前回の続き・・・。
前回、前々回で紹介した論文の影響で、世界中で「ペットボトル飲料」を飲まない医師が続出しているという。
本当かどうか真偽のほどはわからないが・・・ァハハ・・(´゚Д゚`;)
それぞれの著者の言葉をもう一度おさらいしよう。
一番目の論文の著者であるコロンビア大学ラモント・ドハティ地球観測所准研究教授・ベイジャン・ヤン氏:
「私たちの研究によって、ペットボトル飲料 1㍑ あたりに平均 24 万個のマイクロプラスチックとナノプラスチックが含まれているとわかりました。
同じ量の海水に含まれるのは約 1 万個と言われるので、衝撃的な数字です。
ペットボトルが熱や紫外線を浴びると、化学反応を起こしてマイクロプラスチックやナノプラスチックが中身に染み出していく。
加えてキャップを開け閉めするだけでも、本体とこすれて破片が混入すると考えられます。」
二番目の論文の著者であるイタリア・カンパニア大学内科医・ジュゼッペ・パオリッソ氏:
「頸動脈内の脂肪などが硬化して大きなプラーク(塊)ができると、手術で切除するのが一般的です。
この切除片を調べたところ、約 60% からマイクロプラスチックやナノプラスチックが発見されました。
しかも術後約 3 年間の経過を観察したところ、マイクロプラスチックが含まれていた患者は脳卒中や心筋梗塞のリスクが高かったのです。
一般的にプラークが剥がれて血流に乗り、細い血管を詰まらせると脳卒中や心筋梗塞が起こる。
マイクロプラスチックやナノプラスチックは硬くなった動脈にくっつきやすいため、プラークがより大きく、剥がれやすくなるのだと思われます。」
更に一番目の論文の著者ベイジャン・ヤン氏は、以下のようにも指摘している。
「ペットボトル飲料を通じて体内に入ったマイクロプラスチックやナノプラスチックは血管に入り込みやすい。」
これが事実であれば、体のいたるところに運び込まれるということになる。
私が前回取り上げた 2019 年以降に発表された論文をいくつか紹介しよう。
以下のような論文がある。
Discovery and quantification of plastic particle pollution in human blood
☞ 人間の血液中のプラスチック粒子汚染の発見と定量化
オランダ・アムステルダム自由大学の研究チームが 2022 年 3 月に発表した研究である。
【方法】
匿名化された 22 人の健康な非絶食成人ボランティアから静脈穿刺によって採取。
血液は 10ml のヘパリン処理ガラス製バキュテナー( BD Biosciences ・英国プリマス) チューブに採取。
開発、検証、適用された分析方法は、ダブルショット熱分解ガスクロマトグラフィー/質量分析法( Py-GC/MS )を使用して、サンプル内の個々のポリマー質量濃度(粒子数ではない)を測定。
この半定量的技術は、サンプル内に存在するプラスチック粒子の熱分解生成物を定量化(つまり、破壊分析)する測定。
【結果】
献血者 22 人から採取した血液サンプルを分析し、 17 個からプラスチック粒子を発見した。
サンプルの半分には飲料ボトルによく使用される PET プラスチックが含まれ、 3 分の 1 には食品やその他の製品の包装に使用されるポリスチレンが含まれていた。
血液サンプルの 4 分の 1 には、プラスチック製の買い物袋の原料となるポリエチレンが含まれていた。
【解釈】
この研究で実証された Py-GC/MS を用いた血液中のプラスチック粒子の質量濃度としての品質管理された測定は、プラスチック粒子への人間の曝露が粒子の血流への吸収につながるという仮説を裏付ける独自のデータセットを提供する。
これは、人間が接触するプラスチック粒子の少なくとも一部は生物学的に利用可能であり、胆道、腎臓などによる除去または臓器への移行と沈着の速度は、血液への吸収速度よりも遅いことを示している。
HRA には測定された内部曝露データが必要であり、これらは経験的に収集されなければならない。
プラスチック粒子が血漿中に存在するのか、特定の細胞型によって運ばれるのか(そして、そのような細胞がプラスチック粒子を粘膜から血流へ運ぶのにどの程度関与しているのか)はまだ判明していない。
血流中に存在するプラスチック粒子が実際に免疫細胞によって運ばれているのであれば、そのような曝露が免疫調節や免疫学的根拠に基づく疾患の素因に潜在的に影響を及ぼす可能性があるのかという疑問も生じる。
Microplastics detected in cirrhotic liver tissue
☞ 肝硬変の肝組織からマイクロプラスチックが検出
ドイツ・ハンブルク大学の研究チームが 2022 年 7 月に発表した研究である。
【方法】
この研究は、ドイツ、ヨーロッパで実施され、肝硬変患者 6 名と基礎的な肝疾患のない 5 名の組織サンプル合計 17 サンプル (肝臓 11 個、腎臓 3 個、脾臓 3 個) を分析した。
ヒト組織中の 4 ~ 30µm のマイクロプラスチック粒子を検出するための信頼性の高い方法が開発された。
組織サンプルの化学的消化、ナイルレッドによる染色、続いて蛍光顕微鏡検査とラマン分光法を実施。
マイクロプラスチックポリマーの形態、サイズ、組成を評価。
【結果】
基礎肝疾患のない患者の肝臓、腎臓、脾臓のサンプルはすべてマイクロプラスチック陰性だった。
対照的に、肝硬変の肝組織中のマイクロプラスチック濃度は陽性で、基礎肝疾患のない人の肝臓サンプルと比較して有意に高い濃度を示した。
サイズが 4 ~ 30µm の 6 種類の異なるマイクロプラスチックポリマーが検出された。
【解釈】
ヒトの肝臓組織におけるマイクロプラスチックの存在を評価し、肝硬変患者の肝臓で 6 種類の異なるマイクロプラスチックポリマーを発見したが、基礎的な肝疾患のない患者の肝臓では発見されなかった。
肝臓のマイクロプラスチック蓄積が線維症の病因の潜在的な原因であるか、または肝硬変と門脈圧亢進症の結果であるかを評価するには、今後の研究が必要である。
日本でも、済生会熊本病院脳卒中センター特別顧問・橋本洋一郎氏は以下のように指摘している。
「マイクロプラスチックやナノプラスチックが血管に入ると、血流に乗って血液が集まりやすい肺や肝臓、妊婦の胎盤などに蓄積されるため、そこで重篤な疾患を引き起こしてもおかしくない。
とくにナノプラスチックはサイズが小さくて体内のさまざまなバリアをすり抜けてしまうので、体の至る所で悪さをしかねません。」
血液により運ばれたマイクロプラスチックやナノプラスチックは人体にどのような影響を与えるのだろうか?
次回へ・・・。