前回の続き・・・。
前回、各国の取り組み、前々回、企業の取り組みを紹介した。
しかし、これらの取り組みは、今後、マイクロプラスチックを出さないようにしようという取り組みであり、現在、海洋・空中に漂っているマイクロプラスチックに対しての対策ではない。
現在、海洋に漂っているマイクロプラスチックについて、専門家はどう見ているのだろうか?
結論で言えば、大方の意見を見ると・・・。
資金を費やしても不可能
ということのようだ・・・。
結局、排出源をコントロールすることから始め・・・。
短期的には、不要な使い捨てプラ製品を大幅に削減する。
中期的には、ごみ収集とリサイクルシステムの改善をする。
長期的には、プラスチックを分解する方法を考え出す。
こんなところが大方の意見のようだ・・・( ̄へ ̄|||) ウーム
そんな中、今年 10 月3 日、オランダ NGO 「オーシャン・クリーンアップ( Ocean Cleanup )」が、“太平洋ごみベルト( Great Pacific Garbage Patch)”(※注 1 )からプラごみを初回収したという海洋清掃プロジェクトのニュースが流れた。
(※注 1 ) 北太平洋の中央(西経 135 度から 155 度、北緯 35 度から 42 度の範囲)にかけての海洋ごみが多い海域。
動画:「太平洋ごみベルト」からプラごみ初回収、オランダNGOの海洋清掃プロジェクト
プロジェクトの目標は、悪名高い太平洋ごみベルトの半分を 5 年以内に除去することらしい・・・。
10 月 2 日、オランダ・ロッテルダムで会見したオーシャン・クリーンアップの創設者で最高経営責任者( CEO )のボヤン・スラット( Boyan Slat )氏は、「先月、米・サンフランシスコを出港した海洋清掃に特化した船が初めて、太平洋ごみベルトのプラスチックを集めたことを発表する。」と語った。
スラット氏は、まだ高校生だった 7 年前に、地球の海を汚している瓶やプラスチック製の袋、ビーチサンダルなどのごみを集めるために、海流を利用しようというアイデアを思い付き、紙ナプキンにメモしていた。
清掃船マースク・ランチャー( Maersk Launcher )号は 9 月 9 日、太平洋ごみベルトの清掃実験のために米サンフランシスコを出港した。
太平洋ごみベルトは米・カリフォルニア州とハワイ州の間の海域にあり、フランスの面積の2倍に相当するごみが漂流しているらしい・・・。
ランチャー号は、浮遊する海洋プラスチックを集めてリサイクルするために設計された長さ 600m のブーム(※注 2 )をえい航。
(※注 2 ) 棒状の構造物のこと(画像参照)。
ブームには、海面直下に浮かぶプラスチックを回収できる長さ 3m のスカートも付いている。
下の画像を見れば、何となくわかるのではないだろうか?
風、波、海流によって集まるプラスチックに対して、パラシュートをつけたアンカーでプラスチックを回収する仕組みだ。
スラット氏は国連で最も権威ある環境賞「チャンピオン・オブ・ジ・アース( Champion of the Earth )」を最年少で受賞。
現在、このプロジェクトに専念するため、航空工学の学習を断念しているという。
今後、スラット氏は、ドイツ・アーヘンに拠点を置く Pacific Garbage Screening の創設者兼 CEO : Marcella Hansch 氏と協力して、更に、強力なプラスチック回収システムを作り上げる考えのようだ。
このフローティングプラットフォームは、水からプラスチック片やマイクロプラスチックをろ過するだけでなく、エネルギー生産やバイオプラスチックへの合成のリソースとして収集されたプラスチックを使用するようにも設計されているらしい・・・。
机上の空論で、「プラスチック及びマイクロプラスチックの回収など無理。」という専門家たちより、一つのアイデアから生まれたプロジェクトを実現する若い力の方が遥かに期待できそうだ・・・。
もうひとつ、興味深い話を・・・。
グーグルは 2011 年から、世界中の 13 ~ 18 歳の学生が参加できる科学コンテスト「 Google Science Fair 」を始動させている。
そして、グランプリ受賞者は、ナント、賞金 50,000万$ がゲットできる。
そして、今年 10 月 31 日、「 Google Science Fair 2019 」 のグランプリが発表された。
グランプリは、水からマイクロプラスチックを取り除く研究でアイルランドの 18 歳のフィオン・フェレイラ( Fionn Ferreira )さんがゲットした。
現在、18歳の彼は、既に科学分野で様々な業績を収めているという。
フェレイラさんは、アイルランドのシュル・プラネタリウム( Schull Planetarium )のキュレーターを(※注 3 )務め、 3 言語を流暢に話し、これまで 12 個の科学賞を受賞しているという。
(※注 3 ) 博物館(美術館含む)、図書館、公文書館のような資料蓄積型文化施設において、施設の収集する資料に関する鑑定や研究を行い、学術的専門知識をもって業務の管理監督を行う専門職、管理職を指す。日本では、キュレーターという語が入ってくる 2000 年代までは、学芸員という語が使われていた。
マサチューセッツ工科大学( MIT )は、小惑星 34497 に彼の名にちなんだ Fionnferreira という名前も与えている。
若き天才科学者と言っても過言ではないだろう・・・!
フェレイラさんは、マイクロプラスチックが環境に与える問題について知ってから様々な論文を読み漁り解決策を探たという・・・。
彼は、学校の化学の授業で、同じ電荷(静電気の量)を持つ物体同士が引き寄せられる化学反応について学び、発想を得たらしい・・・。
非極性(電荷的に中性な分子)植物油は、水中で同じく非極性のマイクロプラスチックを引き付けるのでは・・・!?
さらに研究を進め、米・Fermi National Accelerator Laboratory ( Fermilab )のアーデン・ワーナー( Arden Warner )博士の論文を読み、着想したらしい・・・。
植物油とプラスチックは吸着しあう。
植物油と磁鉄鉱(=マグネタイト)粉末も同様。
油と磁鉄鉱粉末の混合物にマイクロプラスチックを吸着させ、最終的には磁鉄鉱を電極に引きつけて回収できるので・・・!?
自作の実験道具を作り実験をした・・・。
実験に着手する前に、フェレイラさんは自分の磁性液体(※注4 )が、サンプルからマイクロプラスチックの少なくとも 85% を除去できると予想していた。
(※注 4 ) 流体でありながら、磁性を帯び、砂鉄のように磁石に吸い寄せられる性質を持つ機能性流体の一つ。
1.000 回に及ぶ実験結果は、平均約 88% を除去できたという・・・。
彼がテストした 10 個のマイクロプラスチックには、除去するのが最も難しいとされているポリプロピレンも含まれていた。
しかし、そのポリプロピレンの約80%を除去できたという・・・。
フェレイラさんは今後、この技術をスケールアップして、廃水処理施設での実用化につなげたいと考えているようだ。
如何だろう・・・?
希望が見えてきたのでは・・・??
次回へ・・・。