前回の続き・・・。
《がん治療による様々な症状》
【 全身に起こる症状】
8⃣ 血小板減少
( 1 ) 血小板減少について
● 血小板は血液に含まれる成分の一種で、血管の傷ついた部位に集まってかたまりをつくり、止血する作用がある。
● 血小板の数が減少すると出血が起こりやすく、血が止まりにくくなる。
● 主な症状としては、以下のようなものがある。
・青あざができやすい
・手足に点状出血(細かい点状の皮下出血)がみられる
・鼻血が出る
・血尿、血便がみられる
・月経量が多くなる
・歯ぐきや口の中の粘膜からの出血がみられる
( 2 ) 原因
● ‟がん”の治療や‟がん”自体の影響によって、骨髄にある造血幹細胞がダメージを受けると、骨髄抑制が起こり、血小板の数が減少する。
● ‟がん”の治療では、細胞障害性抗がん薬や多くの分子標的薬による骨髄抑制の副作用が原因となることがあり、また、‟放射線治療”で、骨髄が多く含まれる骨盤、胸骨、椎体ついたいなどに放射線をあてることが原因となることがある。
● ‟がん”自体の影響としては、血液の‟がん”や‟がん”が骨髄に浸潤することが原因となって、血小板が十分につくられなくなることがあり、また、‟がん”が引き金となって、播種性血管内凝固症候群( DIC )といわれる病気になることにより、血小板が減少することがある。
( 3 ) 血小板減少が起きたとき
● 血小板の数が少ないときは、少しの刺激でもあおあざができやすくなったり、小さな傷でも血が止まりにくくなったりするので、出血しないように心がける。
● 出血したときの対処法については、以下のようなものがある。
・清潔なタオルやガーゼで出血が止まるまで直接圧迫し、また、冷却まくらや氷水を入れたビニール袋で冷やしすぎない程度に冷やす。
・鼻血が出たときは、血管の収縮を促すため氷で冷やし、小鼻を指で 5 分程度圧迫する。
・出血が止まるまでは安静にする。
● 血小板減少による出血は簡単に止まらないことがあり、出血が止まらない場合には、すぐに医師や看護師に連絡する。
● 出血の状態や血液検査の結果によっては、血小板の輸血を行うことがある。
( 4 ) 本人や周囲の人が出来る工夫
● 日常生活の中で出血しないように心がけ、出血がないか注意することが大切であり、また、血小板の数が少ないときの日常生活の注意点を、医師に確認してみる。
~転倒や外傷、打撲に注意する~
・食事の前や排せつ後、外出後は石けんを使って丁寧に手を洗い、水でしっかり流すことが大切である。
・ペットのトイレの世話やガーデニングでは手袋を使い、終わった後は手を洗う。
~体を清潔に保つ~
・転倒や外傷、打撲に注意して、激しい運動は避けるようにする。
・カーペットや敷居などの段差につまずいて転ぶことがあり、段差をなくす、壁などを伝い歩きするなどが、防止につながることがある。
~切り傷や擦り傷をつくらないようにする~
・手袋や靴下を着用したり、ひげそりは電気カミソリを使ったりするなど、切り傷をつくらないような工夫をする。
・擦り傷をつくらないように皮膚を強くかいたり、こすったりしないことも大切である。
~歯磨きや鼻をかむときはやさしく行う~
・歯磨きは、柔らかい歯ブラシを使用してやさしく行う。
・鼻をかむときも力を入れずにやさしくかむ。
~排便時、強くいきみすぎないように、便通を整える~
・排便時、強くいきみすぎると出血しやすくなる。
・便通を整えて快適な排便ができるように心がける。
~皮膚や口の中、便や尿の状態を観察し、出血がないか注意する~
・皮膚や口の中、便や尿の状態を観察し、出血がないか注意することが大切である。
( 5 ) こんなときは相談する
● 特に刺激を与えていないのに口の中の粘膜から出血する場合や、出血が止まらない場合、血便が出た場合などは、すぐに医師や看護師に連絡する。
● 血栓予防薬や一部の解熱鎮痛剤には、血小板の作用を抑制するものがある。
● 出血を悪化させる薬剤もあるので、‟がん”の治療以外の薬を処方されている場合や飲む可能性がある場合には、あらかじめ医師や薬剤師に相談しておくことが大切である。
次回へ・・・。