総括として、東日本大震災の被災地に抗酸化で何が出来るということを考える前に、被災地の産業構造について考えてみたい。
Web検索していて、農林中金総合研究所の理事研究員である渡部喜智氏の『被災地の社会・産業構造と自治体財政』という復興に向けてのレポートを見つけた。
http://www.nochuri.co.jp/genba/pdf/otr110620r5.pdf
これを読むと、被災地が震災前にどういう産業構造でどういう経済構成だったのかがおぼろげながら想像がつく。
まず、東北4県の被災地44市町村の人口を見ると、“政令指定都市”の仙台市は100万人超、人口30万人以上の“中核市”はいわき市のみ、人口20万人以上の“特例市”も八戸市のみという人口分布である
これに次ぐのが、石巻市が約16万人だが、それ以外の市はほとんどが5万前後である。
町では1~2万人、村では5千人前後という人口である。
レポート内にある図1の主な被災地の市町村の人口変化と高齢化の動向を見ていただきたい。
44市町村中、過去20年間の人口減少率が▲10%を超すところが24市町村あり、▲20%を超すところも8市町村存在し、また、大幅な人口減少の結果、65歳以上人口比率が3割を超す市町村が17あるということらしい。
もちろん、仙台市のベッドタウン化により、その周辺市町では人口が増加し、高齢化も抑えられている。
逆に言えば、都市近郊に人口が集中すれば、その反面、地方で人口が減少し高齢化が進むということである。
次に、図2の一次産業従事者比率を見て欲しい。
第一次産業就業者の全国平均は4.8%ということだが、被災地の市町村平均は5.9%で、10%以上のところが44市町村中26にのぼっている。
如何に被災地の産業構成が、第一次産業に重きを置かれているかが窺い知れる。
次に、図3の主な被災地市町村の食料品等製造業従業者比率を見て欲しい。
これは、食料品等製造業従業者を全事業所従事者で割った数字だが、岩手・宮城が如何に、地場産業として、漁業と水産産加工などの食料品等製造業が強い相互依存の関係のもとで成り立っているかがわかる。
ついでに、平成23年3月1日に経済産業省経済産業政策局調査統計部から出された工業統計調査『我が国の工業~変化を続ける製造業~』で両県を見てみると、やはり、食料品が県の主産業になっている。
岩手県
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/wagakuni/2011/pdf/ken3.pdf
宮城県
http://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kougyo/wagakuni/2011/pdf/ken4.pdf
つまり、農業・漁業・林業の第一次産業を立て直さなければ、被災地の復興はありえないということである。
しかし、前述したようにほとんどの被災地が、人口減少・高齢化という問題を抱えている。
人口減少・高齢化という現象が何を意味するかというと、震災以前から、税収不足による財政逼迫という現実的な問題が大きくのしかかっていたということである。
最後に、図4の図被災地自治体の財政状況を見て欲しい。
東北電力女川原子力発電所を抱える女川町、東京電力広野火力発電所を抱える広野町、東京電力福島第二原子力発電所を抱える楢葉町・大熊町の4町は群を抜いて財政力指数が高い。
以前のブログでも書いたが、エネルギー利権の恩恵を如何に受けているかが一目瞭然である。
・・・とは言え、そこに住んでいて被災されている住民は、いつ自分たちが住んでいた町に戻れるかさえわからない。
また、仙台・仙台近郊都市、八戸市等を除く、それ以外の被災地のほとんどが、全国市町村平均:0.55と比べても低いところが多い。
自主財源に乏しく、地方交付税に財源の多くを依存している。
更に、今回の東日本大震災によって、田畑が津波により塩害を受けた農家、船が流された漁師、工場を流された水産加工業者、etc・・・と、更なる地域の地盤沈下が想像に難くない。
今回は、産業構造、人口分布及び財政事情という視点から被災地を捉えてみた。
次回は、具体的にこんなことが抗酸化で出来ないだろうかということを提案してみたい。