前回の続き・・・。
前回取り上げたテレ朝ニュースだが、偶然にも、私はその番組を見ていた。
興味深い話だったので、番組で紹介された内容をもう少し取り上げてみる。
番組にリモート出演されていた東京女子医科大学感染症科・菊池賢教授は、“劇症型溶連菌”に感染しないために、以下のようなことを注意するように語っていた。
菊池教授:
「(最も注意するのは)劇症型溶連菌の感染経路です。
傷口から溶連菌が体深くに侵入して、急速に増殖します。
接触感染などでも侵入します。
ただ、半数以上が感染経路不明です。
基本的な予防法は、手洗い、アルコール消毒などです。」
その予防法として以下の点を取り上げていた。
『傷を作らない』 夏の服装が重要!
☞ 半袖・短パン・サンダルの人は要注意。
☞ 靴下をはいた方がよい。
そして、傷ができてしまった場合、すぐに洗浄・消毒し、ガーゼや絆創膏などで処置することが必要。
更に、驚きなのは、菊池教授が診た患者のうち、 「約 8 割が水虫を持っていた」という事実である。
この情報は、どのニュースを見ても、余り取り上げられてないので重要なポイントだと思う。
水虫とは、人の皮膚の角質を栄養として生きるカビ(真菌)の感染症である。
これは、白癬(はくせん)菌と呼ばれる菌が原因になっているため、医学用語では足白癬(あしはくせん)と呼ばれる。
状態としては、皮膚の外側の角層がむけてぼろぼろになったり、湿ってジュクジュクした状態になる。
つまり、この状況は、常に、傷口をさらしているのと同じ状況ということになるらしい。
“劇症型溶連菌”の侵入経路が常に存在するということになる。
“水虫はうつる”ということを聞いたことがあると思う。
白癬菌の感染は、白癬菌のついた人・動物の皮膚や白癬菌が付着したものに直接触れることで起こり得る。
例えば、以下のような場面で感染が起こりやすくなる。
☞ 同居人が白癬菌を散布している
☞ プール、風呂場の脱衣所を裸足で歩く
☞ 格闘技やスポーツでほかの人の患部と接触してしまう
☞ 猫などペットと密に触れる など
また、次の条件に当てはまる場合は、足白癬にかかりやすく、かつ悪化しやすい傾向があるらしい。
☞ 足の指が太く、足指同士が接触しやすい
☞ 汗をかきやすく、靴の中の湿度が高い
安易に市販薬で水虫を治そうとして、完全に治りきらない状態で放っておくと、“劇症型溶連菌”の餌食になるかもしれない・・・( ;´Д`)ヒィィィィィィー!
また、これは番組では取り上げていなかったのだが、今年に入り、“劇症型溶連菌”が急拡大したのはインバウンドの影響も大きいのではないだろうか?
2022 年末から 2023 年初頭に英国、フランス、アイルランド、オランダ、スウェーデンとヨーロッパで感染拡大が確認されている。
また、アメリカでも 2022 年末に感染拡大が確認されている。
欧米人には、日本の裸で入るという温泉文化が受け入れられない方が大多数だが、日本の文化を体験したいという方も少なからずいる。
しかし、残念ながら、温泉や先頭に入浴の仕方を英語等で書いていても、我々みたいに慣れ親しんだ習慣とは違ってくるのは当然である。
温泉だけではなく、ホテルのプール等を利用する場合も多いだろう。
海外から持ち込まれた“劇症型溶連菌”が温泉やプールで拡大していないとも限らないのでは・・・?
菊池教授は、水虫以外にも“虫刺され”にも注意が必要としている。
菊池教授:
「掻くことで傷ができ、菌が入る恐れがあるので、薬を塗って、傷を早めに治す必要があります。
そして、『ささくれ』『あかぎれ』にも注意が必要です。
乾燥による傷ができないように保湿することが重要です。」
以下は、“劇症型溶連菌”発症のチェックポイントである。
1 つでも当てはまると要注意!!!
☞ 39℃ 以上の発熱
☞ 時間単位での腫れの広がり(傷の周りをペンで囲むと分かりやすく、急速に腫れが広がると危険)
☞ 意識障害(意識がもうろうとする、受け答えがおかしい)
更に、菊池教授は、感染が疑わしかった場合のポイントも教えてくれた。
菊池教授:
「『劇症型溶連菌』は、早期対応がカギ。
疑わしい症状が出たら、一刻も早く治療しなければいけないので、救急車を呼んでほしい。」
〈急車を呼ばない場合〉
☞ 内科より外科・皮膚科を受診する
☞ 複数の症状が出ているなどかなり深刻な場合は、集中治療室のある病院を受診する
〈診察で医師に伝えるべきポイント〉
☞ 発熱などの症状だけでなく、水虫や床ずれ、靴擦れ、深爪、ささいな傷などについても報告する
☞ 腫れの進行程度は、具体的に報告する
☞ 上図のように患部に丸を付けてから何時間経過などの情報は具体的で医師に伝わりやすい
最後に、番組視聴者から質問への回答も参考になると思う。
Q. プールや入浴施設などから、劇症型溶連菌に感染してしまうことはある?
菊池教授:
「劇症型溶連菌は、水の中にはいない。ただ、プールや温泉施設の共有部分に触れることが感染リスクにつながることもある。」
Q. 庭いじりなどしていて、土から感染することはない?
菊池教授:
「劇症型溶連菌は、土の中にはいない。」
Q. 数年前、溶連菌に感染し、のどの激しい痛み・高熱が出た。今回の人食いバクテリアに免疫を持っていると言える?
菊池教授:
「溶連菌と劇症型溶連菌は別の菌なので、免疫を持っているとは言えない。」
Q. 発症して救急車呼ぶ時、なんと言って説明したらいい?
菊池教授:
「腫れが広がる早さや体温などの症状を、なるべく具体的に説明する。」
以上が番組で放送されたポイントである。
ここまで、“劇症型溶連菌感染症”いついて、寄稿してきたが、一応、最後に朗報をお届けする。
4 月 30 日、神戸大学は、大学院工学研究科の森田健太助教や丸山達生教授らの研究グループが、 Mn007 という分子の塊が溶連菌の感染を抑制することを発見したと発表した。
溶連菌は DNA を分解する酵素を分泌し、ヒトの白血球が持つ感染防御システムを破壊するが、 Mn007 が水の中で塊になったものを溶連菌と混ぜ合わせると、その酵素の働きを阻害することができるらしい。
Mn007 という低分子化合物は筋ジストロフィ治療薬の候補化合物として 2015 年に報告されたものである。
007 ・・・。
期待が持てそうなコードネームだ。