脳を食べるアメーバ。
これを見てどう思うだろうか?
ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン( NEJM )に掲載された論文である。
Swimming led to infection with a brain-eating amoeba. Is swimming even safe?
場所はインド・・・。
44 歳の男性が、体調不良を訴えて、救急外来に来院した。
診察では、体温は 39.8℃ で、心拍数は 120 回/分だった。
男性は、激しい咳に苦しみ、意識が混濁していた。
質問に答えることはできず、目を刺すような素振りをしてもまばたきをしなかった。
しかし、脳幹の反射は保たれており、痛みを伴う刺激を与えると、腕と足をひっこめようとした。
医師は、原因を究明しようとするが不明。
ただ、男性が 5 日前に屋内プールで泳いでいたことが判明。
医師は、細菌性髄膜炎の推定診断を伴う経験的抗生物質療法を開始した。
当初、熱は少し下がったが、意識障害は改善しなかった。
脳脊髄液の検査により、フォーラー・ネグレリア(学名: Naegleria fowleri )が検出された。
そこで、医師は、アムホテリシン(※注 1 )、リファンピン(※注 2 )、フルコナゾール(※注 3 )、アジスロマイシン(※注 4 )、およびミルテフォシン(※注 5 )の投与を開始した。
(※注 1 ) 真菌(カビ)などの細胞膜成分に結合し、抗真菌作用などをあらわす薬。
(※注 2 ) 結核菌の RNA 合成を阻害することにより、抗菌作用をあらわす薬。
(※注 3 ) 抗真菌剤で、真菌細胞の膜合成を抑制して抗真菌作用をあらわし、真菌の発育を抑える薬。
(※注 4 ) 病原細菌の蛋白合成を阻害することによって抗菌作用をあらわす薬。
(※注 5 ) アンチモン製剤耐性の原虫に対して効果があるとされ、寄生虫によって引き起こされる内臓型リーシュマニア症( VL )や皮膚型リーシュマニア症( CL )にも効果がある薬。
しかし、男性は、残念ながら、 5 日後に死亡した。
これが、脳を食べるアメーバである。
フォーラー・ネグレリアは、湖や温泉など温かい淡水( 25 ~ 35℃ )の環境に生息するヘテロロボサに属する自由生活性のアメーバらしい。
他のアメーバ類とは異なり、生活環の中に鞭毛型を持つのが特徴のようだ。
人間に対して病原性を示し、原発性アメーバ性髄膜脳炎( Primary Amoebic Meningoencephalitis: PAM )を起こすことがあるという・・・(」゚ロ゚)」
通常、 PAM は免疫抑制の前歴のない健康な子供や若者のうち、フォーラー・ネグレリアが生息する淡水を浴び、それが鼻に入った者が発症するそうだ・・・…..〆(・ω・)メモメモ
フォーラー・ネグレリアは、嗅粘膜や鼻孔組織を貫通し、嗅球の著しい壊死とそれに伴う出血が起きるという・・・(((( ;゚д゚)))アワワワワ
更に、アメーバはそこから神経繊維をたどって頭蓋底を通り抜け、脳に達するそうだ・・・(||゚Д゚)ヒィィィ!
