前回の続き・・・。
令和 2 年 7 月の人口動態統計から疾患別死亡数を見てみよう・・・。
★総数
令和元年: 111,111 人
令和 2 年: 107,484 人( -3,635 人)
中でも注目に値するのが、呼吸器系疾患だろうか・・・?
◆呼吸器系の疾患
令和元年: 13 354 人
令和 2 年: 15 712 人( -2,358 人)
内訳をみてみると・・・。
◇インフルエンザ
令和元年: 52 人
令和 2 年: 6 人( -46 人)
◇肺炎
令和元年: 5,949 人
令和 2 年: 7,947 人( -1,998 人)
◇急性気管支炎
令和元年: 44 人
令和 2 年: 14 人( -30 人)
◇慢性閉塞性肺疾患
令和元年: 1,485 人
令和 2 年: 1,306 人( –179 人)
◇喘息
令和元年: 115 人
令和 2 年: 83 人( -32 人)
◇その他の呼吸器系の疾患
令和元年: 6,069 人
令和 2 年: 5,996 人( -73 人)
◇誤嚥性肺炎
令和元年: 3,292 人
令和 2 年: 3,502 人( +210 人)
◇間質性肺疾患
令和元年: 531 人
令和 2 年: 458 人( -73 人)
◇その他の呼吸器系の疾患
令和元年: 1,246 人
令和 2 年: 1,036 人( -210人)
誤嚥性肺炎による死亡の増加は、新型コロナウィルスによるものだと想像できる。
新型コロナウィルス感染症の対策にあたる厚労省の職員によると・・・
「新型コロナウィルスの予防対策で、今年は他の感染症の発生も軒並み減っている。外出を控えたり、人との接触を避けたりすることで感染症によって引き起こされる呼吸器系疾患も減ったのではないか?」と推測しているようだ。
もう一つの注目点は、循環器系の疾患による死亡者の減少である。
◆循環器系の疾患
令和元年: 27,588 人
令和 2 年: 26,793 人( -1,095 人)
内訳をみてみると・・・。
◇高血圧性疾患
令和元年: 716 人
令和 2 年: 797 人( +81 人)
◇心疾患(高血圧性を除く)
令和元年: 16,278 人
令和 2 年: 15,650 人( -628 人)
◇脳血管疾患
令和元年: 8,586 人
令和 2 年: 8,114 人( -472 人)
◇大動脈瘤及び解離
令和元年: 1,400 人
令和 2 年: 1,310 人( -90 人)
高血圧性疾患による死亡の増加も新型コロナウィルスの影響だと想像できる。
人口学研究にも取り組む西浦博・京都大大学院教授によると・・・。
「昨年から今年の冬は季節性インフルエンザの流行が起きなかったことが一つの要因と考えられる」と分析している。
国内では、インフルエンザによる死亡者は、毎年 3,000 人前後とされている。
西浦教授は、「実際にはインフルエンザの感染を契機に、呼吸器系だけでなく、循環器系や消化器系など慢性疾患が悪化して死に至るとされている。」と解説する。
厚労省によると、インフルエンザによる直接死因に間接死因を含めると、流行によって生じる死亡は世界で 25 ~ 50 万人、日本で約 1 万人と推計されているという。
西浦教授によると・・・。
「インフルエンザによって引き起こされる死亡が相当数あると言われてきたが、それを立証する材料になっている。今後は月別に死因を分析し、運動ストレスや精神的ストレスなど生活環境が直接死亡にどう影響しているか分かってくるだろう。」と語っている。
新型コロナウィルスは、我々の日常生活ばかりでなく、死亡者数減少や死因にまで変化を与えてきているようだ・・・( ̄へ ̄|||) ウーム
序に、厚生労働省から 10 月 14 日に発表された『最近の医療費の動向[概算医療費]』を見てみよう・・・!
概算医療費とは、病気やけがの治療で、全国の医療機関に支払われた入院・外来・調剤などに使われた費用の総額である。
前年同月比、 4 月は 8.8% 減、 5 月は11.9%減と大幅に減っているのが分かると思う。
新型コロナウィルス感染拡大を受けて、全国で緊急事態宣言が出され、受診控えが起きたためだろう。
1 人当たりにかかった医療費を年代別で見ると・・・。
未就学児では 4 月は 32.1% 減、 5 月は 33.8% 減、 6 月は 22.9% 減と、受診控えが顕著にみられるようだ。
令和元年の医療費は、 43 兆 5,777億円にも上っている。
前年度に比べて、約 1 兆円、率にして 2.4% 増え、 3 年連続で過去最高を更新している。
国民 1 人当たりの医療費は、前年度より 8,000 円増えて 345,000 円となった。
年代別にみると・・・。
75 歳未満は、 226,000 円
75 歳以上は、 952,000円
後期高齢者は 4 倍以上になっている。
笑い話ではないが・・・。
『最近、○○さん見ないけど、どうしているの?』
『調子が悪いから、家にいるみたいだよ』
良い悪いは別にして、病院をコミュニティーの場と考えている高齢者が多かったのは事実である。
この方たちも、コロナ感染を恐れ、病院に足を運ぶことが減っている。
高齢者にしても、子供にしても、本来、受診しなければいけない病気でさえ、受診控えをするような状況にだけはなってはいけない。
ただ、ジャブジャブと湯水のように使われていた医療費が、コロナによって歯止めが掛かったことは事実である。
これまでの、医療システムを抜本から見直す良きチャンスではないだろうか?
新型コロナウィルスは、社会保障制度の在り方さえも変えてしまうようだ・・・(笑)