「真実の口」2,085 ‟がん”という病 ㉜~緩和ケア編(その1)~

前回の続き・・・。

《緩和ケア》

1⃣ ‟がん”と言われたときから始まる‟緩和ケア”

●  ‟がん”になると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれており、‟緩和ケア”は、‟がん”に伴う心と体のつらさを和らげることが出来る。

【がんに伴う心と体のつらさの例】

◆ 気持ちのこと
・不安で眠れない
・何もやる気が起きない

◆ 社会的なこと
・働きたいけど、働けない
・子供の世話が出来ない

◆治療によって生じること
・しびれる
・食べられない
・外見が変わる

◆人生に関すること
・生きる意味
・将来への不安

*日本緩和医療学会「 WHO (世界保健機関)による緩和ケアの定義( 2002 )」

‟緩和ケア”とは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者とその家族のクオリティ・オブ・ライフ( QOL :生活の質)を、痛みやその他の身体的・心理社会的・スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

●  ‟がん”と診断されると落ち込むこともある。
● 診断を受けたときには、すでに痛みや息苦しさなどの症状がある場合もある。
‟緩和ケア”は、そのような落ち込みや症状に対して、‟がん”と診断されたときから始まり、‟緩和ケア”は、‟がん”が進行してから始めるものではない。
● ‟がん”の治療とともに、つらさを感じるときにはいつでも受けることができる。

2⃣ ‟緩和ケア”を支えるチーム

‟緩和ケア”は、基本的には担当の医師や看護師から受けるが、必要に応じてさまざまな職種の人がチーム(‟緩和ケア”チーム)となって支えてくれる。

【さまざまな専門職からなる緩和ケアチームの例】

緩和ケアチームの例

3⃣ ‟緩和ケア”を受ける場

‟緩和ケア”を受ける場は、大きく通院、入院、在宅療養の 3 つに分けられる。

・全国のがん診療連携拠点病院であればどこでも受けることができる。
・病院では、通院でも入院でも受けることができる。
・自宅や介護施設などでも受けることができる。
・がん診療連携拠点病院以外の病院でも受けることができる場合がある。

ⅰ ) 通院

● 通院での‟緩和ケア”は、‟がん”の治療のために通っている外来や、‟緩和ケア”外来で受けることができる。

( 1 ) がんの治療のために通っている外来

・‟がん”の治療のために通っている外来では、‟がん”や‟がん”の治療によるつらさを和らげるために、担当の医師や看護師から‟緩和ケア”を受け、必要に応じて、他の専門職による支援を受けることもある。

( 2 ) ‟緩和ケア”外来

‟緩和ケア”外来では、‟緩和ケア”の専門的な知識をもつ医師や看護師から‟緩和ケア”を受ける。
・入院中に‟緩和ケア”を受けていた場合には、退院後引き続き‟緩和ケア”外来を受診することもある。
・施設によっては‟緩和ケア”外来がないこともあり、その場合には、これまでに治療を受けたことがない施設の‟緩和ケア”外来を受診することもできる。
・本人や家族の希望によって受診することもできるので、担当の医師に相談して決める。

ⅱ ) 入院

● 入院での‟緩和ケア”は、‟がん”の治療のために入院する病棟(一般病棟)や、‟緩和ケア”病棟で受けることができる。

( 1 ) ‟がん”の治療のために入院する病棟

・‟がん”の治療のために入院する病棟では、‟がん”や‟がん”の治療によるつらさを和らげるために、担当の医師や看護師から‟緩和ケア”を受け、必要に応じて、他の専門職による支援を受けることもある。

( 2 ) ‟緩和ケア”病棟

‟緩和ケア”病棟は、‟緩和ケア”に特化した病棟で、‟がん”を治すことを目標にした治療(手術薬物療法放射線治療など)ではなく、‟がん”の進行などに伴う体や心のつらさに対する専門的な‟緩和ケア”を受ける。