それにより、中枢神経系が冒されることで、始めは嗅覚認知(匂いや味)の変化が起こり、続いて吐き気、嘔吐、発熱、頭痛などを示し、急速に昏睡して死に至るという・・・( ノД`)怖いよマジ…。
このため“殺人アメーバ”の異名も持つ・・・ヾ(0д0∥)ノ
罹患すると 100% の確率で死に至るという・・・il||li _| ̄|○ il||li
そして、この症例の数週間後・・・。
Florida: 2nd Naegleria fowleri case reported this summer
8 月 2 日、アメリカ・フロリダ州で、 13 歳の Tanner Wall 君が死亡した。
この少年が亡くなる少し前、フロリダ州ヒルズボロ郡で、フロリダ州保健局( DOH )は、フォーラー・ネグレリアに感染した 1 件の症例を確認している。
ただ、この最初の患者において、状況は開示されていない。
Tanner 君は、発症後、少年は吐き気を訴え、嘔吐、頭痛、首のこわばりに苦しんだそうだ。
医師は当初、連鎖球菌性咽頭炎と診断したようだが・・・。
両親は診断に異議を唱え、息子を別の医療施設に連れて行ったという。
すぐに、少年は人工呼吸器につながれたそうだ。
その後、フォーラー・ネグレリアの感染症と診断されたそうだ。
医師から、「申し訳ありませんが、息子さんは細菌性髄膜炎ではありません。アメーバの感染で、治療法はありません」と、両親に伝えられたそうだ。
残念ながら、 Tanner 君の脳は活動を止め、生命維持装置が外されたという。
地元テレビ局のニュース番組に出演したフロリダ州の Tanner Wall 君の両親は、息子は病気になる数日前にノースフロリダのキャンプ場にある湖で泳いだことを明らかにした。
そして・・・。
Brain-eating amoeba in city’s water supply kills 6-year-old, leads Texas to declare a disaster
9 月 8 日、アメリカ南部テキサス州で、 6 歳の Josiah McIntyre 君が死亡した。
病気でも交通事故でもない、突然の死。
原因不明の中、少年の母親が語った・・・。
「金曜日に嘔吐と頭痛が止まらなくなって、病気になっただけだと思っていました。病院で CT スキャンを撮ったら、脳が膨らんでいるのが写っていた。摘出した髄液を検査した結果を見た医師によると、これらの症状は、おそらく“アメーバ”が原因だと言われました。」
やはり、フォーラー・ネグレリアが原因だ・・・。
しかし、インドやフロリダ州の例と違うことがある。
地元メディアでは、 Josiah 君は、フォーラー・ネグレリアに、公園の噴水か自宅のホースの水から感染したと報道している。
少年が住んでいた市は、災害宣言を発令。
住民に水道水を沸騰させて使用するよう呼びかけ、水道局が消毒作業が続けられた。
地方自治体と疾病管理予防センターの専門家が水を採取し、テストした結果、収集された 11 のサンプルのうち 3 つがテストで陽性であったことが公表された。
今年初め、アメリカでフォーラー・ネグレリアの分布が広がっているという報道があったそうだ。
CDC( Centers for Disease Control and Prevention :米国疾病管理予防センター)によると、追跡を開始して最初の数十年は、このアメーバはアメリカ南部でしか発見されなかったが、過去 10 年間で、これまでまったく症例の報告がなかったインディアナ州、ミネソタ州、ミズーリ州のような北部の州でもこのアメーバによる感染症例が特定されているという・・・。
北部の州で水温が上昇を続けるならば、北部でも水に入る場合のリスクが高まるのではないかという懸念があるようだ。
因みに、アメリカ合衆国では、 CDC によれば、 149 の感染例があり、内生存者は 5 人ということらしい・・・。
参考:Parasites — Naegleria fowleri — Primary Amebic Meningoencephalitis (PAM) — Amebic Encephalitis
では、日本にも人食いアメーバは存在するのだろうか?
1996 年 11 月に佐賀県鳥栖市で 25 歳女性が発症したのが、これまでの唯一の感染例らしい・・・。
女性は、 7 日目に意識混濁、 9 日目に死亡したという・・・。
やはり、日本にも“人食いアメーバ”はいたようだ・・・(llllll゚Д゚)ヒィィィィ
それにしても、川や湖でなく、日常生活の中にも恐怖があるということなのだろうかか・・・( ̄へ ̄|||) ウーム
安心してください・・・(笑)
フォーラー・ネグレリアは、塩素に弱いため、日本の浄水レベルであれば心配ないと言われているそうだ・・・。
しかし、これから、どんどん温暖化(?)が進む中では、注意しないといけないような気がしないでもない・・・。
なるべく沼や池などには近づかないよう注意が必要なようだ。
水に顔を付けるのは以ての外と言うところだろうか?