告によると、新型コロナウィルスに感染した 50 才未満の患者が、脳梗塞を併発した症例が 2 週間で 5 人と相次いだらしい・・・。

5 人の新型コロナウィルスの症状はいずれも軽症か無症状ということらしいのだが・・・。

ウィルスの影響で血液の凝固機能が亢進し、「血栓」の形成を促進したことが脳梗塞発症につながった可能性があるという。

同病院では、主幹動脈(脳に酸素や栄養を送っている複数の太い血管)の閉塞による脳梗塞で治療を受けた 50 才未満の患者は、通常 2 週間の平均で 0.73 人で、 1 症例あるかないかだったのが、この 2 週間では 7 倍に増加したというからただ事ではない・・・!

この報告は医学誌「 The New England Journal of Medicine 」に 28 日、掲載されたそうだ。

通常、この年代での脳梗塞の発症例は多くないらしく、実際に同病院で治療に当たり、報告をまとめた日本人医師・重松朋芳助教はこう語っている。

重松医師:「この 5 つの症例はすべて、 50 才未満で主幹動脈閉塞を認める脳梗塞。脳梗塞の危険因子である糖尿病、高血圧、高脂血症、睡眠時無呼吸症候群といったリスクが全くないような状況で、発症したので非常に驚いて報告した。」

重松医師は、この発症のメカニズムについて、「新型コロナウィルス特有の現象だ」と指摘する。感染すると、なぜ、若年層でも脳梗塞を発症するのか、また、通常の症例との違いは何なのか詳しく話を聞いた。

以下は、重松医師による取材の内容だ。

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Q. 新型コロナウイルスと脳梗塞の関連性、メカニズムは?

A. 解明されていないが、新型コロナウィルス感染症の症例を見返すと、凝固機能が非常に亢進しているというデータがちらほら見られる。新型コロナウィルス自体がなんらかの凝固、血が固まりやすくなる状況を作り出して、異常な血栓を作り、脳梗塞を起こしたのではないかと考えている。細い血管が血栓によって詰まっていくというようなメカニズムは頭だけでなく、肺などでも起こっている。それが頭の中でおこれば脳梗塞を起こすのではないかなと考えている。

Q. ウイルスが血栓を作るというのは珍しい現象か?

A. 新型コロナウィルス特有じゃないかと今のところ言われている。肺炎が重症化するメカニズムでも肺の中の細かい血管に血栓ができて循環が悪くなり、肺炎が悪化し、重症化するのではないか。

Q. 新型コロナウィルス特有の症状では味覚障害が有名だが?

A. 味覚障害の直接の原因ははっきりしていないと思うが、同様に新型コロナウィスによる血栓症もこれまで(関連性が)はっきり指摘されていなかった。

Q. 今回の症例で特異な点は?

A. 普段は血栓がつかないようなところにつく。頸動脈、首のあたりに血栓がついて、治療したら消えてしまうということもあった。もしくは血管内治療を行った症例では、血栓をある程度とってもまた自然にそこに血栓ができ、詰まってしまうという状態が繰り返されることもあった。

普通、脳梗塞で主幹動脈が詰まる場合は例えば心臓内で大きな血栓ができて、頭にとんで大きな血管が詰まってしまうというメカニズム。その場合血栓は一度回収すればおしまいだが、若い症例では血栓が一度できたら回収してもできやすく、何度でもできやすい。または異常なところに血栓ができやすいというような形だった。だから、心臓から血栓がとぶようなタイプの脳梗塞、我々が普段治療しているような脳梗塞ではなかった。

Q. 全米レベルで症例数は?

A. まだつかめていない。ただ、血栓症の中でも、脳から戻る血管、静脈に血栓ができる脳静脈洞血栓症という月に 1 例あるかないかの症例が、新型コロナウィルス感染が始まったのと同時期に急に 4 例相次いだ。元々は経口避妊薬を内服している若い女性や肥満のリスクがある方に起こる。マンハッタン内でニューヨーク大学やブロンクスの病院でも同じような疾患を見たという話があった。

Q. なぜ若年層に起こるのか?

A. 実際には、コロナウィルス陽性の高齢の方も脳梗塞になりやすいと思う。若い人でも(感染した場合は)凝固機能が亢進するため、脳梗塞がみられるようになってきたし、また、重症なタイプの脳梗塞がみられるようになってきたのではないかと考察している。

Q. 治療法は特別なものか?

A. 脳梗塞に対する治療は通常の治療。それにコロナウィルスの治療、呼吸管理、全身管理が必要になってくるかどうかの違いだ。

Q. 脳梗塞の症状が確認された場合どのように対処すべきか?

A.脳梗塞の治療は時間との闘いだ。血管が詰まった瞬間から脳細胞がどんどん死に始め、脳に早く血が流れるようにしてあげないと脳を救うことができない。特に若い世代の場合、受診が遅くなることが問題で、ダメージが最小限に抑えられなかったり、思うような回復が得られなくなるケースがあった。

Q. 若い世代でも脳梗塞を疑うべきか?

A. ろれつ障害、体の片側だけ力が入りにくいなど筋力低下、顔が非対称になる、片側だけ動きにくくなる、半身だけのしびれというのが一般的な症状だ。頻度が高いわけではないと思うが、(脳梗塞の症状が)若い方にも起こりうると認識してもらい、万が一症状が出たらコロナがいるからいやというのではなく、一刻も早く受診してほしい。早く来て早く治療すれば、より回復がよくなる、それを伝えたい。

Q. 医療従事者に対して伝えるべきことは?

A. 脳梗塞の患者さんに対しては、症状がなくてもコロナウィルス感染症を疑うことが自分を守る、スタッフを守る、病院を守る、患者さん、また院内の他の患者さんを守るという立場から大事じゃないかと思う。当院では症状が無くても、脳梗塞患者の全症例に、コロナウィルスの検査をしている。安全管理、患者さんマネージメントの面からしても大事なことじゃないかと思う。

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さて、人間はどうやって体の中に入ったウィルスと戦うのだろうか?