‟緩和ケア”病棟は、一般病棟と異なり、できる限り日常生活に近い暮らしができるように作られた病棟で、共用のキッチンなどが設けられている場合もある。

・また、茶話会や季節のイベントなどが催されることが多く、家族などの親しい人とともにイベントを楽しむことができる。

・入院での‟緩和ケア”により体や心のつらさが和らいだら、退院し自宅に帰ることもできる。

‟緩和ケア”病棟には、病院内にある場合と、‟緩和ケア”のみを行う独立型の施設の場合(ホスピス緩和ケア病院)がある。

・地域によって、‟緩和ケア”病棟のある病院の数は異なる。

‟緩和ケア”病棟に入院するために待機している人がいる場合もあるため、早めに担当の医師に相談した方が良い。

・‟がん”診療連携拠点病院などの‟がん”相談支援センターでも、‟緩和ケア”病棟の情報を得ることができる。

〔参考〕日本ホスピス緩和ケア協会・緩和ケア病棟入院料届出受理施設一覧( PDF )

・厚生労働省から‟緩和ケア”病棟として承認を受けた施設の場合、医療費は定額となっている。

・その他に、食費などの医療費以外の費用がかかる。

・医療費が一定額以上になる場合には、高額療養費制度を利用して、自己負担限度額までの支払いとすることができる。

・ただし、病院の体制などにより部屋代などの追加の料金が必要になることがある。

‟緩和ケア”病棟の入院に必要な費用については、事前にソーシャルワーカーなどに相談した方が良い。

( 3 ) ホスピス

‟緩和ケア”病棟と同じような意味で用いられている言葉としてホスピスがある。

‟緩和ケア”病棟は、つらさをコントロールして、できる限り普段通りに生活することを主な目標としている一方、ホスピスは最期まで希望通りに生きることを主な目標としている。

・宗教家やボランティアなどがチームの一員として参加している施設もある。

・国が定めた施設基準を満たした施設であれば、緩和ケア病棟であってもホスピスであっても提供される医療やケアの内容、費用に大きな差はない。

・施設によって入所できる条件が異なる。

ⅲ ) 在宅療養(自宅でできる‟緩和ケア”)

・安心してリラックスできる住み慣れた自宅では、ご本人の生活のペースに合わせながら病院と同じような‟緩和ケア”を受けることができる。

在宅療養を受けるには、訪問診療(※注 1 )訪問看護訪問介護訪問入浴などの在宅でのサービスを整える必要がある。

(※注 1 ) 訪問診療とは、医師の定期的な訪問により行われる診療のことで、必要なときにだけ行われる往診とは異なる。

・‟がん”の治療で通院または入院している場合には、担当の医師が訪問診療に向けて紹介状を作成し、病院の職員が訪問診療医訪問看護ステーションと連絡を取り合って調整してくれる。

・一人暮らしの場合にも、これらのサービスを整えることでこれまでに近い生活を送ることができるようになる。

・自宅で具合が悪くなったときには、訪問診療医と相談して、病院に入院することもできる。

・また、家族などの介護者が体調を崩したり、介護による肉体的・精神的な負担を感じたりする場合には、介護者の休息や気分転換のために、短期の入院(レスパイト入院)を受けいれている施設に入院することもできる。

・安心して自宅で‟緩和ケア”を受けるために、訪問診療医訪問看護師と、療養の目的や希望する生活について十分に話し合った方が良い。

・緊急時の対応方法や受け入れ先についても、あらかじめ確認しておくことが大切である。

・介護施設などに入所している場合でも、訪問診療による‟緩和ケア”を受けることができる場合がある。

・自宅で受ける‟緩和ケア”には公的医療保険が適用され、緩和ケア病棟に入院するよりも費用が安くなることがある。

・また、介護保険が適用されると、介護用ベッドなどの介護用品や、訪問介護、入浴サービスなどを利用することができる。

・一方で、医師や看護師が訪問するための交通費など、保険適用外の費用も必要となることがあるため、詳細はソーシャルワーカーケアマネジャー訪問看護師に聞いてみた方が良い。

次回へ・・・。