前回の続き・・・。
午前8時半、デイサービスの迎えに訪れた施設職員が異変を感じた。
駆けつけた息子が遺体を発見。
男性も近くに倒れていた。
睡眠薬数十錠を酒と一緒にのみ込んでいたが、助かった。
翌日に退院し、殺人容疑で逮捕。
手錠をかけられてようやく、47年も連れ添った妻の死、そして自分が手をかけた現実を認識した。
神戸地裁姫路支部は13年12月、男性に懲役3年、保護観察付きの執行猶予5年(求刑・懲役5年)を言い渡した。
判決は介護疲れが事件の引き金だと指摘した。
「妻が深夜から早朝にかけてほとんど寝付かない日が続く中、妻を車で連れ出すなど献身的な介護を続けた。身体的、精神的疲労は相当多大に蓄積されていた。」
男性は今、妻を殺害した家に1人で暮らす。
結婚時から妻と並んで寝たダブルベッド、壁に何枚も張った妻との旅行写真もそのままだ。
「お母ちゃんを殺した時の記憶はほとんどない。ただ、自分の中の大きな何かが崩れた。もうこれで終わろう。自分もあの世に行こうと。それだけやった。」
2015年年9月16日昼、兵庫県宝塚市の中山寺。
秋風が吹き始めた西国巡礼第二十四番札所で、男性は両手を合わせて妻に語りかけた。
「殺してしもうて、ごめんな。成仏せえよ。」
妻を供養しようと、四国八十八カ所と西国三十三所の霊場巡りをしている。
153回目の祈りになる。
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記事は要約して、時系列を並び替えて寄稿させていただいた。
厚生労働省は、2013年、特別養護老人ホームへ入所を希望しても、入所できずにいる高齢者が全国で約52万4千人にものぼることを公表
特別養護老人ホームの総定員数は約51万人。
つまり、現実は、その倍の入所施設が必要になる。
更に、入所希望者のうち、在宅待機者が約26万人いることも判っている。
実は、前回調査が行われた2009年時点で、すでに約42万人に達していた。
4年間で待機者が、約10万人も増えている算段だ。
09年調査後、増設された特別養護老人ホームは7万5千人分程度に過ぎないという。
何故、このような事態を招いたかというと、政府が、介護への公的支出を抑制・削減するため、特別養護建設への国庫補助の廃止や施設費への国の負担を削減するなど、特別養護増設を事実上妨げる政策が行われたことが背景にある。
2000年に介護保険制度が始まったのだが、制度開始当初と2013年を比べると、民間営利企業が多数参入する有料老人ホームの定員数が9倍以上に増えているのに比べて、特別養護施設の増加は1.7倍にとどまる。
高額な入居費用がかかる有料老人ホームに、いったいどれだけの高齢者が入れるというのだろうか・・・?
もし、この兵庫県の男性も特別養護施設に頼ることが出来たのであれば、酷い結末を避けられたかもしれない・・・。
次回へ・・・。