ご存知の通り、“白血球”がウィルスを排除しようと戦ってくれるのだ。

一般的に“免疫”と言われるものだ。

白血球は侵入者に対して、一人(?)で戦うが無理と判断したら、仲間を呼んで戦うのだ。

この仲間を呼ぶ物質のことを“サイトカイン”と言う。

医学的に解説したらこうなるようだ・・・。

「サイトカインとは、主に免疫系細胞から分泌されるタンパク質で、標的細胞表面に存在する特異的受容体を介して極めて微量で生理作用を示し、細胞間の情報伝達を担う。ホルモンとの明確な区別はないが、一般的にホルモンのように特定の分泌臓器から産生されるわけではなく、比較的局所で作用することが多い。」

しかし、このサイトカインだが、相手が強大な敵であると認識したら、それに負けじと生成されていく。

そして、残念なことに、自身の身体を痛めつけてまで、出し続けると言う弱点があるのだ。

今回の新型コロナウィルスが、正に、この強大な敵なのだ!

私は当 Blog で、幾度となく、体内に侵入してきた化学物質のことを話している。

覚えているだろうか?

口や鼻から吸い込まれた化学物質は、肺に入った後は、ダイレクトに血管を通り、身体の各所に運ばれて行き、吸着しやすい場所に落ち着くと言う話をしてきた。

ウィルスも同じである・・・。

侵入したウィルスは肺から血管を通って、全身の血管や臓器を駆け巡るのである。

その侵入したウィルスを撃破しようと白血球が活躍し、サイトカインが大量に生成され、引いては、全身、傷だらけになってしまう恐れもあるのだ。

血中に炎症性サイトカイン等が大量に放出され、悪寒、悪心、倦怠感、頭痛、発熱、頻脈、血圧変動等の種々の症状が起こる。

この重症の病態を、“サイトカインストーム(英: Cytokine storm )”“サイトカインカスケード(英: Cytokine cascade )”、あるいは、“高サイトカイン血症”と言う。

そして、様々な臓器で“サイトカインストーム”を引き起こしたらどうだろう・・・?

今回の勝武士さんの死因である“多臓器不全”は、この“サイトカインストーム”によるものなのだ。

私は地方自治体の発表を細かに追いかけているが、多臓器不全で亡くなられた方を散見する。

ただし、感染症で亡くられた方の場合、病理解剖を積極的に行うとは考えられないので、表面に上がってこないだけで、数多くの方で、各臓器が不全状態に陥っていたことは想像に難くない。

もし、勝武士さんのように死に至らなかったとしても、様々な臓器はダメージを受けていることも・・・。

例えば、肺の場合は、息を吸うことさえ困難となり、血中の酸素が不足し、呼吸不全と言われる状態が慢性化しないとも限らない。

例えば、心臓の場合は、少し歩くだけで息が切れる状態を一般に心不全と言うが、この後遺症が残らないとも限らない。

例えば、腎臓の場合は、機能が低下し血液中の老廃物が排出されなくなるとさまざまな症状が出現し、そのうち血液透析が必要とるかもしれない。

例えば、肝臓の場合は、機能がある程度悪くなっても処理はできるが、あまりにも悪くなると老廃物の処理ができなくなり、黄疸(おうだん)などの症状が表れ、肝不全となるかもしれない。

例えば、大腸の場合は、水分の吸収が不十分となり、便が泥状もしくは水様になったり、排便回数が増える可能性もある。

例えば、小腸の場合は、食べたものの消化と吸収を殆ど担うので、慢性的な栄養不足に陥らないとも限らない。

例えば、脳の場合は、脳梗塞から、運動障害や麻痺、言語障害、痺れ等の感覚障害が後遺症としても残るかもしれない。

如何だろうか?

獨協医科大学のウィルス学専門の増田道明教授はこう語っている。

「高齢者は動脈硬化があったり、肥満の人は血中の脂質が多かったりで、血栓ができやすいという。

糖尿病患者なども既に血管にダメージを受けている人が多いらしい。

こうしたリスク・基礎疾患のある人が比較的重症化しやすいのはやはりこのウィルスが血管を標的にするからだと考えると説明がつくのかもしれない。

一方で子供や若者に感染しても無症状や軽症が多いのは血管が綺麗で血栓ができにくいからとも考えられるという。」

感染し発症してしまった人は、これから、色んな合併症の可能性が待ち受けているかもしれない・・・。

若くて、症状が出ないと言っても、もしかしたら、知らず知らずのうちに、新型コロナウィルスの攻撃を受け、後々、後遺症として出てくるとしたら・・・?

未だに・・・。

マスク無しで、街中を歩く人・・・。

マスク無しで、ジョギングする人・・・。

マスク無しで、サイクリングバイクで疾走する人・・・。

パチンコ屋に行く人・・・。

想像力の欠如としか言いようがない・・・。

自分の身を守るがごとく、他人の命を守らねばならない時期に、良い大人が何をしているのだろうか?

次回へ・・・。