「真実の口」2,205 マイクロプラスチック・SeasonⅡ⑫

前回の続き・・・。

前回まで、論文を全文訳したものを寄稿していたので退屈だったかもしれない。

この論文について、専門家が解説しているものを見つけたのでダブることもあると思うが紹介する。

~マイクロプラスチックはほとんど排出される~

「マイクロプラスチックは食事や呼吸によって人の体内に入り込んでいる。

摂取量は毎日、数百個にも上るが、ほとんどが体外に排出してしまい、体内に滞留中も人にあまり影響は与えていないようだ。」

オランダのヴァーヘニング大学のアルバート・ケルマンズ教授らのチームは、魚類や軟体動物、甲殻類、水道水、ボトル水、塩、ビール、牛乳、大気の 9 つの摂取物を介して人の体内に入るマイクロプラスチックの割合(質量)は、同じように体内に入る無機物の粒子と比べると無視できるほど小さく、滞留中のマイクロプラスチックから浸出される化学物質も少なく、その影響は軽微であると推定した。

ケルマンズ教授らの研究結果は、あくまでもプラスチック汚染が「現在のレベル」に収まっている場合に有効であることに注意しなければならない。

プラスチックの海洋や大気への放出がとまらないままなら、その研究の有効性や妥当性は変更を余儀なくされるだろう。

~マイクロプラスチックが多い軟体動物とボトル水~

チームは、 8 種類の飲食物の食事と呼吸によるマイクロプラスチック曝露をシミュレーションするモデル(「プラスチックモデル」)と、食事・呼吸で摂取したマイクロプラスチックから浸出する化学物質の移動をシミュレーションするモデル(「化学物質モデル」)を使った。

データは既存の研究成果を利用し、シミュレーションによる便のマイクロプラスチック濃度は実際のデータと一致したとしている。

一日のマイクロプラスチック摂取量

プラスチックモデルによると、マイクロプラスチック( 1 ~ 5,000µm )の摂取量(中央値)は,子どもと大人それぞれ 1 日 1 人当たり 553 個( 184ng )と 883 個( 583ng )だった。

この摂取量から生体組織に蓄積するMP(1~10µm)を計算すると,1人当たり,18歳で8320個(6.4ng),70歳で50100個(40.7ng)となったとする。

また、化学物質モデルによると、化学物質総摂取からみたマイクロプラスチックの寄与度は小さいことがわかったという。

マイクロプラスチックの蓄積量

食事と呼吸によるマイクロプラスチックの摂取についてこう説明する。

シーフードでは軟体動物のマイクロプラスチック濃度がもっとも高く、 50 パーセンタイルで,組織湿重量 1g 当たり 8.07 個、 95 パーセンタイルで同 428.4 個となった。

甲殻類の約 4 倍、魚類の 40 倍にも達する。

魚類のマイクロプラスチック濃度は小さかった。

このような違いについて,チームはこう説明する。

軟体動物と甲殻類は、懸濁物食者で水中に浮遊している物質を餌にしていることから、混在するマイクロプラスチックを取り込む可能性が高い。

とくに底生性の軟体動物は、マイクロプラスチックが高濃度で堆積している海底に生息しているとした。

次に飲料などの液体のマイクロプラスチック濃度は 50 パーセンタイルで 1 ㍑当たり 125 ~ 337 個と桁数は同じだったという。

ただボトル水では中央値だと飲み物(ビールと牛乳)の 2.5 倍だった。

ビールや牛乳はガラス瓶やアルミニウム缶、紙製容器に詰められているため、ボトル水のマイクロプラスチックは主にプラスチック容器材から発生しているとチームは推測している。

さらに、食塩はマイクロプラスチック濃度が 1kg 当たり、 50 パーセンタイルと 95 パーセンタイルでそれぞれ 1,290 個と 119,000 個だった。

他方、呼吸によって摂取されるマイクロプラスチック( 1 ~ 10µm )濃度は,大気 1m3 当たり、 50 パーセンタイルで 36.3 個、 95 パーセンタイルで 19,000 個とする。

質量で見ると 95 パーセンタイルでは大気 1m3 当たり約 0.001µg であったという。

WHO(世界保健機関)は、屋外の大気汚染による PM10( 10µmより小さな粒子状物質)の摂取を年平均で大気 1m3 当たり 20µg 未満に抑えるべきだとしている。

WHOのデータ( 2018 年)によると、 PM10 のレベルは世界平均 72µg で、もっとも少ないといっても欧州の高所得国の 22µg だった。

こうしたことから、 95 パーセンタイルでさえマイクロプラスチック濃度の寄与度は PM10 全体のレベルと比べれば無視できるほど小さいとチームは結論付けた。

~マイクロプラスチック摂取は大気からが多く,魚類からは少ない~

チームは人が一生を通じてのマイクロプラスチック曝露については次のように示す。

9 つの摂取物を通した 1 日 1 人当たりのマイクロプラスチック摂取量を見積もると、中央値で、子どもで 553 個、大人で 883 個となった。

摂取の寄与度(中央値)で高かったのは大気で、質量で見ると 1 日 1 人当たり 1.07×10-7 ( 0.000000107 ) mgとなった。

大気中にあるマイクロプラスチックはサイズが 1 ~ 10µm と比較的小さい、摂取量はほかの摂取物より多い。

摂取量は、 95 パーセンタイルでは、ボトル水がもっとも多く、 1 日 1 人当たり 1.96 × 10-2 ( 0.0196 ) mgであった。

魚類の摂取量(中央値)はもっとも低く、 3.7 × 10-10 ( 0.00000000037 ) mg になったという。

次回へ・・・。