「真実の口」2,229 未病④

前回の続き・・・。

未病の段階で異常を見つけ健康寿命を延ばすことに取り組んでいる医師の話がテレビ静岡で取り上げられていたので紹介する。

その医師とは、静岡県沼津市・西島病院に勤める森谷圭佑医師である。

専門は脳神経外科で、脳腫瘍や血管障害などの手術数は年間 130 件を数えるという。

地域医療に携わる森谷医師は“未病”への取り組みについて「生産年齢人口( 15 ~ 64 歳)となっているが、その人たちが 75 歳まで元気にいられるように我々ができることがある。」と話す。

森谷医師がいま“未病”として注目しているのが血管にこぶが出来る脳動脈瘤だそうだ。

こぶが破裂すれば「くも膜下出血」につながる注意が必要な病状である。

森谷医師:

「くも膜下出血は 3 人に 1 人が亡くなり、 3 人に 1 人が後遺症になり、ちゃんと元の生活に戻れるのは 3 人に 1 人と言われている。それだけ怖い病気なので、あらかじめそういった人たちを減らす悲しい思いをさせない方向に動いていきたい。」

ただ、残念ながら、脳動脈瘤は破裂する前の段階では、患者のほとんどは無症状らしい。

このため、森谷医師は市民講座などを通して「もしかしたら病気があるかもしれない」という意識を持つよう呼びかけているそうだ。

“未病”の発想である

森谷医師:

「ほとんどの患者さんは症状がないので病院を受診しない。だから健康診断のひとつの過程として脳ドックを受けるのがいいのではないか?また、患者さんの中には脳動脈瘤とは関係のない病気や症状で受診し、偶然見つかるパターンも少なくない。」

脳動脈瘤の手術を受けることになった沼津市に住む 17 歳の女子高校生は、下校中に自転車の単独事故を起こし、ケガの検査をする中で左の側頭部に脳動脈瘤が見つかったそうだ。

女子高校生:

「聞いた時に泣いてしまった。母の年代になった時とか、 20 代とか、数年後に自分が死んでしまうのではと思ったりして、すごく悲しくて怖かった。

女子高校生の父親:

「パニックですね。脳の病気というのも家族の中で初めてだったので。動揺しかなかった。」

女子高校生の母親:

「わからないことも先生が細かく家族に教えてくれたのでわかりやすくて。安心して任せられるなと思ったので迷いもなく、手術を受けることを決めることができました。」

脳動脈瘤の破裂を防ぐには、こぶの中に血が流れ込まないようにすることが必要だそうだ。

基本的な治療法としては頭を開いて、動脈瘤自体をクリップで挟む「クリッピング術」と血管の中に直接カテーテルを入れて、動脈瘤にコイルを詰める「コイル塞栓術」の2種類があるという。

動脈瘤の術式

この女子高生の場合は、動脈瘤が頭の表面に近い位置にあることから「クリッピング術」の採用が決められた。

動脈瘤の直径は約 7mm 。

形がいびつなうえ、血管とつながっている首の部分が広く難しい手術となったが、 3 つのクリップを組み合わせてこぶを挟み、血流を止める。

17 歳という脳動脈瘤としては症例の少ない若い患者ということもあり、慎重を期し 手術は 6 時間に及んだという。

手術後。

女子高生の母親:

「もう手も足も動くことができたし、しゃべることもできたんでほっとしました。」

数日間は顔の腫れや倦怠感などに苦しんだというが、 10 日後に笑顔の退院となった。

女子高校生:

「良かったなって本当に思う。単独事故を起こさなかったら動脈瘤のことも気づかなかったし、ここから 1 年ずつ、経過観察で自分の体調を確認できる安心感があるので、安心しかない 。」

森谷医師:

「予定通り手術も行えて元気に帰ってくれたのが一番かな。」

医療ドラマではよく見るシーンだが、実際に、体験したことのある人は少ないと思う。

森谷医師:

我々も、医師任せではなく、自分の健康と向き合い、健康寿命を如何に伸ばすかを考えていかねばならない。