前回、マイナスイオンの起源とそれが身体に良いとすることに何ら根拠のない物であることを書かせていただいた。
今回は、如何にしてマイナスイオンが我々の生活に浸透していったか、そして、マイナスイオンなる物が本当は危ないと言うことを知っていただきたいと思う。
どこが一番最初なのか今となっては不明だが、マイナスイオン商品は、90年中頃には出ていたらしい。
では、その火付け役はというと、データ捏造で番組打ち切りになった○○○○大辞典である。
この情報番組は、盛んにマイナスイオンを特集で取り上げ、ドロドロした血液がマイナスイオンによってサラサラした血液になる。
そうすることによって健康になる等々・・・
色んなデータを捏造して一大マイナスイオンブームを作り上げた
そして、これに目を付けたのが、不況の波にどっぷり浸かっていた家電メーカーである。
当時、家電メーカーがどのような状況だったかという一つの象徴がある。
2002年9月、1956年から46年間続いたTBSの看板ホームドラマ枠であった一社スポンサーの「東芝日曜劇場」から完全撤退し、東芝の名前が外された。
東芝は、2002年3月期の営業損益が1,136億円となり、10,000人規模の大リストラも断行していた。
他のメーカーはどうかというと、松下電器産業(現パナソニック)は、その前年度の2001年度には約4200億円の赤字を出している。
家電不況を打開したい家電メーカーは、このマイナスイオンブームを利用してエアコン、空気清浄機、ヘアドライヤー、扇風機、冷蔵庫、etc・・・と、次々と商品を生み出していくのである。
では、どのようにして家電メーカー各社は、この意味不明なマイナスイオンなるものを、発生するようにしたのかというと、各社それぞれで以下のように解説されている。
・電極によって放電を利用する方法。
・電子を放出する方法。
・水を破砕させる方法。
・放射線、紫外線による方法。
・天然鉱石の放射線を利用する方法。
ここで、放電にしても、電子放出にしても、紫外線にしても、放射線にしても、高エネルギープロセスが必要になる。
高エネルギープロセスを説明すると、素粒子の話までしなくてはいけなくなり、余り難しくなるので、簡単に解説すると、高いエネルギーの粒子が起こす衝突反応を必要とすると理解していただきたい。
しかし、高エネルギープロセスには、副産物としてオゾンが生成される。
オゾンとは活性酸素である。
「活性酸素が体内にあるとガン化して大変だ」と騒いでいるのに、身体の外であれば問題がないとでも言いたいのであろうか?
・・・と言っても、活性酸素は人間の体内では、1日の100億個近くが作られ、その酸化力を活かして、外敵の侵入阻止に使われているのであるから、必要不可欠な物なのである。
ただ、それらの作用に使われなかった余分な活性酸素が人間の身体に悪さをするわけである。
これらも40歳くらいまでは、体内のSOD酵素が働き、余分な活性酸素を消去してくれるから大丈夫なのであるが、最近は、このSOD酵素が低年齢でも不足して、様々な病気の要因になって来ているから困ったものである。
そういう環境であるにも関わらず、わざわざマイナスイオン発生家電を使って活性酸素を充満させ、酸化環境を室内に作ることが本当に健康に良いのだろうか?
オゾンに関する法律は明確に決まってはいないようだが、目安としての安全基準は以下のようになっている。
0.06ppm・・・公害対策基本法で定められているオキシダント環境基準。
0.1ppm・・・日本産業衛生協議会が勧告する作業環境基準濃度。
マイナスイオンドライヤーなる物があるが、これは明らかに臭いがするらしい。
オゾンの臭いを感じるのは、0.04ppm~0.06ppm位で人は異臭と感じるようだ。
日本産業衛生協議会が勧告する作業環境基準濃度の0.1ppmになると咳が出る、涙がでる、鼻が痛い等の症状が出るらしい。
ただ、これはあくまで室内空間の濃度であり、ダイレクトに髪あるいは顔に浴びる基準ではない。
本当に毎日そのドライヤーで髪を乾かし続けて大丈夫なのだろうか?
次に、先に話したレナード効果の応用とも言える水を破砕させる方法だが、これは加湿器等の良く使われるようである。
レナード効果に関しては、前項で述べているのであえて触れるまでもないと思う。
最後に、天然鉱石の放射線を利用する方法であるが、トルマリン等が有名であるが、これらの天然鉱石は、外部より何らかのエネルギーを与えないと何も変化しない。
それにも関わらず、マイナスイオンが発生するの、遠赤外線効果で身体に良いともてはやされている。不思議でならない。
本当に、何もしないで遠赤外線効果やいわれいるマイナスイオン効果(?)があるのであれば、生肉をその上に置けば焼けたり、肉が長持ちしたりするのではなかろうか?
以上、長々とマイナスイオンについて解説してきたが、このマイナスイオンブームも2003年に景品表示法が改正され、商品の表示に関して具体的・合理的根拠が求められるようになり、家電メーカーも抗うことが出来ず、段々とトーンダウンしてブームも下火になってきたのである。
ただ、今現在でも、マイナスイオンと表示して、商品を販売したり、かつてのマスコミの取り上げた影響を未だに信じて、これらを信奉する人も少なからずいる。
抗酸化工法を模倣した工法に携わる方たちは、抗酸化のメカニズムを理解できないため、マイナスイオンで説明している人間が多い。
少なくとも会田総研に関わる人たちの口から、マイナスイオンなる言葉は出ないことを切に望む。
また、2003年9月に、国民生活センターが、“マイナスイオンを謳った商品の実態-消費者及び事業者へのアンケート 学識経験者の意見を踏まえて-というレポートを出し、マイナスイオンを冠した商品すべてに科学的に健康効果が実証されているわけではないと結論づけている。
今後、マイナスイオンなる言葉を平気で使用する企業や人間が信頼に値するかどうかは皆さんで判断して欲しい。