前回、体内には“消化酵素”と“代謝酵素”という二つの潜在酵素があると言うことを書いた。
実は、酵素にはもう一つ“食物酵素”というものがある。
酵素栄養学を唱えるエドワード・ハウエルは、以下のように言っている。
○“食物酵素”の多い食事をすると、食物酵素が食品の消化を助け、人体自身の消化酵素の分泌が少なくてすむために、潜在酵素の消費を抑えることが出来る。
○さらに、酵素には「生命エネルギー」が含まれているとし、酵素の多い食物を取ることは病気を予防し寿命を延ばすエネルギーの補充の効果がある。
果物、野菜、魚、肉、天然のものであれば、必ずその食物独自の食物酵素は含まれている。
こういうと、「じゃあ、やっぱりバランス良く食べれば良いんだ」と多くの人は考えるだろう。
しかし、酵素は熱に弱く60度前後でほぼ変性し活性を失う(失活)するのである。
つまり、焼く・煮る・蒸す・炊く・揚げるという調理行為は食物酵素を失活させる原因になるのである。
1920年代、フランスのフランシス・ポテンジャー博士が猫を使って興味深い実験を行っている。
博士は、猫を900匹飼い、A群とB群の2つに分けて10年3世代に渡る実験を行なった。
A群は、牛肉、生牛乳で育て、B群は、加熱した肉と殺菌した牛乳で育てのである。
A群の猫は、3世代とも病気もせず健康。
それに比べて、B群の猫は、非常に病弱となり、歯も抜け、人間と同じような生活習慣病が多発し、ガン、糖尿病、高血圧、歯周病、甲状腺疾患に罹ったそうである。
さらに、三世代目には、奇形も生まれ、不妊症になったり、子供を生めなくなったそうである。
また、B群の猫の糞尿をとって畑にまいたら、畑の野菜は枯れたそうである。
前述のエドワード・ハウエルのラットの実験では、加熱した餌を与え続けたラットの脳みそは1.38gで、生の餌を与え続けたラットの脳みそ2.78gと半分以下になったらしい。
こういう風に書くと、皆、慌てて肉も野菜も生で食べようと思うかもしれない。
あるいは、最近流行の酵素サプリメントを摂ろうとか考える人もいるかもしれない。
ちなみにYahooショッピングで検索したら酵素サプリメントが858件もヒットした。
様々なサプリメントが世にはあるが、体内に取り込まれた食物は形を変えて、身体全体に散らばっていくのである。
何故、ピンポイントにその症状にだけ効くサプリメントが出来るのだろう?
また、今回、酵素栄養学に興味を持って、色々調べたが、結局はサプリを如何に売ろうとしている所が多いので辟易してしまった。
酵素は熱に弱いので、加熱せず、生で食べよう。
足りない分はサプリメントで補給しようと言うような感じである。
ここで不思議なのは、酵素は熱に弱いと言っておきながら、酵素はpHに影響されると言うことには触れないのである。
酵素の中には、好酸性のものもあれば好アルカリ性のものもある。
しかし、我々が食べたものは、必ず胃を通る。
胃にはpH1~2の胃酸があるのである。
酵素が変性しないわけがない。
また、酵素栄養学では、盛んに加熱調理を行わないように言う。
しかし、魚にしても肉にしても、様々な菌を持っており、生食では逆に危ない場合もある。
野菜や果実にしても、土のバランスが取れていなければ何ら価値がない。
「草食動物も肉食動物もバクテリアやミネラルを目的にして餌を食べている。」と、再三くり返し言ってきたが、人間もバクテリアを体内に入れ様々な酵素反応を起こすために食べているのである。
最近は工場ファームなるものが脚光を浴びているが、あれを食べても何ら意味はない。
野菜・果実を食べるためでなく、土から野菜・果実が吸い上げたバクテリアを摂取するためだから工場ファームでできたものを食べても消化酵素の浪費にしかならない。
野菜・果実も農薬を使用すれば、害虫が付かなくて良いと思っているのだろうが、バクテリアも同様に死んでしまうから食べても意味がない。
家畜も同じように抗生物質や成長ホルモンを与えられ、配合飼料を食べているのだから、その肉を食べても意味はない。
では、何を食べると一番良いかというと、バクテリアを豊富に含んだ食べ物=発酵食品である。
幸い、日本人は古くから発酵を利用した食文化が根付いている。
味噌、醤油等の調味料に納豆や漬物、そして日本酒。
味噌や醤油は我々の生活には欠かせないものである。
しかし、残念ながら、この食文化も現在のハイテクで作られた味噌や醤油では意味がない。
次回、いきいきペールで作る発酵食品の作り方等を書きたいと思う。