前回の続き・・・。
巨大化し続ける GMO の雄モンサント社・・・。
そのモンサント社を、除草剤ラウンドアップが人間や家畜には安全であるとする宣伝が虚偽で消費者を欺くものだとして、市民組織( Organic Consumers Association :有機的消費者協会、略称・ OCA )が告発した。
これに対して、モンサント社はこの訴訟を棄却するように裁判所に求めていた。
しかし、モンサント社の訴え空しく、米・コロンビア高等裁判所は、十分な証拠が提出されたとしてその訴えを 5 月 7 日に受理した。
そして、 8 月 10 日(現地時間)、米・カリフォルニア州でモンサントに対する歴史的判決が下された。
8 週間の裁判で、モンサント社のラウンドアップによってガンになったとして訴えていたドウェイン・ジョンソン氏の訴えを認め、陪審は、モンサント社に対して、懲罰的損害賠償金 2 億 5,000万ドル(約 280 億円)と補償的損害賠償金や、その他の費用を合わせた計約 2 億 9,000 万ドルの支払いを命じる評決を出した。
陪審は全員一致で、モンサン社トの行動には「悪意があり」、除草剤「ラウンドアップ」とその業務用製品「レンジャープロ(Ranger Pro)」が、原告のドウェイン・ジョンソン氏の末期がんの「実質的」な原因だったと結論付けた。
グラウンドキーパーとして働いていたジョンソンさんは、 2014 年に、白血球が関与するがんの非ホジキンリンパ腫と診断された。
同州ベニシア( Benicia )にある学校の校庭の管理に、レンジャープロのジェネリック製品を使用していたという。
世界保健機関( WHO )の外部組織である「国際がん研究機関( IARC )」は、 2015 年にラウンドアップの主成分であるグリホサートを、「おそらく発がん性がある可能性がある」物質と指定し、カリフォルニア州が同じ措置を取った。
これに基づいて、この裁判は起こされたものである。
モンサント社は、声明で「ジョンソン氏と家族に同情する。」と述べた一方、「過去 40 年、安全かつ効果的に使用され、農業経営者らにとって重要な役割を担うこの製品を、引き続き精いっぱい擁護していく。」として上訴する意向を示した。
これまでの、モンサント社の見解は・・・。
「ラウンドアップ」は、植物が必須アミノ酸を作るシキミ酸経路を阻害する。
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「ラウンドアップ」をかけられた植物は、アミノ酸を作れなくなり、枯れてしまう。
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これに対して、GMO 作物は、このシキミ酸経路にバイバスを作らせ、通常のシキミ酸経路がブロックされても、枯れないで育つ。
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このシキミ酸経路は人や家畜には存在しない。
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故に、人体には安全だと断言できる。
しかし、これに対して、OCA は・・・。
確かに、人体にはシキミ酸経路は存在しない。
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しかし、人や家畜の体は膨大な数の腸内細菌に支えられている。
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その腸内細菌の中には、このシキミ酸経路を持つものがある。
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故に、グリホサートはシキミ酸経路を持つ腸内細菌は損なう。
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サルモネラ菌等の悪玉菌は、グリホサートの影響を受けにくい。
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善玉菌が損なわれ、悪玉菌は損なわれないという腸内環境を作り上げる。
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腸内細菌を損なえば、当然、健康には大きな影響が出る。
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人体に安全だというのは消費者の欺く行為だ。
しかも、 OCA によると・・・。
モンサント社は、「ラウンドアップ」が腸内細菌を損なうことをすでに知っていて、この宣伝を行っていた。
危険を知らずに安全と間違って宣伝していたのではなく、危険であることを知っていて、それを安全と偽って宣伝していた、そしてその宣伝を今でも続けている。
・・・と訴えたのだ。
過去に、フランスで、ラウンドアップによる健康被害の裁判でモンサントは敗北している。
この裁判は、穀物栽培農家のポール・フランソワ氏が、 2004 年にモンサント社の除草剤・ラッソ「Lasso」を吸引した後、記憶喪失、頭痛、言語障害などの神経障害を被ったという訴えだった。
これまでは、農家からの健康被害の訴えは、病気と農薬との間の明確な因果関係を立証することが難しかったので、モンサント社の弁護団により、跳ねのけられていたのだが・・・。
南東フランスのライアン裁判所は、「フランソワ氏の受けた損害について、専門家の見解に従って、被害総額を確定するように。」という判決を下したのである。
ただ、このケースにしても、フランソワ氏が、「農薬噴霧器の薬剤の貯蔵タンクを清掃していたときに、殺虫剤の「Lasso」を吸い込んでしまった。」という主張により、この事故によって健康被害が出たことを正確に指摘することができたので、他の人たちの場合と比べて、議論が容易だったため、上記のような判決が下されたに過ぎない。
殆どの場合、モンサント社は、この種の訴えを裁判に持ち込ませないことに成功してきたのである。
しかし、ジョンソン氏の場合は、“「ラウンドアップ」がガンをもたらした”として争われた裁判でモンサントが敗北した最初のケースなのだ。
しかも、原告側が提示したほんの一部の証拠(「ラウンドアップ」による健康被害)に対して、モンサント社は反論すらできず、有罪が宣告されたらしいのだ。
まあ、元々、アメリカ国内においても、EUにおいても、“「ラウンドアップ」の「安全性」”は、モンサント社の資金で行われた科学とは呼びがたい検証によって、でっちあげられたものと言った方が的確で、まともに検証された研究においては、モンサント社が反証するだけの能力は持っていなかったということなのだろう。
そして、ジョンソン氏の他にも数百件・数千人が同種の訴えを起こしているという・・・。
まだまだ、上訴審で何が起こるかわからないが、この流れはが変わらないことを祈るばかりである。
世界の「ラウンドアップ」に対する潮流を見てみよう・・・。
スリランカ・・・ 2014 年 3 月販売禁止
➡理由:カドミウムとヒ素を含んだ土壌でラウンドアップが使われた場合、重い慢性腎臓病を発症するため。
コロンンビア・・・ 2015 年 5 月散布禁止
➡理由:コカインの密輸網を生み出すコカの違法栽培を一掃するためラウンドアップの空中散布を唯一行っていた国だったが、発がん性があることを考慮して、グリホサートを主成分とする製品の散布禁止を決定。
オランダ・・・ 2015 年末販売禁止
➡理由:ラウンドアップの主要成分が、がん・不妊症・先天性欠損・神経系の損傷・腎臓病と関連しているため
中東・湾岸協力会議( GCC )加盟 6 カ国・・・2016 年販売禁止
➡理由:不明
マルタ・・・ 2017 年 4 月完全使用禁止
➡理由:グリホサートとポリエトキシ化牛脂アミン(補助剤)を含む除草剤は、肝臓疾患を引き起こすため。
フランス・・・ 2017 年 9 月、2022年までに使用禁止決定
➡理由:グリホサートを単独で使用するよりも、併用による健康リスクの可能性が高いとため。
ブラジル・・・2018 年 8 月政府による再評価完了までグリホサートを含む製品の使用を禁止
➡グリホサートと他の 2 種の農薬の使用が経済を損なう可能性があるため。
その他にもあるが、気になる方は、こちらをどうぞ・・・。
https://www.baumhedlundlaw.com/toxic-tort-law/monsanto-roundup-lawsuit/where-is-glyphosate-banned/
次回へ・・・。